2004年1月10日 |
インドア世界選手権第4戦
ドイツGP(Koblenz) |
1月10日、この大会も、インドア世界選手権では毎年の恒例となっている一つだ。毎年、多くの観客がつめかけ、盛り上がりもなかなかだ。観客席には藤波貴久ファンクラブとおぼしき人たちも見受けられ、フジガスフラッグが目をひく。ドイツのトライアルファンには、フジガスファンが多いらしい。
かかとの負傷からたったの1週間、藤波の体調は完璧とは言いがたい。この1週間の間に、より精密なレントゲン撮影もしたが、それによると、なんと骨に異常がないと思われていた部分に、実はクラックが発見された。これがわかったのが、すでにドイツへ向かう飛行機に乗る段階となった時だった。クラックが入っているとはいえ、腫れはひいているので、くれぐれも無理はするなというドクターからの指示をもらって、藤波のコブレンツ参戦は実現した。
かかとのけがは、ライディングには特に影響はない。というより、藤波貴久はマシンに乗れば、痛さもなにも忘れてしまう性格の持ち主なのだ。ただし、足をつくと痛みを思い出すというから、ふつうの人なら痛がって乗れないくらいのものなのかもしれない。足をつくと痛いから、足をつかずに走ったのがよかったのかもしれないとは、結果オーライの冗談である。
予選では、藤波が一番最後のスタート順をひいた。これまで、ランキング3位に食いこんだことなどなかった藤波だから、最後のスタート順をひく権利を持ったのは今年になってからのことだ。つまり藤波は、初めてインドア世界選手権のラストスタートを経験することになった。
セクションは、第1セクションが石で構成されていて、それ以外はすべて大木で構成されている。木のセクションは、落ち着いて走ればいける設定だが、第1だけは後輪だけでぽんぽんと飛んでいかなければ走破不可能な設定になっていた。多くのライダーが5点になったのも、このポイントだ。
第1セクションでは、ワイルドカードのふたりのライダーのほか、フレイシャが5点になった。フレイシャは、今回も6人の中でもっともスタートが早い。第1のほかにもふたつの5点を喫して今回も決勝進出はならなかった。
フレイシャの次にトライしたのはジャービスだったが、ジャービスは好調だった。5点もなく、トータル5点の好スコアで7つのセクションを終えた。
次はカベスタニー。カベスタニーはさらに好調で、4点。
ところが次のランプキンが、第1でいきなり5点になった。さらに第5でも5点と、この日のランプキンは精彩がない。この時点で、決勝進出はほぼ絶望となった。
そしてラガ。ラガはドイツのワイルドカードライダー、ストランフォファーがクリーンした第6セクションで5点。トータル7点で7つのオブザーブドセクションを終えた。
そして最後が藤波だ。最後に走ると、ライバルたちの点数がすべてわかっている。戦いやすいともいえるが、あまりにもわかりすぎているのも、プレッシャーになるものだ。これは、初めて最後のスタートになって藤波が得た教訓だった。
今回の持ち時間は、7セクションを10分。いつもに比べると余裕のある設定。フレイシャなどは7セクションを6分半で走っている。藤波はこれを9分14秒かけてゆっくりトライ。途中でほんの束の間の休息をとることもできたのが、好結果につながったのかもしれない。
藤波は7つのセクションを3点で走った。ダブルレーンは藤波とカベスタニーが対決し、藤波の勝ち。今年3回目の決勝進出が決まった。
ファイナルラップは、インに3mのダム型ステアがある第5セクション以外は予選ラップの逆走となった。決勝は、予選とちがって、ひとつずつのセクションを順番に全員がトライしていく。
第1セクションは、全員が1分のタイム設定に苦しめられた。一番スタートのラガが1点のタイムオーバー(タイムオーバー30秒ごとに1点)減点を加えながら2回の足つきで走れば、ジャービスは2点のタイムオーバーで2回の足つき。カベスタニーはクリーンしたものの、1点のタイムオーバー減点があった。
さて最後にトライするのが藤波。ところが藤波は、この第1セクションでいきなり5点になってしまった。万事休す。4人の中では、最下位から決勝ラップが始まった。
第2セクションでは、ジャービスが5点になった。藤波は1点。この時点で藤波は4位から3位に浮上した。さらに第5セクション。ここではジャービスに加えて、カベスタニーも5点になった。ここでカベスタニーとは同点になり、同点2位まで浮上。さらに第6セクション、今度はカベスタニーとラガが5点になった。藤波はここを、タイムオーバーの1点を加えながらも2回の足つきで通過して3点。ここへきて、ラガとも同点となり、ダブルレーンでラガと勝負を決することになったのだった。
藤波とラガがふたりだけダブルレーンを走ることになった時点で、少なくともふたりは2位を確保している。ならば、足つきをおそれて慎重に競走するより、思いきり走った方が勝利の可能性は高い。藤波の作戦は見事にあたった。そして、第1セクションの5点から、最後の最後に勝利を得た藤波の活躍に、スタジアムは大盛り上がりだった。
藤波がインドア世界選手権で勝利するのは、もちろんこれがはじめて。ドイツは、くしくも1997年に、藤波が初めてアウトドア世界選手権で勝利した国でもある。これまで“インドアが苦手なフジガス”で通ってきたが、汚名は返上だ。 ○藤波貴久のコメント
そろそろ勝ちたいと言ったとたんに優勝で、なんだかうまくいきすぎててこわいです。ドイツからの帰りの飛行機が落ちるんじゃないかなんて冗談を言いながら帰ってきました。一番最後のスタートも初めての経験でしたが、これはこれで状況がわかりすぎてしまって緊張するものだということも発見でした。最後、ラガとのダブルレーンの勝負で勝敗が決まる時には、転んでもいいから勝ってやろうと思って、全開で行っちゃいました。そしたらラガがあんまり速くなかったので、優勝はもぎとらせていただきました。足のけががあるから、無理をしないで走ったのがよかったのかな?
FIM
Trial World Championship 2004
Koblenz Oberwerth |
Final Lap(決勝) |
1位 |
藤波貴久 |
14 |
2位 |
アダム・ラガ |
15 |
3位 |
アルベルト・カベスタニー |
16 |
4位 |
グラハム・ジャービス |
19 |
Qualificarion Lap(予選) |
1位 |
藤波貴久 |
3 |
2位 |
アルベルト・カベスタニー |
5 |
3位 |
グラハム・ジャービス |
6 |
4位 |
アダム・ラガ |
7 |
5位 |
ドギー・ランプキン |
12 |
6位 |
マルク・フレイシャ |
17 |
7位 |
タデウス・ブラズシアク |
18 |
8位 |
カルステン・ストランコネル |
33 |
Ranking |
1位 |
アダム・ラガ |
34 |
2位 |
ドギー・ランプキン |
32 |
3位 |
藤波貴久 |
27 |
4位 |
アルベルト・カベスタニー |
20 |
5位 |
グラハム・ジャービス |
17 |
6位 |
マルク・フレイシャ |
14 |
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