インドア世界選手権Xトライアルは第4戦。今シーズン、全5戦で開催されるシリーズの、早くも終盤戦となる。今回の開催地は、イタリアの工業都市、ミラノ。世界的モーターショーの開催地としても知られている、オートバイの聖地でもある。
参加ライダーは10名。ノミネートライダーの6名(ボウ、藤波、ラガ、カベスタニー、ファハルドにジュニアチャンピオンのホルヘ・カサレス)に加えて、今シーズン絶好調のイギリス人のジェイムス・ダビル、フランス代表ロリス・グビアン、そして二人のイタリア人、マテオ・グラタローラとマテオ・ポリ。5名のスペイン人、2名のイタリア人、日本とフランスとイギリスが一人ずつという顔ぶれだ。
マシン別で見れば、ガスガス3台、モンテッサ2台、ベータ2台、オッサ2台、シェルコ1台の計10台となっている。
クォリファイはランキングの上位と、それ以外のライダーが一対一で戦う2014年型ルール。ランキング6位の藤波はラガと対戦し、3組目に登場となった。
最初の対戦はダビルとグビアン。6セクションを走ってダビルが18点、グビアンが19点と僅差だったが、ダビルが勝利。ダビルのセミファイナル進出は決まり、グビアンは後発のできを待つことになった。
次の対戦は地元イタリアのグラタローラとファハルド。ファハルドは16点、グラタローラは18点。今回は対戦に勝利した者も敗した者も、点数がなかなか僅差だ。
そして藤波。セミファイナルに進出する条件としては、まだ第一にラガに勝利すること。それが無理なら、敗者の中でもっともいいスコアを出すこと。二人走った時点でグビアン19点、グラタローラ18点、藤波のあとはポリとカサレスが控えている。ポリはともかく、カサレスはインドアが得意だし、しかも今回はボウと対戦する最終組だ。すべての対戦を観察した上で、意外な好スコアをマークするかもしれない。
しかしそれでも、藤波はクォリファイのボーダーラインを15点程度と読んでいた。15点をマークできれば、セミファイナルへの進出は安泰ではないかと。
下見をしたところ、最終第6セクションはちょっとむずかしそうだった。案の定、結果を見ればラガとボウ以外はみな5点だった。藤波も、ここは5点でもやむを得ずと考えていた。それ以外の5セクションのうち、3セクションをクリーンすれば15点という目標値が実現する。すでにひとつクリーンしたから、あと二つだ。
ファハルド、グラタローラが5点となった第1セクション、藤波はクリーンだった。ここをダビルは1点。幸先はよい。次の第2セクションは、大きな切り株などもあったセクションだが、藤波の鬼門は四角い置き物だった。
この日の藤波は、悩みを抱えていた。負傷以来、トレーニングの成果なのか、見違えるように上がるようになったステアが、この日はまったく上がれない。もしかすると、クラッチのセッティングのせいなのかもしれないが、試合に入るまで、ベストなセッティングは見つけられなかった。
今藤波は、アウトドアシーズンの開幕を念頭に、アウトドアの練習ばかりしている。アウトドアの今シーズンは、レギュレーションが少し変わって最低重量が70kgとなったり音量規制が厳格になったりと、ライダーには厳しい条件がついてきている。それに合わせてマシンも仕様が変わり、セッティングも変わってきた。クラッチは、その一環だった。わかりやすく言ってしまえば、瞬時にバツンと食いつくクラッチから、ゆっくりミートするクラッチへ。そのクラッチでトレーニングを重ねてきた藤波は、インドアもそのまま戦えると思っていたのだが、もしかすると、アウトドア用のクラッチは、高くてトリッキーなインドアのセクションには、やはり向いていなかったのかもしれなかった。
第2セクションでは、何度も何度もステアをやり直した。インドアではバックは認められている。足つき5回で5点となるのと、セクション走破の持ち時間が決まっているから、それさえ守ればできるまで挑戦できる。そこまでクリーンだったし、その先もクリーンの自信があった藤波は、何度も何度も鬼門のブロックにトライをしたのだが、しかし結局5点になった。
この5点は、藤波の大きな誤算になった。でもまだ、あとふたつクリーンをすればいいのだ。
第3セクションで、藤波はクリーンを狙った。しかしクリーンを狙ったがために、アンダーガードをあてて1点を失い、さらに足をついて2点減点となった。あるいはクリーンを狙わなければ、アンダーガードをあてたときに足をついてマシンを進めて、ちがう結果になったかもしれない。
第4セクションは、藤波の中では成功の確率が半々だった。そして、取り戻せるならここだなという読みもあった。しかし、落ちてしまった。5点。残るは第5セクション(と第6セクション)しかない。第5をクリーンして第6が5点とすると、藤波が残せるスコアは17点となる。グラタローラより1点いいスコアだが、このあとカサレスが走ることを考えると、不安は残る。
そして第5セクション。藤波は最後の最後までクリーンをしていて、しかし最後の最後に1点を失った。6セクションで18点が、藤波のクォリファイのスコアとなった。グラタローラと同点。しかしグラタローラは第5セクションをクリーンしている。
今年のルールでは、同点の場合は最終セクションでのスコアがいい方が勝者となる。最終セクションはグラタローラも藤波も5点だった。この場合はその一つ前のセクションでのスコアを比較する。第5セクション、グラタローラのクリーンに対して、藤波は1点。
「負けた」。第5セクションを走り終えたときに、藤波は結果を理解した。セミファイナルに進出できるのは6名。対戦組は5組だから、勝者だけで5人。残るはひとり。敗者の中でもっとも好成績の一人がセミファイナルに進出するのだが、この時点で藤波はグビアンよりは好スコアであるものの、グラタローラとは同点ながら負けている。つまりクォリファイ敗退が決定だ。
藤波と対戦したラガは、6セクションを2点で終えた。その後、カベスタニー(8点)と対戦したポリは25点。最終組のボウはオールクリーンで、対戦したカサレスは19点だった。結局18点が二人、19点が二人だったから、藤波はクォリファイ敗退のトップだったわけだ。
今シーズン初めての7位。今シーズン初めて、セミファイナルを走らないXトライアルとなってしまった。
「今シーズンは、予選落ち(クォリファイ敗退)が一度もありませんでしたから、今回の結果はくやしいです。グラタローラと同点で第5セクションのスコアで勝負が決まったわけですが、第3セクションの失点をひとつ減らしておければ、あるいは第5セクションの減点をがまんできればそれでセミファイナル進出だったわけで、ほんとうに、たれ・ればを語ればきりがないですが、あと一歩でした。でも今回はしかたがない結果だったとも思います。膝の具合はだいぶよくなっていて、試合後に痛みが残ったり治療をしたりということはなくなりました。Xトライアルのスケジュールはあと1戦残っていますし、来週も世界選手権でないインドアトライアルの開催がありますが、すでに目標はアウトドア一本に絞って準備中です」
Final(決勝) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 1 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 13 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 16 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 20 |
Semi Final(セミファイナル) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 0 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 7 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 11 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 11 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 15 |
6位 | マテオ・グラタローラ | 16 | |
Qualificarion Lap(予選) | |||
○ | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 0 |
× | ホルヘ・カサレス | ガスガス | 19 |
○ | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 6 |
× | マテオ・ボリ | 25 | |
○ | アダム・ラガ | ガスガス | 2 |
× | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 18 |
○ | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 16 |
△ | マテオ・グラタローラ | 18 | |
○ | ジェイムス・ダビル | ベータ | 18 |
× | ロリス・グビアン | オッサ | 19 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 80 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 54 |
3位 | アダム・ラガ | ガスガス | 48 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 32 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 30 |
6位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 23 |
7位 | ホルヘ・カサレス | ガスガス | 13 |
8位 | ロリス・グビアン | オッサ | 12 |
9位 | マテオ・グラタローラ | 5 | |
10位 | スティーブン・コクラン | ガスガス | 3 |
11位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 2 |
12位 | マテオ・ポリ | 1 | |
13位 | アレッシャンドレ・フェレール | シェルコ | 1 |
14位 | ジャック・チャロナー | オッサ | 1 |