2019年 世界選手権Xトライアル第6戦アンドラ(アンドラ))

2019年4月27日/Poliesportiu d'andorra, Andorra

尻上がりに調子を上げ、アンドラは5位

photo2019年は、結局6戦での戦いとなったXトライアルシリーズ。藤波は開幕戦ブダペスト、第2戦バルセロナのあとは出場せずが続いていた。そこへ、アンドラ大会から出場のオファーがあった。悩んだ末に出場、そしてシーズン初めて予選を通過して5位のリザルトを得た。

藤波が出場するやいなかを悩んだのは、ケガの心配が大きい。昨年もこの時期、仕上がり順調でアウトドア大会の開幕を楽しみにしていたのだが、スペイン選手権に出場して負傷、苦しいシーズンを送ることになってしまった。Xトライアルへの出場は、さらにリスキーだ。ライダーとして、望まれる大会に出ないのも悔しいが、それでシーズンを棒にふるのはもっと悔しい。

そんな中、アンドラの会場は構造上の問題で、いつものセクション要素が持ち込めないとの情報があり、いつもより多少はリスクが少ないと判断して、アンドラへの出場を決めた藤波だった。出るからには納得のいく走りをしたいとは思うものの、6戦中3戦にしか出ないでは、ランキング争いも多くは望めない。まずケガをしないで試合を終えることと、できれば今度こそ予選を通過したいという、その2点が藤波の大きな目標になった。

ちなみにランキングは、ここまでの藤波のポイントが5点。同じく2戦に出場したホルヘ・カサレスとガブリエル・マルセリが6点、3戦に出場したルカ・ペトレーラが5点。この4人がランキング7位争いの主役たちということになる。マルセリは今回は出ていなくて、カサレスとペトレーラは出場する。事実上、藤波とカサレス、どちらか上位に入ったほうがランキング7位を得ることになる。

予選、ラウンド1は、3人ずつが5セクションを一気に走る。3人ずつ3組に分かれるも、3人ずつの勝敗は関係なく、あくまで点数がよい順に6名が次のラウンド2に進出する。予選の順位によってラウンド2の組み分けが異なるのだが、まずは6位にまでに入ってラウンド2に進むのが最初のミッションになる。

photoペトレーラ、カサレス、藤波の順にトライした予選、ラウンド1。第3セクションの難度が高く、ここを抜けられれば上位にいけそう、ここを失敗しても、ほかをしっかり走れば、予選通過の可能性はある、というのが下見をしての感触だった。ペトレーラは第3の他、第2も5点で総減点は15点。次に走ったカサレスは第1で5点になって総減点10点。

藤波は第1をクリーン、第2は着地でフロントタイヤが滑ってしまって1点を失った。第3は残念ながら5点だった。この第3は、トップ3が抜けただけで、6人が5点となっている。第4はクリーンして、最終の第5は、フロントを吊っていくかアンダーガードを乗せていくかの二択だったが、藤波は1点を覚悟でアンダーガードを乗せていく方を選んだ。これでトータル7点。想定では6点の予定だったから、1点多く減点してしまったが、ペトレーラとカサレスには勝っているから、あと一人、誰かが藤波より多く減点すれば、予選通過はかなう。

次の組は、ジェロニ・ファハルド、ミケール・ジェラベルト、ハイメ・ブストの3人。ファハルドは第1で1点、第3で5点、藤波より1点少ない6点で、予選通過が決まった。次のジェラベルトは第1で2点を失ったかと思えば、第2から第5まで4連続5点というとんでもない乱調。これで藤波の予選通過も決まった。さらにブストがまたたいへんだった。途中、マシントラブルでマシンを交換したものの、スペアマシンの調子が万全ではなく、これで3連続5点をとって万事休した。ジェラベルトとブスト、二人のノミネートライダーがラウンド1で姿を消すという波乱の幕開けの最終戦となった。藤波としては、ランキング争いのライバルのカサレスがラウンド2に進出したのがちょっと誤算だった。予選敗退なら藤波のランキング7位が確定的となったのだが、勝負はラウンド2で、ということになった。ただラウンド1を見る限り、カサレスの調子はよろしくないので、ランキング7位は半分もらったつもりになっていた。

ラウンド2は、ラウンド1の順によって組み分けが決まる。ラウンド2の1組目は、ラウンド1の6位、3位、2位。カサレス、ブノア・ビンカス、アダム・ラガの3人。2組目は藤波(5位)、ファハルド(4位)、トニー・ボウ(1位)の3人。ここでの戦いは、トップになった者が優勝決定戦に、2位になった者が3位決定戦に進む。3位だと、その減点数(同点の場合はタイム差で)によって5位、6位が決まる。

photo1組目は、ラガが4点でトップ、そしてなんと、ラウンド1で不調だったカサレスが突然絶好調となって6点で2位、ビンカスが7点で3位となった。これでカサレスの4位以上が決まった。藤波がランキング争いでカサレスに勝利するには、ラウンド2で2位以上にならなければいけない。

とはいえ、ボウに勝つのはまず不可能に近い。チャンスがあるのは、ファハルドだ。実はファハルドとブストは、ランキング3位争いをしている。ブストが49点に対して、ファハルドが46点。3点差で迎えた最終戦だったが、ブストは8位に沈んでランキングポイントは51点で決定している。今回ファハルドが5位以上ならランキング3位はファハルドのもの、6位ならランキング3位はブストになる。

ラウンド2を前に、藤波のところにはブストとファハルドがやってきた。ブストは藤波にファハルドを破ってほしいとお願いしに来た。ファハルドは、負けてくれとは言わないまでも、ここで4位以上にならないとたいへんなのだと藤波に泣きついてくる(本当は5位以上になればいいので、ラウンド2で藤波に負けても欄ング3位の目はあったのだが、それはご愛嬌だ)。しかし藤波にとって、ブストとファハルドがランキング3位になろうが4位になろうが、なんの関係もない。ふむふむと聞き流して、自分の走りをするべく、準備をする。なんとかしてファハルドに勝ちたい。ブストのお願いを聞くわけではなく、それが当然の藤波の望みだ。

第1セクションはクリーン。ファハルドはこの第1で1点を失っているから、ちょっと戦況があやしくなっている。ファハルドのこの動揺に、さらにプレッシャーをかけていけば、ファハルドを破ることは可能だ。

ところが第2セクション、木で滑って5点になってしまった。これで藤波の戦いは事実上終了した。ファハルドはここを1点。トータルでは、藤波7点、ファハルド5点で、ファハルドが3位決定戦に進むことになった。トップはもちろんボウで、たったの1点だった。

藤波の7点は、ビンカスと同点。藤波のタイムが4分15秒7で、ビンカスは4分24秒6。この9秒差で藤波の5位、ビンカスの6位が決まった。

photo3位決定戦に進んだカサレスはファハルドに1点差で敗れたが、藤波とのランキング争いは3位決定戦に進んだ時点で決着していて、カサレスがランキング7位、藤波がランキング8位。ファハルドは3位となって、ブストとは7点差でランキング3位を獲得したのだった。

8位、7位、5位と、尻上がりに調子を上げてきた藤波。順位も悪くはないが、それ以上に走り的に悪くなかったのが、今回の大きな収穫だった。ダイエットをして体も絞った。2年前からマシンの仕様をボウ仕様に振って、その結果がようやく現れてきたというのもある。マシンの仕様変更は、もうちょっと早く結果を出したかったところだが、去年はフィジカルの問題をかかえて、いろいろ遠回りをしてしまった。

今シーズン、24年目のアウトドア世界選手権の開幕を目前に、藤波はシーズンが始まるのを楽しみにしている。

○藤波貴久のコメント

「今年3戦目の参戦で、ランキング争いにもあまりかかわっている状態ではなかったので、欲はなく、とにもかくにもケガをしないを目標に走ったのですが、結果も点数も、なにより自分の走りが満足いくもので、達成感が得られるよい戦いとなりました。ラウンド2では第2セクションの失敗で5位を決めてしまいましたが、それ以外はほぼ自分の思った通りの走りができました。いま、体調はとてもいいし、マシンとのコンビネーションもよくなっている。アウトドアの開幕が楽しみですが、それに先がけて、よいXトライアル最終戦となりました」

X-TRIAL 2019
Final(決勝)
1位 トニー・ボウ モンテッサ 1
2位 アダム・ラガ TRRS 1
RUNNERS-UP FINAL(3位決定戦)
3位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 11
4位 ホルヘ・カサレス ヴェルティゴ 12
Round2(セミ・ファイナル)
2-1位 トニー・ボウ モンテッサ 1
1-1位 アダム・ラガ TRRS 4
2-2位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 5
1-2位 ホルヘ・カサレス ヴェルティゴ 6
2-3位 藤波貴久 モンテッサ 7
1-3位 ブノア・ビンカス ベータ 7
Round1(クォリファイ)
1位 トニー・ボウ モンテッサ 0
2位 アダム・ラガ TRRS 5
3位 ブノア・ビンカス ベータ 6
4位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 6
5位 藤波貴久 レプソルHondaチーム 7
6位 ホルヘ・カサレス ヴェルティゴ 10
7位 ルカ・ペトレーラ ベ ータ 15
8位 ハイメ・ブスト ガスガス 17
9位 ミケル・ジェラベルト シェルコ 22
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ レプソルHondaチーム 115
2位 アダム・ラガ TRRS 89
3位 ジェロニ・ファハルド ガスガス 58
4位 ハイメ・ブスト ガスガス 51
5位 ブノア・ビンカス ベータ 43
6位 ミケル・ジェラベルト シェルコ 24
7位 ホルヘ・カサレス ヴェルティゴ 15
8位 藤波貴久 レプソルHondaチーム 11
9位 ルカ・ペトレーラ TRRS 8
10位 ガブリエル・マルセリ モンテッサ 6