アンドラの4位で、ランキングが6位まで上がった。5位のマルセリまで2点差。アンドラ以降、調子が上向いてきたから、期待はあった。
イタリアはトライアルパークのような会場で、人工的なセクションが多かった。斜面などに、大きな岩を運び込んでセクションを作っている。どちらかというと苦手意識のあるパターンだ。
ただし考えてみれば、同じような設営方法のもてぎでは成績がいいことが多い。もてぎには応援団がいて力をもらっているが、トニー・ボウにいわれると、応援団がいなくてプレッシャーがないから気楽に走れてもっといいんじゃないかということになる。ただしもてぎには苦手な意識はないから、実際どうなるかはわからない。いずれにしても、これがシーズン最後の戦いだ。
スタートすると、霜が降りたりもして、1ラップ目はすごく滑るコンディションだった。前日の下見時点より、格段に難度は増している。いけるのは第1と第5くらいじゃないかということになり、半分くらい手直しがされた。それでもむずかしいところはやっぱりむずかしい。
1ラップ目の藤波は、思っているよりも走れなかったという。点数的にもやっぱりけっこうな減点数となった。ただ、上位のライダーとはそんなに離れてなかったので、2ラップ目に挽回できるかもしれない。
2ラップ目が終わった時点では3位につけていた。油断はまったくできない。いけるかいけないかのポイントで一気に5点になるセクションが多かったからだ。そして3ラップ目、2ラップ目にいけていたのに3ラップ目にいけないところがけっこうあって、4点差で3位を逃すことになった。あといくつか、5点がクリーンだったら、という反省材料はなくはないが、アンドラの後半と同じように走れてはいたから、好調とは言わないが、悪くないふつうの藤波貴久の実力は発揮できたのだと思っている。
この1日目、藤波が4位、マルセリが6位となったから、藤波はランキング5位に浮上して、日曜日の最終戦を迎えることになった。
たった1ヶ月間の世界選手権も、最後の戦いとなった。調子は上向いているから、表彰台は狙いたい。ところが始まってみると、アンドラ以前の感じに戻ってしまっていた。前の日に比べて、雨がちょっと降ってむずかしくなっているものの、それだけが理由というわけではない気がする。
3ラップの間に、いいところもあれば悪いところもありだったが、追い上げはなかなか厳しかった。最終セクションについた時点では、これ以上順位が落ちることもなく、上がることもないポジションに落ち着いてしまった。最後は8位。ランキングも7位まで後退して、シーズンが終わった。
2020年シーズンはちょっとしたケガもあったし、結果的にニューマシンの乗り換えにてこずったのもあった。思ったような成績を残せなかったのは、ほかにも、10セクション3ラップの2日間制という、今年の大会システムに影響を受けた可能性もある。セクションが10しかないから変化も少ない。つまずき始めると、リカバリーがしにくい。苦手意識が出てしまったセクションは、1日3回、2日間で6回も苦手意識のまま走らなければいけない。うまくいく場合といかない場合のギャップは、藤波だけでなくいろんなライダーに出ている。それは、こんなところにも理由があったのではないだろうか。
今年は、いろんなライダーがいろんなところで失敗を繰り返した。そういうシーズンだったのだ。逆説的には、だからチャンスもあったはずなのだが、それを活かし切れなかった藤波の悔しさも倍増だ。
藤波にとって25周年の世界選手権がこんな特殊なシーズンとなり、こんな結果に終わってしまった。来シーズンのことはまだ決まっていない。パドックのウワサでは、2021年はボウとマルセリの二人体制となり、藤波は監督でもやるのではないかとのウワサが流れている。さて2021年はどうなるのか。年齢は重ねたが、藤波の負けず嫌いは、まだまだ変わっていない。
「25周年の記念すべきシーズンだったのですが、最後がなさけなくて、ランキングも7位になってしまいました。いろいろくやしいことはありますけど、とにかく今年は、開催できただけでよかったなと思います。プロモーターのいない、トライアルだからできたことかもしれません。2020年シーズンといっても、3週間連続で全部標高の高いところの大会で、全部合わせても4週間しかないシーズンで、特殊なシーズンでしたけど、それでもぎりぎりの開催だったのだと思います。ランキングは7位となりましたが、たぶん引退はしないことになると思います。パドックでは、引退するってもっぱらのうわさですけど(笑)」
土曜日 | ||||
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1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 39 | 18 |
2位 | ホルヘ・カサレス | スペイン・ガスガス | 61 | 13 |
3位 | ハイメ・ブスト | スペイン・ヴェルティゴ | 64 | 10 |
4位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 70 | 11 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・シェルコ | 73 | 11 |
6位 | ガブリエル・マルセリ | スペイン・モンテッサ | 71 | 9 |
7位 | アダム・ラガ | スペイン・TRRS | 73 | 9 |
8位 | ミケル・ジェラベルト | スペイン・ガスガス | 76 | 11 |
9位 | ジェイムス・ダビル | イギリス・ベータ | 80 | 8 |
10位 | ダン・ピース | イギリス・シェルコ | 125 | 4 |
日曜日 | ||||
1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 20 | 22 |
2位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・シェルコ | 55 | 10 |
3位 | ホルヘ・カサレス | スペイン・ガスガス | 61 | 13 |
4位 | ガブリエル・マルセリ | スペイン・モンテッサ | 61 | 12 |
5位 | ミケル・ジェラベルト | スペイン・ガスガス | 61 | 11 |
6位 | アダム・ラガ | スペイン・TRRS | 63 | 14 |
7位 | ハイメ・ブスト | スペイン・ヴェルティゴ | 63 | 13 |
8位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 78 | 6 |
9位 | ジェイムス・ダビル | イギリス・ベータ | 88 | 8 |
10位 | ダン・ピース | イギリス・シェルコ | 136 | 1 |
世界選手権ランキング | ||||
1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 152 | |
2位 | アダム・ラガ | スペイン・TRRS | 121 | |
3位 | ハイメ・ブスト | スペイン・ヴェルティゴ | 105 | |
4位 | ホルヘ・カサレス | スペイン・ガスガス | 98 | |
5位 | ガブリエル・マルセリ | スペイン・モンテッサ | 82 | |
6位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・シェルコ | 82 | |
7位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 78 | |
8位 | ミケル・ジェラベルト | スペイン・ガスガス | 75 | |
9位 | ジェイムス・ダビル | イギリス・ベータ | 62 | |
10位 | ダン・ピース | イギリス・シェルコ | 45 |