日本GPで負傷を負った藤波貴久。本来なら翌週にフランス・カオスでのスタジアムトライアルイベントが組まれていたが、藤波はこれはキャンセル。つかの間の療養をしたあと、最終戦フランスへやってきた。
日本GPでランキング3位まで浮上した藤波は、ここで最後に勝利を飾り、2011年の有終の美を飾りたいところだ。
雨は降ってはいなかったが、そのうち必ず降るという空模様だった。トップスタートは、日本GPの日曜日に勝利したアダム・ラガ。藤波が二番手で、トニー・ボウが三番手スタートとなっていた。
トップ3がそろってクリーンした第1セクションを終え、第2セクションにかかろうという頃、ラガがすごい勢いでセクションを抜け始めた。藤波が第2セクションを終えて第3セクションに到着すると、ラガはすでにトライ待ちの列の中にいた。藤波より3人、4人前にいる。
こういうときは、まずまちがいなく雨が降ってくる。藤波も下見もそこそこ、ラガに追いつくべく、トライ待ちの列に並んだ。しかしどうも、ラガのペースにはついていけない。ラガはチーム総動員で、前に並ぶジュニアクラスのライダーに順番を譲ってもらい、あるいは強引に先に割って入って先を急いでいるようだ。
前を走るジュニアのライダーとて、同じ試合を戦う選手にはちがいない。藤波らが追いつくライダーはそれほど高順位のライダーではないが、それでも試合を投げているわけではない。ラガのあと、藤波が先を譲ってもらうのも、限界ありだ。
第4、第5セクションとセクションを進んでいくと、徐々にラガの姿が遠くなっていった。第6セクションに藤波が到着したときには、すでにラガの姿はあとかたもなかった。藤波はさらにペースを上げて、結局10セクションまでは下見なしで走り進んだが、ラガには追いつけず。その間、第7セクションでは前転して5点となるなど、下見をしていないゆえの減点も少なくなかった。前を走るライダーが誰もいない。事実上、トップバッターとして走るに等しい。すぐ後ろを走るボウと相談しながらトライしていくが、それでも減点は多い目となった。
特に1ラップ目はさんざんだった。3つの5点をとって、ラップの減点は24点。トップ争いにはほど遠い。
そして2ラップ目の第2セクション、ついに雨が降り始めた。3セクションに着いた頃は土砂降りだ。ただし不幸中の幸い、3セクションから5セクションまでは川のセクションだった。雨が降ってもいまさら大きな影響はない。しかし第6セクションからはまた岩場のセクションとなる。雨の影響は大きい。岩には苔が生えていて、雨さえ降らなければものすごくグリップがいい。しかしひとたび雨が降ると、とんでもなく滑る。つるつるだ。
9セクションで、オブザーバーにラガが何点でいったのかを聞いてみた。クリーンだという。もしこのコンディションでクリーンをしていったなら、神業だ。今日のラガはとにかくものすごい早まわりだった。作戦勝ちといえば、作戦勝ちだ。
しかしそのやり方には、首をかしげる向きは多かった。早く回るだけなら作戦だが、前を行くライダーをおしのけて進んでいくのはいかがなものか。どうにも、腑に落ちない今回の結果となった。
ライディング的には、藤波もけっして好調ではなかった。標高が高くエンジンにパワーがなく、その対策とセッティングに悩まされた面もあり、またクラッチにもやや問題が出ていた。つながりがちょっと急なクラッチは、晴れていれば問題も少ないが、雨が降ってはよけいにタイヤを滑らせる。
結果はファハルドと1点差の5位。よくこれだけの順位でおさまったという安堵がある一方、1点差の結果を見ると、ちょっとくやしいのも事実だった。
土曜日の試合後、藤波のマシンはクラッチの修復作業を受け、最後の試合に臨む。日曜日は朝から雨が降りそうな空だった。第1セクションで、まずラガがトライをせず時間待ちをしている。待ちきれずに、ブラウンが最初にトライをする。ラガが、なぜトライを遅らせたのかはわからない。ブラウン以後、ライダーは次々にトライ。藤波もトライに入った。しかし藤波のトライの時、突然激しい雨に見舞われた。それもセクションの中にいるときだ。これで5点だ。
その後の藤波は、しかしこの第1セクションを引きずることもなく、セクションをよく押さえて試合を進めていた。細かい減点はとっていたが、5点は第1以降ひとつもなく、イメージとしては悪くなかった。
1ラップ目は、終わってみれば3位だった。トップはボウでたったの1点。2位がラガで12点。藤波はラガに9点離されて21点で3位。4位にはカベスタニーが22点で藤波に1点差で迫っている。
2ラップ目、藤波の第1セクションは再び5点だった。その後、第2、第3と1点。そのあと、10セクションまでクリーンが続いた。これなら、悪くない。
11セクション。藤波は失敗をした。これは明らかな失敗だった。しかたない。次の12セクション。登りでアクセルをあけたら、いきなりクラッチがミートしてしまって、まくれかえって5点となった。クラッチは、全部交換すれば問題は解消するのだが、パーツを全交換するとライディングのフィーリングが変わってしまう。それで様子を見ながら修正していくことになる。痛い5点となった。
5点が二つ。これだけで10点だ。さらに14セクションで5点をとって、藤波の2011年は終わった。
最終戦は5位と4位。表彰台に乗れなかったのはなんともくやしいが、今年もまたランキング3位は確定した。もてぎでの負傷があってなおこのポジションだから、まずは悪くないシーズンだったのではないだろうか。
「ぜんぜん、いいところがなかったですね。ランキング3位にはなりましたが、締めが甘かったです。もてぎでの負傷は、まず順調に回復しています。ときどき痛みがあるのと、ひねった状態で力が入らないなどの問題はありますが、足の影響で5点になったものはなかったと思います。今年はもてぎの2日目に勝利のチャンスがあったので、あそこで勝てなかったのはくやしいところです。いろいろたいへんな1年間でしたが、応援、どうもありがとうございました」
土曜日 | |||
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1位 | アダム・ラガ | ガスガス | 11 |
2位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・Honda | 26 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 50 |
4位 | ジェロニ・ファハルド | オッサ | 58 |
5位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・Honda | 59 |
6位 | ジャック・チャロナー | ベータ | 87 |
7位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 87 |
8位 | ロリス・グビアン | ガスガス | 91 |
日曜日 | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・Honda | 8 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 14 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 34 |
4位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・Honda | 43 |
5位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 51 |
6位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 67 |
7位 | アルフレッド・ゴメス | モンテッサ | 74 |
8位 | ジャック・チャロナー | ベータ | 88 |
世界選手権ランキング | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・Honda | 204 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 191 |
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・Honda | 155 |
4位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 129 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | オッサ | 115 |
6位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 90 |
7位 | ロリス・グビアン | ガスガス | 88 |
8位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 86 |