2004年4月3〜4日 |
世界選手権第1戦
アイルランド(Bangol) |
いよいよ世界選手権が開幕。北アイルランドの海外沿いの街バンゴールは、去年も世界選手権が開催された場所。開催地だけでなく、セクションも8割方が去年と同じものだった。去年は2日間ともにいい天気だったが、今回は降ったり晴れたり、ときにはひょうまじりの雨になったりで、セクションが同じといっても、やはり一筋縄ではすまされない。
【土曜日】
藤波は、昨年ここで開催された開幕戦でも、土曜日に勝利している。その勝因のひとつとなったのが、助走1mからかけあがる岩の壁だった(Fujigas.netのトップのフラッシュ映像は、このセクションでのものだ)。ここをクリーンで登った藤波に対し、ランプキンは2ラップともに5点となって、このアドバンテージが、後半失点を増やした藤波の勝利を守ったのだ。
今年も、戦況は同じパターンだった。壁は、去年と同じく第2セクション。藤波が1点で登ったのに対し、ランプキンは5点。いいペースで試合をスタートさせることができた藤波だった。今回、セクション的にむずかしかったのはこの第2セクションと、13セクションだった。どちらも壁を乗る設定という点では同じだが、13セクションは谷渡しの不安定な助走から2メートル弱の岩盤を登り、さらに40cmほどの段差を越えるもの。土曜日にこのセクションを走破できたのはランプキンだけだったが、とはいえランプキンとてクリーンしたわけでもなく、第2セクションで藤波が作ったアドバンテージを、13セクションでランプキンが取り返すまでには至らない。戦況は、藤波に有利だ。
藤波の調子は、絶好調とはいえなかった。しかし、チャンピオンをとるためには、絶好調でない時に、いかに勝利を呼びこむかが、チャンピオンシップを戦ううえでは重要なミッションになる。ここでも藤波は、ひとつひとつのセクションを大事に走り、調子の善し悪しを越えて、勝利へのプロセスを消化していく。
1ラップが終わったところで藤波のリードは3点。2ラップ目も、ランプキンは第2セクションを登れず、 対して藤波はやはり1点。またしても、藤波はアドバンテージを築いた。
その後、いくつかミスを犯した藤波だが、このリードが最後まできいて、ランプキンを2点差で下して勝利。2年続けて、開幕戦を勝利することができた。
【日曜日】
藤波の今年のテーマはもちろんチャンピオン獲得だが、その前に、やっておかなければいけないことがある。土曜日・日曜日に勝利する、パーフェクト優勝だ。藤波は、まだこのパーフェクト勝利をやったことがない。チャンピオン獲得には、ぜひともやっておかなければいけない目標だ。
肩慣らしといった感じの第1セクションを終えて、問題の第2セクション。この日の藤波は、1点と2点でここを上がった。しかしランプキンも、落ちたままでは終わらない。1ラップ目にはクリーンし、2ラップ目も1点でここを上がった。土曜日に藤波がここで築いたアドバンテージは、この日は逆に、ここでリードされてしまうことになった。
1ラップ目の藤波のミスは、12セクションでのエンジンストップだった。トップライダーにとっては、クリーンもそんなに困難なセクションではなかったから、ちょっと痛い失点となった。1ラップ目は、この失敗がそのままランプキンとの点差になって、5点差。トップのランプキンに対して、藤波は2位で試合を折り返した。
この日も、藤波の調子は、悪くはないがよくもない。土曜日と大差ないコンディションだった。こんな中、藤波は2ラップ目に向けて自身の調子をあげるべく試合を組み立てるが、それ以上に試合の流れを自分に呼びこんだのが、ランプキンだった。特に2ラップ目以降、ランプキンの調子はぐいぐいとよくなっていった。
1ラップ目にはなされた5点のリードもあったのだろうか、2ラップ目に入って、藤波はいつしか2位を狙う走りとなっていた。狙える時には勝利を取りに行き、そうでないときにも勝利を目指し、しかし勝利を目指すあまりに無理があって2位を落とすようではいけない。これまで幾多の試合で学んだ藤波の試合に対する哲学だ。
試合は、この藤波の思惑のとおり、絶好調ではないものの、まずまずの状況で進んでいた。藤波の悲劇は、後半、12セクションから始まった。12、13、14は、1ラップ目には6点で通過している。しかも12セクションの5点は、エンストだった。
ところが2ラップ目、藤波はこの3セクションを、5点、5点、3点。大きな失点だった。この3セクションでの13点減点を、仮にあと5点減らせていれば、藤波は2位入賞を果たしていた。結果、ここでの失点で、カベスタニーとラガにポジションを譲ってしまうことになったのだった。
優勝と4位。対してランプキンは2位と優勝。そのリザルトは、去年とまったく同じということになった。しかし結果が同じだという事実を認めたうえで、藤波は去年とはちがう収穫を感じていた。なぜ4位に甘んじることになったのか。それは直接には終盤のいくつかのセクションの失敗だったりするわけだが、藤波が克服すべき課題は、そのセクションをクリーンで走破することではない。そこで失敗を犯してしまった、精神面を含む試合運びに、課題があった。だからこの日は、2位を狙って走り、自分から崩れて4位に落ちていったと分析することができるし、その課題を克服するために何をやったらいいのかも、明らかになった。
されど、試合は結果がすべてだ。去年の結果と今年の結果、同じだけどちがうというその中身を証明するために、次のポルトガル大会が、勝負だ。
○藤波貴久のコメント
勝てばうれしいですけど、今回は、負けて得るものがありました。結果は去年と同じでも、去年は気がついていなかった負けの理由。今年の負けは、そこのところに気づかせてくれました。だから、今日の4位は、ものすごくくやしいですけど、納得できることも多かった。開きなおるという意味の納得もありますが、今回の納得は、もっと意味深い納得です。負け惜しみではなくて、得した気もしています。これからにつながる失敗をして、次にはその対策ができるわけですから、これまでは“なぜか”2日目に勝てない藤波貴久でしたけど、もう“なぜか”ではありません。次からは、2日目も勝ちます。2日目も、勝てます。
World
Championship 2004 |
土曜日/Saturday |
1位 |
藤波貴久 |
37(20+17) 14 |
2位 |
ドギー・ランプキン |
39(23+16) 17 |
3位 |
アルベルト・カベスタニー |
42(24+18) 14 |
4位 |
アダム・ラガ |
54(31+23) 11 |
5位 |
マルク・フレイシャ |
58(37+21) 11 |
6位 |
ジェロニ・ファハルド |
64(40+24) 11 |
日曜日/Sunday |
1位 |
ドギー・ランプキン |
22(11+11) 20 |
2位 |
アルベルト・カベスタニー |
35(20+15) 16 |
3位 |
アダム・ラガ |
39(18+21) 14 |
4位 |
藤波貴久 |
40(16+24) 17 |
5位 |
ジェロニ・ファハルド |
45(25+20) 11 |
6位 |
マルク・フレイシャ |
45(25+20) 11 |
Ranking |
1位 |
ドギー・ランプキン |
37 |
2位 |
藤波貴久 |
33 |
3位 |
アルベルト・カベスタニー |
32 |
4位 |
アダム・ラガ |
28 |
5位 |
マルク・フレイシャ |
21 |
6位 |
ジェロニ・ファハルド |
21 |
|