2005年 世界選手権第10戦ベルギー
2005年年9月18日/Spa-Francorchamps
ランキング2位でシーズン終了
【日曜日】
最終戦。 すでにチャンピオンは決まってしまったが、藤波にはランキング2位獲得の仕事が残っている。ランキング3位のランプキンとは4ポイント差、4位のカベスタニーとは5点差で最終戦を迎えた藤波だった。しかし藤波は今回、勝利を目指した。勝利をおさめて、世界チャンピオンとしての戦いを締めくくりたかった。
スタート順は、ラガ、ボウ、藤波、ランプキン、カベスタニーの順。ランキング2位争いの中では、藤波はもっとも早いスタートとなった。そして第1セクション。ここはトップライダーのほとんどがクリーンしたセクションだが、藤波はちょんと1回の足付をしてしまった。マインダーと「これは愛嬌だね」とことばを交わして先へ進む藤波。細かい失敗はすっきり忘れたほうが、その後の展開に良い結果を残すという、これまでの戦い方からの教訓だ。
セクションは、ベルギーの伝統的サーキット、スパ・フランコルシャンの外周、インフィールドに設けられていた。ほとんどが人工的に岩を配したもので、今年藤波とモンテッサ陣営を苦しめた“インドア”セクションだが、水が流れていて、やや滑りやすいところが、ここまでの“インドア風”セクション群とは少しちがうところ。それでも、自然のままの地形でない点では、大きな差異はない。
サーキットの駐車場際の斜面に設けられた第1,第2セクション、コース際の土手に配した第3〜第6セクション、7〜9はサーキットインフィールドを流れる小川の両側に配置されたもので、このあたりから難易度は高くなってくる。第9セクションは、トップライダーを含めてほぼ全員が5点。藤波が、初めてセクション中盤の難所をクリアしたが、最後の最後で失敗した。中盤の難所をクリアしたのは、藤波以外ではカベスタニーとランプキンだけ。カベスタニーもまた、藤波と同様にセクション最後で5点となった。結局ここを走り抜けたのはランプキンだけだった。それでも3点だ。
10〜12は、ここもまた難易度が高かった。特に11は、前日からむずかしいと選手側からアピールがあったところだ。前日、下見の際に選手はせっせと置き石をしておいたのだが、当日、この置き石がきれいさっぱりなくなっていた。 主催者は正義感から置き石を排除したのかもしれないが、これでは走破は不可能とみたライダーは、1ラップも2ラップも全員がエスケープ(唯一ランプキンはトライしたが、5点だった)。セクションを作った主催者の努力はむだになったし、トライを待っていた観客もがっかりさせることになった。オブザーバーも、日向ぼっこをしにきただけとなった。
13〜14セクションは、本部裏の川に設けられていて、これも人工的に配された岩を越えていくもの。設定がタイトなので難易度は高いが、自然の小川の中にインドアセクションがあるという不思議な感覚だ。ここと、最終15セクション(これは正真正銘のインドアセクションだった)は、比較的難易度が低かった。
1ラップ目、藤波はラガと同点、1点がひとつ少なく2位につけた。3位ランプキンは34点と、やや離れている。4位はカベスタニーで36点。ランキング2位争いは、順位に変動がないまま結末を迎えるかに思えたのだが、試合は、まだまだ終わっていなかった。
2ラップ目、猛チャージをかけたのがランプキンだった。岩の表面が乾いて、コンディションがよくなったからというのがランプキンのコメントだが、ランプキンしか抜けられなかった第9セクションを減点1で通過するなど、特に後半に著しい追い上げを見せた。しかし実は、ランプキンのスコアには不思議なクリーンがあった。唯一1ラップめに藤波が3点で抜けた第10セクションで、2ラップ目のランプキンはクリーンを叩き出している。ここは、藤波の3点以外は全員が5点である。おそらくパンチの打ちまちがいがあったのではと思われるが、試合はこのスコアのまま、続けられることになった。
この試合中、藤波は試合経過をいっさい聞くことなく、競技を進めている。スタート順の早いラガは藤波の前を走っていたから、ラガの動向はなんとなくつかめるが、ランプキンとカベスタニーの様子はわからない。2ラップ目、藤波にはいくつかミスがあった。たとえば第7セクションでは、クリーンを狙いすぎて時間が残り少なくなってしまった。マインダーから残り時間のコールがあったときにはすでに残り10秒。どたばたと足をついてセクションを抜け出るのが精いっぱいだった。今回のようにセクションが長いと、サポートとのコミュニケーションのちょっとしたミスも、結果に大きく跳ね返る減点となる。このほか、1ラップめに藤波が初踏破した岩のある第9セクション、1ラップ目はランプキン以外は全員5点だったが、1ラップ目の感触で、2ラップには藤波はいけると思っていた。ところが2ラップ目は、 藤波が初踏破したその岩で失敗して5点となった。ラガとランプキンはこのセクションを1点で通過したから、これが結果に影響することとなる。
最終セクションが終わって、藤波は初めてこの日の動向を聞いた。そこでは藤波はランプキンに対して5点ほど勝っているのではないかということだった。しかし結果は、例のなぞのクリーンがあって、藤波は3位に甘んじてしまったのだった。結果的には、これでランキングの2位3位がひっくり返ることもなく、藤波は2点差でランプキンを下してランキング2位を得た。しかし今回の藤波に、納得した表情はない。藤波の2006年は、もう始まっている。
○藤波貴久のコメント
World Championship 2005
Spa Francorchamps |
日曜日/Sunday |
順位 |
ライダー |
|
L1 |
L2 |
TO |
Pts |
CL |
1位 |
アダム・ラガ |
ガスガス |
27 |
20 |
0 |
47 |
13 |
2位 |
ドギー・ランプキン |
モンテッサ |
34 |
14 |
0 |
48 |
11 |
3位 |
藤波貴久 |
ホンダ |
27 |
23 |
0 |
50 |
13 |
4位 |
トニー・ボウ |
ベータ |
37 |
22 |
0 |
59 |
15 |
5位 |
アルベルト・カベスタニー |
シェルコ |
36 |
28 |
0 |
64 |
11 |
6位 |
ジェロニ・ファハルド |
ガスガス |
46 |
32 |
0 |
78 |
9 |
7位 |
グラハム・ジャービス |
シェルコ |
49 |
33 |
0 |
82 |
8 |
8位 |
黒山健一 |
ベータ |
44 |
40 |
0 |
84 |
6 |
9位 |
マルク・フレイシャ |
モンテッサ |
47 |
44 |
0 |
91 |
5 |
10位 |
ジェームス・ダビル |
ベータ |
54 |
54 |
0 |
108 |
3 |
11位 |
野崎史高 |
スコルパ |
57 |
54 |
0 |
111 |
1 |
12位 |
サム・コナー |
シェルコ |
60 |
55 |
0 |
115 |
1 |
13位 |
シャウン・モリス |
ガスガス |
63 |
56 |
0 |
119 |
3 |
14位 |
クリストフ・ブルオン |
ガスガス |
58 |
61 |
0 |
119 |
3 |
15位 |
ミケーレ・オリツィオ |
スコルパ |
75 |
55 |
0 |
130 |
2 |
L1=1ラップ、 L2=2ラップ、 TO=タイムオーバー、Pts=減点、CL=クリーン |
ランキング |
1位 |
アダム・ラガ |
ガスガス |
255 |
2位 |
藤波 貴久 |
ホンダ |
220 |
3位 |
ドギー・ランプキン |
モンテッサ |
218 |
4位 |
アルベルト・カベスタニー |
シェルコ |
210 |
5位 |
トニー・ボウ |
ベータ |
175 |
6位 |
マルク・フレイシャ |
モンテッサ |
164 |
Pix:Hiroshi Nishimaki |
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