インドアトライアル世界選手権Xトライアルも最終戦。すでにチャンピオンはトニー・ボウが決めていて、今回はそれぞれのライダーがそれぞれの仕事をきっちりこなせるかどうかという、インドアシーズンの有終の美を飾るための一戦となった。計算上は、ランキング2位争いは6点差と逆転のチャンスはあるが、6点をひっくり返すには1位と3位のリザルトが必要だから、可能性は薄い。ジェイムス・ダビルとジェロニ・ファハルドによる4位争いのほうはどう転ぶかわからない。両者の差は、わずか2点だ。藤波はファハルドにさらに9点差でランキング6位で最終戦を迎えている。
クォリファイ。対戦相手を決めるくじ引きで、藤波はなんと1番を引いてしまった。1番は、そのまますべてのライダーに先んじてセクショントライをすることを意味する。対戦相手は、この時点でランキング4位のダビルとなる。
Xトライアルの(今年の)ルールでは、ランキング4位まではそのまま、ボウが最後の対戦をし、ランキング2位のアルベルト・カベスタニーが最後から2番目の対戦、3番目がランキング3位のアダム・ラガ、最初の対戦がダビルとなっている。対してランキング5位以降は、ワイルドカードライダーが含まれることもあってくじを引く。今回は藤波が1番くじを引き藤波と対戦。2番くじはランキング5位のファハルドが引きラガと対戦、カベスタニーと対戦する3番くじをホルヘ・カサレスが引いて、ボウと対戦をするのがロリス・グビアンだった。
ランキング5位以降のグループとしては、4番くじを引けば対戦相手がボウだから、ほとんど勝ち目がない。しかしみんなの走りを見てからトライができるから、減点数を減らせる可能性はある。対戦で勝利できなくても、今回なら減点数の上位二人が、セミファイナルに進出できるルールだ。
しかし逆の考え方もできる。藤波のように一番くじを引けば、対戦相手はランキング4位のライダーとなる。もちろん簡単ではないが、ボウと対戦するより勝機はある。対戦で勝利すれば、その減点数がほかの対戦に比べて多かったとしても、勝った時点でセミファイナルへの進出は決まる。
ダビルが相手なら、もしかしたら勝てるかもしれない。藤波はポジティブにそう考えて、クォリファイに挑んだ。今回の藤波は、トレーニングでいい感触をつかんでいて、モチベーションも高かった。新シーズンに向けてのマシンも、気に入った仕様に仕上がってきている。ランキングや結果はともかく、いい走りをしてXトライアルのシーズンを終えたいと思っていた。
セクションを見た限りでは、クォリファイの6セクションのうち、最後の一つはこれは無理だというものだった。5も厳しい。しかしそれ以外は、5点にはならずに抜けられそうだ。
その第1セクション、ポンポンと点から点に飛んでいって、斜めに飛んで飛びつく。今年のXトライアルではアンダーガードが引っかかると1点減点をとられるので、これを意識して、アンダーガードを引っかけないように飛んだところ、ちょっと飛びすぎた。いきすぎて結局エンジンから落ちてしまい、ブレーキをかけられないまま落ちるという結果になってしまった。下見の段階で、もし第1セクションで5点になるとしたら、そのポイントはそこではなかったはずなので、藤波にすれば想定外の5点となった。しかし不幸中の幸い、藤波を見てトライしたダビルは、飛びすぎを警戒して逆に勢いが足りず、やっぱり同じところで5点になった。
第2セクションは木でできたセクション。クリーンできるセクションだったが、ちょっとバランスを崩して1点。ダビルはクリーンしたから、この遅れを取り戻さなければいけなくなった。
その思いが第3セクションで現れたか、ゴミ箱から助走のない駆け上がり。足をつきに行って、マシンを横から回すように引き上げれば抜けられる自信はあったが、逆に必ず1点となってしまう。藤波は、まっすぐ向かってクリーンを狙うことにした。しかし失敗。クリーンを狙いすぎての5点だった。しかもダビルは、ここをクリーン(タイムオーバーで1点)。ダビルとの点差は5点だ。
残るは3セクション。第6はまず不可能だから、逆転するなら第4か第5。これはちょっとやばいことになってきたと思う。第4は、クリーンするならリヤタイヤだけでぽんぽんと飛んでいくセクションだった。抜けるだけならほかの方法もあるが、クリーンをしなければダビルに勝ち目はない。いちかばちかの勝負に出た。そして6つあるうち、4つまではうまくいった。しかし5つ目でフロントが落ちてしまい、そして5点になってしまった。ここはダビルも5点になったが、もはやそれで安心している場合ではない。第5セクションはヒューム管に斜めから飛ぶセクション。ここではグリップを失って、5点となった。万事休す。
後半の3セクションはダビルも5点だったが、ダビル21点に対し、藤波は26点。ダビルには負けてしまったので、あとは26点を上回る選手が二人以上現れないことを祈るばかりとなった。しかし藤波は、この時点ですでに負けを確証していた。1点一つだけで5セクションで5点という結果は、ほとんど考えられる最悪に近い。カサレスとグビアンが、これ以上の減点をとってしまう可能性もゼロではないが、すでに彼らは、藤波とダビルの走りを観察して、セクション攻略方法を研究し尽くしている。
案の定、藤波らの対戦のあとの対戦では、25点より多い減点の選手は現れなかった。ファハルドに負けたラガは17点、カサレスとグビアンが23点。今回はクォリファイで二人が敗退することになっていたから、まず藤波の敗退は決まった。カサレスとグビアンは、最後のセクションでの成績が問われることになるが、第6も第5も第4も、両者そろって5点。決着は第4セクションでのグビアン3点(2点+1点)、カサレス5点で決まったが、藤波にすれば、それはどっちでも大差がない。
今シーズン、もっとも悪い8位。ランキングは変わらずの6位だが、なんとも最後に来てしまらない結果となった。もともとインドアは成績の出ないことが多い藤波だから、成績のいい悪いでそんなに気持ちが浮き沈みする予定ではないのだが、それでも結果がよければ気持ちは上向きになるし、悪ければ沈む。今はただ、2週間後に迫ったアウトドアシーズンで、しっかり自分の走りができるよう、コンディションと気持ちを整えているところである。
なお来たるオーストラリア大会、アウトドアシーズンの開幕戦からは、藤波らのチームはこれまでのチームモンテッサから、チームホンダとなって、マシンやウェアのデザインもちょっとだけ変わって登場する予定だ。
「調子が悪いとか、そういうことではなかったのですが、ジリ貧で結果が落ちていくと、どうしたの?と思われてしまうでしょうね。特に今年は膝のケガがあって、それでも最初に4位に入ってこれはいけると思ったらその後ぜんぜんで、表彰台に一度も乗れないシーズンになってしまいました。膝の方は、100%元に戻ることはないですが、Xトライアル開幕の頃からすると、だいぶいい状態になっています。ただ80%くらいには回復するといっても、今が何パーセントなのかがわからない。今年はとにかくこの膝とうまくつきあって、よいアウトドアシーズンとしたいと思います」
Final(決勝) | |||
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1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 0 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 10 |
3位 | アダム・ラガ | ガスガス | 10 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 20 |
Semi Final(セミファイナル) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 6 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 6 |
3位 | アダム・ラガ | ガスガス | 7 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 13 |
5位 | ロリス・グビアン | オッサ | 15 |
6位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 16 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
○ | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 0 |
△ | ロリス・グビアン | オッサ | 23 |
○ | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 7 |
× | ホルヘ・カサレス | ガスガス | 23 |
○ | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 13 |
△ | アダム・ラガ | ガスガス | 17 |
○ | ジェイムス・ダビル | ベータ | 21 |
× | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 26 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 100 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 69 |
3位 | アダム・ラガ | ガスガス | 60 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 41 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 35 |
6位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 26 |
7位 | ロリス・グビアン | オッサ | 18 |
8位 | ホルヘ・カサレス | ガスガス | 17 |
9位 | マテオ・グラタローラ | 5 | |
10位 | スティーブン・コクラン | ガスガス | 3 |
11位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 2 |
12位 | マテオ・ポリ | 1 | |
13位 | アレッシャンドレ・フェレール | シェルコ | 1 |
14位 | ジャック・チャロナー | オッサ | 1 |