毎年恒例、必ず世界選手権に組まれているアンドラ大会。毎年、セクションの場所などはまるでちがうところに設営されているのだが、標高がとても高いのでマシンをパワフルに走らせるのがむずかしいこと、晴れていればとがったグリップのいい岩が多いことなどはアンドラの定番だ。
今回も、晴れていればグリップはよく、ドライなら簡単ではないか、という予測の立つセクション設定だった。ただし雨が降ったらたいへんなことになるコンディションで、そして実際に雨が降り、コンディションはたいへんなことになっていた。
パドックは町の中で、そこから山のてっぺんまで上がっていく。第1セクションはパドックの近くの川で簡単。そこから上がって17セクションが一番上に設営されていた。最終セクションは18セクション。今回は18セクション2ラップの戦いだ。持ち時間の管理が17セクションではなく18セクションで行うので、17セクションから18セクションまでの長い距離(しかも延々と下り!)を時間を気にしながら降りてこなければいけない。安全面からもちょっと心配なところだが、主催者はこの設営を譲らず、持ち時間が気になる試合になることは予想された。
第2セクションは滑る長いセクションで、藤波は3点を失った。しかしそれ以上に、藤波がここに到着したときにはまだトライアル2クラスのライダーも残っていて、ひどい渋滞となったのがきつかった。第2セクションを出ると、すでにスタートから1時間が経過していた。
渋滞もあって、とんでもなく滑る第3セクションを申告5点でパスし、次の第4でも申告5点で抜けることにした。第3セクションは1ラップ目はみんな5点だったが、あとで聞けば、第4セクションはボウとラガは抜けていったということで、ちょっともったいなかったかもと思ったものだが、まずは先を急ぐことにする。そしてまた第5セクションで、渋滞だ。
それでも全体には、悪くない戦いができている感触はあった。そんな中、14セクションの最後の最後で、停止5点の判定をとられてしまった。ここはクリーンを狙っていた。そして慎重に走りすぎて、バランス修正をしている最中にとられた停止5点だった。乱れながら走り抜ければもしかしたら行けたかもしれないし、足をつけば確実に抜けられた。14から16は連続5点となっているが、15、16は申告5点。14セクションが、もったいない5点だったと悔やまれるところだ。
そのあたりからは時間との戦いとなり、藤波は18セクションを終えて2分のタイムオーバーとなった。ボウは最終セクションでパンクをしてビー度が落ちたまま降りてきて、タイムオーバー5点の他に最終セクションを申告5点、ラガはタイムオーバー7点など、みなタイムオーバーの多い戦いとなった。
2ラップ目、ボウとラガとの差もまだそれほどなく、目標の表彰台は充分いけると感じていた。2ラップ目、藤波のライバルはカベスタニーだった。路面が乾いてきたこともあって、藤波も1ラップ目よりいいスコアをマークしているのだが、カベスタニーも追い上げが急だった。それでもカベスタニーは、2ラップ目後半に減点をとりはじめて、これで一安心と思いながら、最後まで走ってゴールをした。
すると、スタートが藤波より遅かったチームメイトのブストが帰ってきて、最終セクションで5点を取ってしまって負けたと悔しがっている。ブストには5点ほどアドバンテージがあると思っていて、最後までそのペースを維持しているはずだったのだが、藤波が17セクションで3点となり、さらにはブストが超難関の16セクションで驚くべきクリーンをしていた。この事実を知らなかった藤波は、終わってみてブストに迫られていたのにびっくり。2点差でかろうじて表彰台を獲得したのに安堵したのだった。
日曜日、いくつかのセクションがむずかしくなっていた。夜のうちに雨が降るのは土曜日同様だったが、コンディションはよりドライになるのではないかという読みのもとと、たとえば3セクションなど、1ラップ目と2ラップ目の間に設定がやさしくなっていたものもあり、そんなセクションの設定がむずかしく設定されなおされていた。第3セクションはセクションもむずかしいが、オブザーバーが厳しいので、ふられながらでもそのまま突き進んでいかなければ5点になるという、そんなむずかしさがあった。
藤波はこの第3と、10セクションで5点になっている。しかしそれ以外は、特に大きな失敗もなく、まずまずの走りができていた。本人も、それで納得した戦い方もできていた。もちろんふたつの5点がなければさらにいいのだが、5点ふたつがあっても、全体的には満足のいく戦いだったといえる。
そして1ラップ目終盤。きのうほどではないが、時間がなくなってきた。最終セクションについたとき、残り時間はもう2分を切っている。持ち時間が気になり、そのまま下見もせずにトライに入った。そして、気持ちが乱れていたのだろうか、5点になった。この5点は痛かった。1ラップ目のがんばりが、全部帳消しになるような、情けのない5点だった。
2ラップ目、路面は急速に乾きはじめてきた。追い上げをするには、条件がよくなりすぎている。最終セクションの5点を挽回して、再び表彰台争いをするにはちょっと苦しい戦いになってきた。
それでも2ラップ目、11セクションまでは3点。まわりも抑えてきているから、特に素晴らしいというスコアではないが、充分勝負に参加する資格のなるスコアではあった。
ところが12セクション。停止5点となった。停止の判定はとてもむずかしい。トップライダーが停止判定でオブザーバーと問答するシーンはよく見るが、たいていのライダーの場合、半ば確信犯で一瞬止まっているのに、5点をとられてみるとなんで?と聞いてみる。しかし今回の場合、疑う余地なく、止まっていなかった。たぶんとられないだろうという際どいところを狙って停止判定をとられて5点になるのも落ち込むが、これはまったく5点になる予定などなく、いきなり5点の宣告だった。その落ち込みは半端ない。
もうそこからは試合もいくらも残っていない。カベスタニーらと接戦となっているのもわかっていたから、5点を引きずらないよう、一生懸命集中して残りのセクションをこなしたものの、挽回はならず。カベスタニーに3点差、ブストに5点差で4位争いに敗れ、6位まで後退することになった。
表彰台が目標ではあるが、この日はファハルドの調子がよく、ボウ、ラガに続いてファハルドとポジションまで順位を上げるには、2ラップ目にオールクリーンしてもまだ間に合わないくらいの差があった。しかし4位争いには勝てる可能性が充分あったから、結果6位はくやしいというか、残念な結果となってしまった。
「アンドラは去年は空気が薄く、マシンのセッティングに悩んで調子が出なかったのですが、今年はだいぶいい調子で走れました。それで土曜日には表彰台に上がることもできました。でも調子が悪くなく、試合運びもそんなに悪いことなかったので、日曜日の6位はくやしいです。カベスタニーの点数を把握しまちがえていたり、1ラップ目と2ラップ目にひとつずつ不本意な5点があったり、残念なところがたくさんあった大会でした。ランキング争いは大接戦で安心できませんが、前回から今回にかけて、ランキング3位を維持できたのは、今回の唯一よかったところかなと思います。土曜日の表彰台もよい結果でしたが、日曜日が悪すぎたので、ぼくの気持ちの中ではそれは帳消しになっています」
土曜日 | ||||
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1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 45 | 21 |
2位 | アダム・ラガ | スペイン・TRS | 52 | 23 |
3位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 72 | 14 |
4位 | ハイメ・ブスト | スペイン・モンテッサ | 74 | 17 |
5位 | アルベルト・カベスタニー | スペイン・シェルコ | 78 | 12 |
6位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・ヴェルティゴ | 89 | 12 |
7位 | ジェイムス・ダビル | イギリス・ヴェルティゴ | 96 | 11 |
8位 | ホルヘ・カサレス | スペイン・ベータ | 103 | 12 |
日曜日 | ||||
1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 4 | 32 |
2位 | アダム・ラガ | スペイン・ガスガス | 9 | 31 |
3位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・ヴェルティゴ | 16 | 28 |
4位 | ハイメ・ブスト | スペイン・モンテッサ | 27 | 27 |
5位 | アルベルト・カベスタニー | スペイン・シェルコ | 29 | 27 |
6位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 32 | 25 |
7位 | ミケール・ジェラベルト | スペイン・シェルコ | 32 | 25 |
8位 | ジェイムス・ダビル | イギリス・ヴェルティゴ | 37 | 24 |
世界選手権ランキング | ||||
1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 154 | |
2位 | アダム・ラガ | スペイン・TRS | 137 | |
3位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 99 | |
4位 | ハイメ・ブスト | スペイン・モンテッサ | 98 | |
5位 | アルベルト・カベスタニー | スペイン・シェルコ | 95 | |
6位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・ヴェルティゴ | 87 |