最終戦はマルセイユ。マルセイユのセクションは、町の中にある岩とかヒューム管とか、使われなくなったガソリンタンクとか、そんなものを組み合わせて作っている。それでも仕上げがうまいので、ありあわせの素材で作ったという感じにはなっていない。走る側からすると、少しがちゃがちゃとした印象があった。今回は5セクションと、いつもよりセクション数が少ないが、しかしセクションはとにかく長かった。1分半で走りきれるかどうかがぎりぎりだ。
1分半で走れず、2分を少し過ぎてしまうと、タイムオーバー減点は2点となる。これに2回足をつくと、それでもう5点になってしまう。アウトドアなら、何回足をついてもセクションをアウトできれば3点がもらえるが、インドアはそうではないので厳しい。
藤波の減点は14点。10点以内ならファイナル進出の可能性もあると考えていたが、14点は少しくらいすぎだ。これはファイナル進出はむずかしいかもしれないなと、藤波は考えつつ、ファハルドのクォリファイを見守ることになった。
むずかしいのは第4セクションのインだった。ファハルドは藤波が1点で抜けた第2セクションで5点となっているから、第4で5点となってくれれば、藤波のファイナル進出の可能性が広がるのではないかと思ったのだが、しかしファハルドは第4をすぽんとクリーンした(タイムオーバーで1点)。あぁこれはもう可能性がないかなとあきらめつつ、最終第5セクションを見ていると、なんとファハルドは5点になってしまった。
最終セクションは岩をぽんぽんぽんと越えていくものなのだが、途中でラインがずれて、ファハルドは水の中に足をつっこまなければいけないことになった。それでもそこから落ち着いて対処すればなんとかなったかもしれないのだが、そうこうしているうちに時間がなくなってきて、そこに焦りが生じたのかもしれない。その先の岩から落ちて、万事休すとなった。終わってみれば、前回までと同様、藤波とファハルドは1点差。しかし今度は、藤波の方が上位だった。
今シーズン、ファイナルを走ったのは3戦連続でスペイン人ばかりだった。最終戦に来てようやく、スペイン人以外のライダーがファイナルを走ることになった。藤波とすれば、すでにインドアのトレーニングはしていないし、内容的にもオーストリアの時の方がよかったと思っているから、今回のファイナル進出は喜びもひとしおだった。
さて、今年始めて走るファイナルラップ。この日はボウが10連覇を達成するかどうかの大事な一戦で、ボウたる者が傍から見ていても緊張してがちがちだった。そのせいか、クォリファイでは3位となってしまい、ファイナルのトライ順を決めるスピードレースでは、最初に藤波とあたることになった。
ボウは藤波に勝ち、さらにラガにも勝ち、カベスタニーにも勝って、藤波が一番先にトライし、ボウが最後にトライする順番が決まった。
逆からのトライとなるファイナルは、クォリファイより難度は高い。第1セクションのでっかいステアケースを、藤波は登れないと思っていた。ところがここを1点+1点で抜けられた。続く第2セクションもクリーン+1点で抜けてしまった。これは上出来だ。もしかして、これはいけるんじゃないの?と思えてきた。
第3セクションは、木がメインのセクションだった。ところがここで、アンダーガードがあたって1点を失い、気持ちが焦ってきて飛び降りで失敗して5点となった。第4セクションは、鉄製のコンテナを登っていくような、しょうがないところで5点となってしまった。最終第5セクションも5点。
ファイナルでの藤波は、点数をとりすぎた。ファイナルラップは難度が上がっているとはいえ、3位のラガに13点差というのは、スコアが悪すぎた。
しかしともあれ、当面の目標だったファイナル進出は果たして、次はいよいよアウトドアシーズンの開幕だ。去年は1年間苦しんだ膝の手術の影響は、現在ではだいぶ改善されている。もちろん完治はしないし、痛みもまったくなくなっているわけではないのだが、去年やおととしに比べれば完治といっていいほどの改善ぶりだ。だから藤波自身、2016年シーズンは楽しみにしているのだ。
「自分の走りとしては、前回オーストリアのときの方がよかったです。今回はクォリファイもどうかなぁというできだったのですが、ファハルドが失敗してくれてファイナルに進めました。ファイナルでは、こんなに減点をとってしまっていては、クォリファイ通過もおぼつかないという走り方になってしまいました。このへんは、まだまだインドアの走り方ができていないのだと思いますが、今年は6位以下に落ちることなく、最後にはファイナル進出もできたので、悪くはないXトライアルシーズンだったと思います。今はもう気持ちを切り替えて、アウトドアモードでがんばります」
Final(2ラップ目) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 0 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 4 |
3位 | アダム・ラガ | TRS | 5 |
4位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 18 |
Qualification(1ラップ目) | |||
1位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 2 |
2位 | アダム・ラガ | TRS | 4 |
3位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 5 |
4位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 14 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ヴェルティゴ | 15 |
6位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 17 |
7位 | エディ・カールソン | モンテッサ | 22 |
8位 | ハイメ・ブスト | レプソルHondaチーム | 23 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 75 |
2位 | アダム・ラガ | TRS | 59 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 54 |
4位 | ジェロニ・ファハルド | ヴェルティゴ | 33 |
5位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 27 |
6位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 13 |
7位 | エディ・カールソン | モンテッサ | 9 |
8位 | ジェイムス・ダビル | ヴェルティゴ | 2 |
8位 | ハイメ・ブスト | レプソルHondaチーム | 2 |