地中海の観光地マヨルカ島での試合を終えたXトライアル・サーカス一行は、3月17日、イタリアのミラノへやってきた。試合に先がけては、先月亡くなったイタリアの誇るトライアル・キング、デエゴ・ボシスの追悼セレモニーが催された。ボシスの出身地のベルガモは、ミラノから遠くない。
今大会、セクションはイタリアのインドア選手権で使われているもので、どちらかというとスペインのセクションに近い。ステアケースは高く、上るか落ちるか、結果がわかりやすい。藤波が、あまり得意とするパターンではない。
クォリファイも、むずかしかった。結果を見ると、トニー・ボウ(モンテッサ)こそオールクリーンで走っているが、もはや、彼が別格なのはくやしいが誰の目にも明らかだ。ボウ以外は、トップ6が5つのセクションでまんべんなく5点を取っているのを見ても、今回のクォリファイセクションのレベルの高さがわかる。
藤波にしてみれば、クォリファイは不本意な走りっぷりに終わっていた。5点がふたつ、2点と1点がひとつずつで、クリーンはひとつ。トータル13点。クォリファイ5位で、セミファイナル進出は安泰だったが、6位のロリス・グビアン(ガスガス)とは1点差、今回スポット参戦したダニ・オリベラス(オッサ)とも4点差だったから、けっして安全圏ともいえなかった。ともあれ、セミファイナル進出ははたした。
今回、いつものメンバーだったアルフレッド・ゴメス(モンテッサ)がいなくなっている。ゴメスは今シーズンの参戦体制が確立できず、トライアルからの引退を表明した。それを機に、Xトライアルのノミネートも、ここまで2戦参戦しているポル・タレス(JTG)がノミネートライダーとして昇格することになったのだが、そのタレスは第1セクションで転倒して、手首を骨折。そのままリタイヤとなった。今回は、タレスの他に前記したオリベラスと、地元イタリアのジャコモ・サレリ(ベータ)が出場していた。ただし、Xトライアルのこの6戦、いつもの6人以外がセミファイナルに勝ち残った記録はない。
さてセミファイナル。藤波はスピードレースでグビアンに勝ち、ラガとファハルドが負けを意味する1点減点を喫していた。藤波にすれば、いつものように、ファハルドに対して1点のアドバンテージをとってのセミファイナルの始まりだ。
第1セクションでは、グビアンが5点になった。続く第2セクションは、大木が垂直に立っていて、そこに駆け上がる設定だった。助走がなく、かなりむずかしい。グビアンも落ち、藤波も落ちてしまった。結果的にはここは、ボウもラガも落ちている。ここをしかし、ファハルドが登ってしまった。
あとで聞けば、ファハルドも登れたとは思っていなかったらしい。古い木で、そこここがささくれ立っている木だったので、登り損ねた、落ちると思ったところが、ステップかリンクがささくれに引っかかって落ちずに耐えていたのだという。今シーズン、ここまで6戦連続でセミファイナル敗退となっているファハルドは、マシンを乗り換えてしかたない面もあるとはいえ、運に恵まれていないところもあった。今回はそれを帳消しにするような幸運に恵まれた。しかしこれは、藤波にとっては不運だった。
ファハルドはこの木のセクションはクリーンしたものの2点のタイムオーバーをとった。これでトータルは3点。藤波は5点だから、2点をめぐる攻防となった。正しくは、藤波の方がクォリファイの順位が下位だから、同点ではファハルドがファイナル進出となる。藤波はこの先のセクションであと3点以上ファハルドとの点差を縮めなければいけない。
第3セクションは、ボウとラガ以外はみな5点だった。そして最終第4セクションとなった。グビアンがまず5点。続いて藤波だ。藤波はここをばっちりクリーンした。やるべきことはやった。あとはファハルドが3点以上の減点をとってくれることを願うしかない。フェアプレー精神にもとるから大きな声では言えないが、ファハルドのトライを見守りながら「落ちろ」と願った。しかし願いは届かなかった。ファハルドはクリーンし、タイムオーバーの1点。トータル減点は9点で、藤波は10点。1点差で、藤波は6戦目にしてファイナル進出を逃すことになった。
このあとは、ボウとラガが接戦を繰り広げ、最終セクションでボウが背中から落ちるクラッシュをし同点に。トップ争いが同点になると、そこでタイブレイクがおこなれるのだが、ボウは息ができずにうなっている。それでもしばらくうなっていたのち立ち上がって、タイブレイクを走り、ボウは6戦目の勝利を決めた。
この勝利でボウは、2012年のXトライアルのチャンピオンを決めた。ボウにとっては、6回目のインドア世界チャンピオン(モンテッサに移籍してから全勝)だ。
「去年、ファイナルを走ったのはたったの1回でした。今シーズン、5戦連続でファイナルを走ったのはそれに比べると格段の成績なのですが、やはり慣れてしまうと、ファイナルを走るのがあたり前になっているので、それを逃したのがすごくくやしいです。あと1戦、悔いのない走りをしたいと思います」
Final Lap(決勝) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 10 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 10 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 18 |
4位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 27 |
5位 | 藤波 貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 10 |
6位 | ロリス・グビアン | ガスガス | 21 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 0 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 5 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 5 |
4位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 10 |
5位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 13 |
6位 | ロリス・グビアン | ガスガス | 14 |
7位 | ダニエル・オリベラス | 17 | |
8位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 24 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | 120 | |
2位 | アダム・ラガ | 78 | |
3位 | アルベルト・カベスタニー | 78 | |
4位 | 藤波貴久 | 57 | |
5位 | ジェロニ・ファハルド | 36 | |
6位 | ロリス・グビアン | 30 |