2006年 インドア世界選手権第1戦イギリスGP
2006年1月7日/Hallam FM Sheffield Arena /観客数:8500人
惨敗? しかし惜敗……
今シーズン からノミネートライダーが5名と限定されたインドア世界選手権。ノミネート以外に、今回はスペインからトニー・ボウ、イギリスからシャウン・モリスとジェームス・ダビルのふたりのジュニアチャンピオンが登場した。
ノミネートライダーが6名から5名となったのは、6名ではスペインライダー4名に藤波とドギー・ランプキンとなり、あまりにもスペイン人ばかりで世界選手権のなにもとるという配慮だったという説がある。
さて、試合の流れは、昨年同様。定められた10分間のうちに、8つのオブザーブドセクションをすべて走り、その順位に準じてダブルレーンで勝敗を決する。今回のスタート順は、ノミネートライダーの中では藤波がもっとも早かった。モリス、ダビル、ボウに続いて、藤波の登場となる。
ボウは今シーズンの世界選手権にこそノミネートされていないが、インドアスペイン選手権ではラガとチャンピオンを争うほどのインドア実力者だ。2005年シーズンでも、2位に入ったりしている。藤波も、自分の前にボウが走ってくれるのは、ラインを読むのにも都合がよかった。
しかしボウが8セクションで喫した減点は、たったの5点だった。それも、規定時間を13秒オーバーして、タイムオーバーの1点減点を加算してこの結果だ。ダビルとモリスは30点台後半だったから、そのコントラストは激しい。藤波は、ボウの叩いた5点という点数が、この日の標準となるだろうと踏んで、セクションにでた。
この日の藤波は、調子は悪くなかった。思えば、2005年のインドアシーズンは、ニューマシンの開発ともろにスケジュールがバッティングして、きちんと勝負ができる状態ではなかった。同じ仕様のマシンで戦い続けることもなかったし、いい仕様のマシンができあがるかと思えば、次のレースにスタンダードマシンで参加することもあった。今シーズンのインドアは、それに比べればまったく別世界の体制で取り組めている。藤波もランプキンも、それぞれ自分の仕様のワークスマシンを持ち込んでいるし、今回はイギリスでランプキンの地元ということもあって、ランプキンはスペアマシンも自分のマシンを持ってきている。藤波のスペアはバルセロナの本拠地で作業中で、スペアにはランプキンと共用のワークスマシンが用意されていた(ハンドルはランプキン、フットレストは藤波というように、二人の仕様が合体したマシンだそうだ)。2005年のスペアはスタンダードだったから、この点でも1年戦って、体制は確実に強化されている。
第1セクショ ンはボウの2点に対し1点。第2セクションは両者ともにクリーン。上々の滑り出しだった。しかし第3セクション、藤波はミスをおかした。二段になった二段目の段差は、ローギヤを選択すれば、まちがいなく走破できるポイントだった。しかし藤波はひとつめを登った勢いを殺すことなく、2速を選んだまま、二段目にかかってしまった。
「結果的に、ギヤのチェンジを忘れたぼくのミス」
これで、このセクションは5点になった。藤波の減点は、ボウより1点多い6点となった。この時点で、ラガやカベスタニー、ファハルドにランプキンは、まだ誰も走っていない。ボウのインドアの強さは認めつつ、まさかボウがこの試合で勝利するとは思っていない藤波にとって、ボウに遅れをとるということは、2位をキープするというより6位になってしまうおそれのほうが大きかった。
もちろん、試合中にはそんな計算をしているひまはないのだが、そういった戦況が、藤波のコンセントレーションをわずかに乱しはじめたのは否めない。そして、続く第4セクション、藤波は連続5点をとってしまった。すでに減点11となり、ボウに遅れること6点。ラガが7点、ファハルドが11点、カベスタニーが12点で8セクションを走り終えるのは、あくまでも結果であって、ボウが5点なら、ラガは3点、カベスタニーが4点でもおかしくなかった。11点となった藤波は、低迷を予感しながら走ることになってしまった。
さらに。第6セクションではパンクもあった。パンクしたまま走ったので、ビートが落ちてしまうと前進すら不可能になる。インドアでは、足付きも5回で5点となるから、ビートが落ちかけたタイヤで3点にこられたのは、藤波の執念の賜だった。事実、あとで走ったランプキンは、同じ第6セクションでパンクして、5点になっている。
しかしこれで、藤波の減点は14点。メインマシンがパンクしたのでスペアに乗り換え、第7はクリーンし、最終8セクションで1点、15点で8セクションを終えた。
手応えはけ っして悪くない。しかし今回は、直前に走ったボウの5点という減点をボーダーラインに設定してしまったのが不運だった。結果を見れば、ボウを上回るライダーはだれも現れず、藤波も、あといくつかのミスがなければ決勝には残っていておかしくない戦いぶりだった。
レースにたらればはない。だから第3セクションのミスも、第6セクションのパンクも、そのまま受け止めなければいけない。しかしライダーには自分がいるべき位置が、なんとなくわかるものなのだろう。不本意ながら、藤波は今回の戦いにきちんと手応えを感じている。しかしトータル1点差で藤波に敗れたランプキンは、地元の大会で惨敗して、いつになく落ち込んでいるように見えた。さて、この差は次回にどうつながっていくだろうか。
○藤波貴久のコメント

Indoor Trial WorldChampionship 2006
Sheffield |
Final Lap(決勝) |
1位 |
トニー・ボウ |
ベータ |
10 |
2位 |
アダム・ラガ |
ガスガス |
11 |
3位 |
ジェロニ・ファハルド |
ガスガス |
16 |
Qualificarion Lap(予選) |
1位 |
トニー・ボウ |
ベータ |
6 |
2位 |
アダム・ラガ |
ガスガス |
7 |
3位 |
ジェロニ・ファハルド |
ガスガス |
12 |
4位 |
アルベルト・カベスタニー |
シェルコ |
12 |
5位 |
藤波貴久 |
レプソル・モンテッサ・HRC |
16 |
6位 |
ドギー・ランプキン |
レプソル・モンテッサ・HRC |
17 |
7位 |
ジェームス・ダビル |
ベータ |
36 |
8位 |
シャウン・モリス |
ガスガス |
40 |
PointStandings(ランキング) |
1位 |
トニー・ボウ |
10 |
2位 |
アダム・ラガ |
8 |
3位 |
ジェロニ・ファハルド |
6 |
4位 |
アルベルト・カベスタニー |
5 |
5位 |
藤波貴久 |
4 |
6位 |
ドギー・ランプキン |
3 |
7位 |
ジェームス・ダビル |
2 |
8位 |
シャウン・モリス |
1 |
|