2010年 SPEA FIM 世界選手権第9戦サンマリノ

2010年7月18日/バルダッセローナ

さっぱり乗れず、5位

photo足を負傷しながら、2番手スタートから2位となったフランス大会から1週間。この週、藤波家には、新しい仲間が加わった。瑠奈ちゃん。スペイン語で月という意味のルナちゃんは7月15日生まれ。日本からのうれしいニュースを受け取って、藤波はサンマリノに向かった。

足の負傷は、いまだ完治はしていない。1週間では完治するはずもなく、状況はよくはないのだが、しかし悪くもない。骨折はなかったので、とにかく安静にしてなおしていくしかない。どうやら筋などは切れたり痛めたりしているようだが、1週間マシンに乗らなかったおかげで、歩くには困らないまでに回復した。ただし1週間乗っていないことが、試合に向けて不安材料とはなっている。乗れば回復しないから、いたしかたない。

足の処置は、テーピングで固めて、患部を守ることにした。ただし、あまり圧迫しすぎても痛いし、動きも悪い。具体的には、アキレス腱を伸ばす方向に力が加わると、痛みがある。

会場について、乗ってみる。ヨーロッパの夏は暑い。気温40度ほどの気候に合わせてのサスペンションセッティングと共に、藤波がやらなければならなかったのは、足首のテーピングのセッティングだった。テープを巻いたりほどいたり、何度もセッティングをやりなおし、試合に向けての処置を探った。試合中に(なるべく)痛みがないよう、今後のために(なるべく)悪化しないよう、試合の結果に(なるべく)影響が出ないよう、要求が多方面に渡るから、ベストセッティングを出すのはむずかしかった。

結局、テーピングは最小限として、痛みは出るけれど動きが出るセッティングをとることになった。これで、ライディングに影響が出なければいいのだが、しかしやはりバランスを崩すと足が出るし、踏ん張れないからそのまま5点というようなシーンもあった。やはり、負傷の影響は無視できなかった。

もちろん試合中は、足のせいで調子が悪いなどと考えていてもしかたがない。その日のうちによくはならないのだから、走り始めてしまった以上は、いつものように、楽しく、自分のトライアルをしていくのが一番だ。

しかし、残念ながら乗れているとはいいがたかった。ラガやカベスタニーが2点をついた第2セクションを1点で抑えたあたりまではよかったが、ぽつぽつと1点2点の減点がかさみ、9セクションではボウに続いてトライして5点になってしまった。

ホンダのレース速報で紹介されたところでは、先に走ったボウのスタイルで走ったところ、藤波には合わなかったということになっている。ボウはアクセルを開けずに走っていくスタイルで、藤波はご存知、アクセルを開けて走るスタイルだ。ただしこれがすべてではなく、実はボウと藤波は、アクセルワークだけでなく、走り方のスタイルもちがった。藤波は後輪だけで前輪を飛ばしていく走り方を選んだのに対し、ボウはひとつひとつフロントを落として進んでいったのだという。

こういった、数段にわたって段差が続くセクションは、実は藤波はあんまり得意ではない。もてぎでも、こういうシチュエーションでは5点になることがあるから、日本の皆さんにも知られてしまっていることとは思うが、苦手なものは苦手。苦手パターンで、苦手意識を出さずに走れるかが鍵になるのだが、今回はほかにも不安要素があって、なかなか克服はむずかしかったようだ。

photoこのセクション、2ラップ目には行き方を変えて、きっちりクリーンを出した。結果的には、悔やまれる5点のひとつとはなったが、藤波は、今日の乗りっぷりからすると、この5点はまずしかたがないものと考えている。それほど、この日の藤波は、走っていて上位にいける自信を持てないでいた。

楽しく乗る。ところどころでは楽しく乗れたものの、しかし全体的には、苦しい戦いとなった。5位という成績にも、これでは納得するしかない。いや、5位になれてよかったな、という思いすらある。

乗れていない感じを引きずりながら、今週一度も練習をしていないという不安もあった。そんな中、自分の持てるポテンシャルを最大限に発揮して戦うのは、むずかしいものがあった。今回は、この成績を受け止めるしかない。

今回の5位、そしてランキング2位争いのライバルのラガが2位に入ったことで、ランキングテーブルで藤波はラガに同点で並ばれることになったが、もちろん藤波はそんな結果には動揺していない。ひとつひとつをきちんと戦えば、結果もきちんと現れる。藤波は、いつだって層信じている。

3連戦は、あと1戦。ともかく次のイタリア大会をうまく乗り切って、最終戦へ向けての夏休みにはいる。藤波の試練は、もう少し続く。

○藤波貴久のコメント

「今回は、やはり乗れていませんでした。足の具合もあるし、練習なしで臨むレースということもあり、どうなってしまうんだろうという思いがぬぐえないままの試合になりました。ランキングのことは考えていませんが、次の1戦を終えれば夏休みにはいりますから、いい気分で夏休みにはいりたいなと考えています。成績も大事ですが、まずは納得できる走りをしたいと思います」

2010 SPEA FIM Trial WorldChampionship
日曜日
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 4
2位 アダム・ラガ ガスガス 14
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 17
4位 ジェロニ・ファハルド ベータ 17
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 25
6位 ドギー・ランプキン ベータ 43
7位 ジェイムス・ダビル ガスガス 54
8位 ダニエレ・マウリノ ガスガス 60
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 165
2位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 135
3位 アダム・ラガ ガスガス 135
4位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 120
5位 ジェロニ・ファハルド ベータ 113
6位 ジェイムス・ダビル ガスガス 88
7位 ドギー・ランプキン ベータ 78
8位 マイケル・ブラウン シェルコ 54