2021年 世界選手権第6戦フランス

2021年8月29日/Cahors(フランス)

4位と同点、31秒差で5位となる

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2021年シーズン、2回目のフランス大会。今回はカオースという町での開催で、前回のフランスGP同様に日曜日1日だけの開催となる。

カオースは世界選手権の開催は初めてだが、藤波をはじめ、ライダーにはなじみ深いところだ。いつも8月の終わりに、ここでショーアップされたトライアル大会があって、藤波も何度も招待されて走っている。過去には、黒山健一も野崎史高もここを走ったことがあった。

ただしいつものスタジアムトライアルは街の中だけだったが、今回のセクションはいつもとちょっとちがう場所に設定されていた。コロナ禍とあって、街の真ん中を避けたのかもしれなかった。第1から第4までは砕石場のようなエリア、それ以外は街を回る川に沿って設営されていた。この砕石場エリアは今までに走ったことがないところだった。第5以降はスタジアム設定で、平地に岩などを置いて作られていた。岩を上がっておりてまた上がるという設定だ。前輪をあげたまま上がれないと、ほとんど全部の岩で前転ができる。

むずかしかったのは第1セクションだった。下見の時からむずかしいなとは思っていたが、それ以外はいける可能性を感じていた。さらには、ライダーがみんなで細かくきっかけを作ってくるから、それでまた可能性は広がる。トップが減点を減らしてきたのは、そういう背景もあった。

photo1ラップ目、ちょっと事件があった。第5で5点の判定を受けたのだが、それはそもそも杭がちゃんと打てていなくて、杭とまったく離れたところにあるテープに触っただけで倒れるようなものだった。藤波は、それで5点になった。いやいや、それはあんまりだよね、ということで、オブザーバーも理解は示しながら、杭が倒れたから一応5点にしておくということで、その後はここでの5点を背負ったまま点数計算をすることになった。1ラップ目が終わったときに、あの5点はなんとかしてよとお願いしたのだが、わかったわかった、でもオブザーバーの話をちゃんと聞いてからね、ということで、その場ではスコアは変わらず。

それが2ラップ目、ミケル・ジェラベルトが、藤波が見ている目の前で、まったく同じ状況になった。やっぱり5点だ、5点じゃないと問答になった。そこに、1ラップ目に同じ目にあった藤波も加わってやりとりをするうち、オブザーバーが、そうだな、やっぱりぼくのまちがいだということにするよ、となって、ここで藤波の5点は取り消しになった。それで、2ラップ目の途中でいきなり藤波の減点が5点減った。

ただし、だからといって、いきなり上位に進出となったわけではない。オートバイとの一体感は、アンドラのときからあまり変わらず、よくない。アンドラから1週間だから、時間もそんなにない。いろいろ手は尽くしてもらったけど、根本的な解決には至らなかったようだ。

photoさらに、岩を上がった時に、なにかが起きた。ハードなライディングばかりだから、こういうことは起こりうる。これで状況はもっとひどくなった。現場でできることはやってみたけど、解決には至らず、そのまま走り続けることになった。2ラップ目、1点や2点の減点が多いのは、そのちょっとしたトラブルで、微妙なコントロールがむずかしくなってしまったからというのもひとつある。

とはいえ、全体として2ラップ目になって減点が減っているのは、一度走って攻略法が見えてきたというのもあり、1ラップ目と2ラップ目の間にいじってもらったこともあり、あるいはその状況になれてきた、というのもあったかもしれない。ともあれ、いつもと同じく、2ラップ目に藤波はスコアを上げた。

2ラップ目、第3セクションは5点かクリーンかの設定だった。みんなとはちがうラインを選んだ。クリーンはむずかしいが、1点をつけばいけるというラインが見えたから、あえて足をついてここを抜けた。そういう調子で走っていったら、あれよあれよと8点で帰ってこれたのだった。

photo上を見れば、2ラップ目のトニーはオールクリーンなのだが、8点はまずまずの点数だった。

インドア風セクションだから、1点2点のちょん足はともかく、基本的には上がれるか上がれないかだ。あるいは降りるときに前転をしたりというのもある。つまり5点くらいはすぐにひっくり返る。全体のスコアが低減点で争われているのに、5点になる可能性も高い。

しかし今回は、なによりも1ラップ目がぜんぜんだめだった。第5セクションでの5点が加算された段階では25点。5点減ったとしても、これはやばいな、というスコアだった。最下位となっていたタイミングもあった。

5点は簡単にとれる。ライバルもまた、減点を増やしてしまう可能性はあった。たとえば第10セクション。マテオ・グラタローラが5点になっている。彼は第7でも5点になった。こうやって、ぽろりぽろりと5点が出てしまうのが、こういうトライアルのむずかしさだ。

photoそして2ラップ目終盤。藤波が11セクションに来たときにハイメ・ブストがやってきて、先にトライしてもいいかという。ハイメはアダム・ラガと同点で競っていて、そうなるとタイム競争になるので必死なのだ。それでトライ順をハイメに譲った。ハイメがアダムに勝ってくれれば、トニーのタイトル争いの上でいい展開になる。トニーとチームのために、トライ順をハイメに譲った。

そして11セクションを走り終えて12セクションに向かうところで、最終セクションでミケル・ジェラベルトが1点をついた、これで藤波と同点だ、という情報が入った。こうなると最終セクションは何としてもクリーンし、さらに1秒でも早くゴールしなければいけない。ところがその情報を得た直後に、ハイメが最終セクションに入ってしまった。時計が非常に進む中、藤波は待ち、そして最終セクションにトライした。

結果、藤波の試合時間は1ラップ目が2時間25分15秒、2ラップ目が1時間36分56秒。ミケルは1ラップ目が2時間24分41秒で、2ラップ目が1時間36分59秒。足し算をすると、藤波の5時間2分11秒に対して、ミケルは5時間1分40秒だった。その差31秒で、藤波は惜しくも4位を逃して、5位ということになった。

photo悔しい結果となったが、しかし4位を逃した件については、それほど藤波は頓着していない。最終セクションはGPのセクションとしては最も簡単な部類だった。ここで足をついているのは、全ライダーを見渡してもミケルだけだ。それだけに望外のチャンスだったわけなのだが、最下位から5位まで挽回できたというところで、今回のところは納得の藤波だった。

次のスペイン大会までは2週間ある。大きな変化が出るのをきらってパーツ交換も最小限にしてきたが、次はきちんと調子を出して、いい走りを見せつけたいところだ。

○藤波貴久のコメント

「1ラップ目はひどすぎました。第5の5点は修正される予定だったんですけど、走りながらずっと5点が加算されて最下位にいるリザルトを見なければいけなかったので、気分はよくなかったです。2ラップ目、挽回はしましたが、こっちが挽回しても、ライバルが落ちてくれなければ結果は変わらないし、今回は5位まで回復できたことで納得です。あと30秒で4位でしたけど、うーん、惜しいは惜しいですけど、そこまで欲は言いません。次は、ちょっと苦手意識のある会場なんですが、がんばります」

World Championship 2020
日曜日
1位 トニー・ボウ (スペイン・モンテッサ)  3  21
2位 アダム・ラガ (スペイン・TRRS)  13  19
3位 ハイメ・ブスト (スペイン・ヴェルティゴ)  14  19
4位 ミケル・ジェラベルト (スペイン・ガスガス)  28  16
5位 藤波貴久 (日本・モンテッサ)  28  13
6位 マテオ・グラタローラ (イタリア・ベータ)  31 12
7位 ホルヘ・カサレス (スペイン・ガスガス)  33 16
8位 ガブリエル・マルセリ (スペイン・モンテッサ)  34  16
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ (スペイン・モンテッサ) 112
2位 アダム・ラガ (スペイン・TRRS) 101
3位 マテオ・グラタローラ (イタリア・ベータ) 79
4位 ハイメ・ブスト (スペイン・ヴェルティゴ) 75
5位 藤波貴久 (日本・モンテッサ) 69
6位 ミケル・ジェラベルト (スペイン・ガスガス) 66
7位 ジェロニ・ファハルド (スペイン・シェルコ) 55
8位 ガブリエル・マルセリ (スペイン・モンテッサ) 53