マルセイユ大会から約1ヶ月のインターバルを置いて、インドア世界選手権Xトライアルはスペインの首都マドリッドへやってきた。
今シーズン、フランス、スイス、フランスと転戦してきたXトライアルの初めてのスペインラウンド。インドアトライアルは、セクションを構成する素材は使い回しをされている。Xトライアルのスペインラウンドで使われる素材は、スペインのインドア選手権で使われるものと同じ。スペインの選手にとっては、いわば走り慣れたホームでの戦いとなる。藤波を始め、スペイン以外の国の選手にとってはアウェーの戦いだ。そして今回は、スペイン人6人、日本人とイギリス人とフランス人が一人ずつの、計9人での戦いとなった。
今年に入って、藤波のXトライアルでの成績は、悪くない。2004年には優勝経験もある藤波だが、インドアはまだまだ不慣れな戦いだ。さらに数年間からのルール変更によって、Xトライアルはアウトドアのトライアルとは別のスポーツという内容に変化してきている。セクションを攻める光景は変わらなくても、試合に臨む気持ちの集中のさせ方や点数のまとめ方など、インドアにはインドアの戦い方がある。インドアを走り慣れている者以外には、なかなかむずかしい戦術だ。
しかしそんな中にあって、今年の藤波は、まだ5位以下の成績をとったことがない。これまでの藤波にすれば、これはたいへんな快挙だ。ファイナル(決勝)進出が4位以上だから、今年の藤波は常に決勝を走っている、ということだ。3戦連続のファイナル進出が4戦連続になるかどうか。藤波のファイナル進出を阻む最右翼は、3戦連続でファイナル進出を逃したジェロニ・ファハルド。ベータに移籍して、本来なら表彰台を争うくらいの期待を浴びながら、波に乗れないでいる。ファハルドにとっては、手堅くファイナルに進出する藤波は目の上のたんこぶ以上の存在だろう。
藤波は、今回は珍しくクォリファイから好調だった。いつもはクォリファイではあまりエンジンがかからず、セミファイナルでなんとか調子を出してファイナルに進出するというシナリオなのだ。
5セクションで競われたクォリファイ、ゴメスとタレスはオール5点、グビアンとブラウン、ファハルドは5点が4つ、藤波は5点が3つだった。ラガは5点がふたつ、カベスタニーが5点ひとつ、ボウは5点なしという結果で、それがそのままクォリファイの順位になった。藤波は4位。
4位ということは、セミファイナルをトップで走らなくていいということだ。いつもは5位や6位でセミファイナルに通過するので、セミファイナルのセクションを真っ先に走らなければいけない。今回はクォリファイが好調だったおかげで、ブラウンとファハルドの走りを観察することができた。これは藤波にとっても、ずいぶんと楽な印象を与えてくれていた。
セクションはスペインのインドアセクションらしく、どれも高い。そしてほとんどが鉄板でできている。あがれればよし、あがれなければ、落ちるしかない。そのどちらかが待っている。
最初のダブルレーンで、藤波はラガに負けた。以前の藤波はダブルレーンには自信があったのだが、ルールが変わって、今のXトライアルはダブルレーンで負けないことが勝利に直結する比重が高い。それでみんな、ダブルレーンが速くなってきた。藤波の速さは変わらないにしても、みんなががんばって速くなっている。
ダブルレーンで負けて1点減点からスタートしたセミファイナル。しかし今回は、以外に早く挽回ができて、そこでファイナルへの流れが決まってくれた。セミファイナルの1セクション目。藤波は足つき1点、タイムオーバー2点で抜けることができた。ここはつるつるのヒューム管が鬼門で、みんなが失敗してくれたおかげと藤波は語るが、カベスタニーもファハルドも5点になったセクションだから、このアドバンテージは大きい。
このあと、藤波とファハルド、そしてブラウンの3人は2、3、4セクションをみんな5点だったから、勝負はダブルレーンと第1セクションでつくことになった。藤波の予定では、もうひとつ、第4セクションを抜けられるはずだった。ここは鉄板で作られたいかにもインドアというセクションではなく、石が並んでいて、まだ比較的ナチュラルなセクションになっていた。こういうところは、藤波が本領を発揮できる。ひそかに期するところがあった第4セクションだが、それが裏目に出たか、インでまくれ返って5点となってしまった。
藤波、ファハルド、ブラウン。この3人のうち、ダブルレーンで勝ったのはブラウンだけ、第1セクションを計3点で抜けたのは藤波だけ。ということで、セミファイナルの順位は藤波が4位、ブラウンが5位、ファハルドが6位ということになった。藤波の、4戦連続のファイナル進出が決定だ。
そしてファイナル。ファイナルはまずダブルレーンから始まる。セミファイナルのダブルレーンとちがって、総当たり戦だから、ひとりが3回ずつ、6組のレースがおこなわれる。
藤波は、ラガとカベスタニーには勝利した。しかしボウには負けた。ボウは全勝、藤波はボウに次いで好成績の2勝1敗。ラガが2勝1敗で、カベスタニーが3敗というダブルレーンの結果だった。
そして最後の3セクション。藤波とカベスタニーはセミファイナルで2点差だった。ダブルレーンでその差を2点縮めたので、ここでは同点になっている。このまま同点だと、クォリファイの順位がよいカベスタニーが上位につける。ぜひもう1点カベスタニーにリードをとりたいところだ。
しかし、スペインのセクションで、過去インドア世界チャンピオンとなったことがあるカベスタニーが相手、表彰台争いは、やはり簡単ではない。
1個目(セミファイナルから通し番号で、これは第5セクションとなる)は1点とタイムオーバーの1点で計2点。カベスタニーは1点だけだったから、点差は逆に1点広げられてしまった。
ファイナル2個目(第6セクション)はカベスタニーが3点+1点。藤波はインを上がれず、5点だった。これでカベスタニーには2点差。そして最後はボウ以外は3人とも5点。これで、わずか2点差ではあるが、藤波の4位が決まった。
次なる戦いは、地中海に浮かぶマヨルカ島になる。
「またファイナルに進出して、ぼくもびっくりです。スペインのセクションは、やはりスペイン人には有利な面が多いのでたいへんなんですが、こんかいもやはりたいへんでした。でも勝負を楽しめています。これでランキング5位のファハルドにはだいぶポイント差をつけられたし、上にも下にも差がつきました。ファイナル進出を大きなテーマにしてきましたが、ちょっとちがう攻め方をしてもいいかもしれませんね。ファイナルに進めないリザルトが届いたら、なにかチャレンジを始めたと思ってください」
Final Lap(決勝) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 13 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 20 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 30 |
4位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 32 |
5位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 20 |
6位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 21 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 1 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 9 |
3位 | アダム・ラガ | ガスガス | 11 |
4位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 17 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 20 |
6位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 20 |
7位 | ロリス・グビアン | ガスガス | 22 |
8位 | ポル・タレス | JTG | 25 |
9位 | アルフレッド・ゴメス | モンテッサ | 25 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | 80 | |
2位 | アダム・ラガ | 54 | |
3位 | アルベルト・カベスタニー | 51 | |
4位 | 藤波貴久 | 39 | |
5位 | ジェロニ・ファハルド | 22 | |
6位 | ロリス・グビアン | 19 |