2020年 世界選手権第3戦〜第4戦スペイン

2020年9月12〜13日/Pobladura de las Regueras(スペイン)

8位と9位。本領発揮にはほど遠い

photo開幕第2戦スペイン大会。スペインはモンテッサの母国GPとなるが、会場はポルトガルに近いので、ちょっとした遠征気分でもある。

この大会、藤波は8位と9位、残念な結果となった。藤波本人に言わせると、残念を通り越している。

今シーズンは、スペイン全土、ヨーロッパ全体として感染症対策が徹底していたので、練習やテストもままならなかった。しかし自宅監禁が解けてからは、藤波はできることを徹底的にこなしていた。自転車トレーニングにも重きを置いて、特に持久力はずいぶんと向上したという実感があった。

去年からテストを始めたエンジンの新しい仕様も、藤波のお気に入りだ。今まで行けないところも行けるようになった。乗り方も、新しい仕様に合わせてきた。フィジカルもマシンもライディングも、今シーズンの藤波は期待できる。なにより本人が、そう考えていた。

photo今回は、セクションの設定が5点かクリーンかという設定のものが多かったようだ。ほぼほぼ全員が5点だったセクションもあった。成績が悪いとなると、挽回するのは5点かクリーンかのセクションをクリーンするしかない。そういういくつかのセクションで、5点を連発してしまった。敗因は、こんなところにあった。

たとえば1日目は、第2セクションが難関だった。ボウが5点、1点、クリーンのほかは、ガブリエル・マルセリが3ラップ目に3点を取っているだけで、あとはみんな5点だった。

第3セクションは1ラップ目には1点で抜けた。抜ける自信はあったのだが、2ラップ目は5点、3ラップ目は2点となった。うまくいったとは言いがたかった。第4セクションは、1ラップ目に1点で抜けたのだが、ストップの判定で5点になっている。こういった事例が、藤波の好結果を阻んだ。

今回、セクションには3つの人工セクションがあった。第1、第6、そして第10だ。どれもパドックに近くにある。藤波は、第1こそクリーンしているものの、第6では2回、第10でも1回5点になっている。この人工セクション群が、藤波の鬼門になった。この3セクションで、藤波の5点は3つ、ダビルが1、ファハルドが2、ジェラベルトが1、ラガ、ブスト、ボウが0と、ここでの5点の点差が順位に直結している。

photoそれにしても、今回は藤波自身もそうだが、ライバルも失敗が多かった。こんなところで失敗するかというところでミスが出て、5点になっているケースを、藤波自身多く目撃している。今回のセクションは、たとえば大きなステップがあって登れない=5点、というようなものではなかったのだが、発進をまちがえると途中で修正ができずに登れ切れずに5点になるというパターンが多かった。そこにひっかかったライダーが多いのかもしれないが、ともあれ、藤波自身がぜんぜんだめ、と思っているにもかかわらず、意外にライバルと接戦だったりもする。今回は、そういう戦いなのだった。

●2日目・日曜日

2日目の日曜日も、土曜日に苦戦した人工セクションがよくなかった。第1は3回ともクリーンしたものの、第6と最終セクションで、4個の5点があった。上位陣は確実にこの人工セクションをクリーンしていく印象で、2日目もここでさをつけられてしまった。

藤波は、人工セクションが苦手と、自他共に認めているところがある。今回の人工セクション群での減点も、それが要因となっている点が、半分くらいあると言う。もうひとつ、藤波が敗因となっていたのではないかと考えているのが、新しいエンジン仕様への慣れが、いまひとつだったのではないかということだ。

photo新しい仕様は、とてもいいパワーを持っている。これまでいけなかったところがぐんぐんいける。シーズンオフの乗り込みでは、ネガティブ要素はいっさいなく、この仕様で新しいシーズンを迎えるのを、藤波自身とても楽しみにしていたものだった。ところが始まってみると、思ったような結果が出ない。

よいパワーが出ているから、これまでよりもアクセルを開けなくても走る。実際、乗り込みの段階ではそれができていて、走破力も格段に上がっていた。ところがいざ試合になると、考えている以上にアクセルを開けてしまったり行き過ぎてしまったりと、考えてみるとエンジン仕様に慣れていないがゆえの失敗なのかもしれなかった。ポテンシャルの高さは実感済みだから、あとはこの仕様に早く慣れるしかないのだが、充分慣れていると思っての開幕連戦でこの結果なので、正直なところ、藤波自身、落ち込んでいるところだ。

さていっぽう、ランキング争いを見ると、こんなに成績がぱっとしないというのに、4位までたったの4ポイント差だ。このあと、アンドラ2戦と最終戦イタリアで2戦。まだ4戦もある。出だしの4戦はお世辞にも好調とは言いがたいが、まだ勝負はこれからだ。

○藤波貴久のコメント

「新しい仕様のエンジンは、これならすぐに結果が出ると思っていたのにこの結果で、ちょっとくそっという感じです。練習ではこういう失敗は想定できずだったのですが、これが試合と練習とのちがいかもしれません。25年もやっているのに、いまさらなんだという感じですが。でも可能性は感じているし、まだ4戦あります。なんとかなるでしょう。ここはもう、ポジティブに考えるしかありません」

World Championship 2020
土曜日
1位 トニー・ボウ (スペイン・モンテッサ) 28 18
2位 ハイメ・ブスト (スペイン・ヴェルティゴ) 49 19
3位 アダム・ラガ (スペイン・TRRS) 57 15
4位 ガブリエル・マルセリ (スペイン・モンテッサ) 68 9
5位 ミケル・ジェラベルト (スペイン・ガスガス) 69 12
6位 ジェロニ・ファハルド (スペイン・シェルコ) 69 11
7位 ジェイムス・ダビル (イギリス・ベータ) 70 10
8位 藤波貴久 (日本・モンテッサ) 86 8
9位 ダン・ピース (イギリス・シェルコ) 93 6
10位 ホルヘ・カサレス (スペイン・ガスガス) 115 4
日曜日
1位 トニー・ボウ (スペイン・モンテッサ) 48 16
2位 アダム・ラガ (スペイン・TRRS) 56 12
3位 ガブリエル・マルセリ (スペイン・モンテッサ) 62 12
4位 ブノア・ビンカス (フランス・ベータ) 66 8
5位 ミケル・ジェラベルト (スペイン・ガスガス) 68 14
6位 ハイメ・ブスト (スペイン・ヴェルティゴ) 69 13
7位 ジェイムス・ダビル (イギリス・ベータ) 69 12
8位 ホルヘ・カサレス (スペイン・ガスガス) 75 10
9位 藤波貴久 (日本・モンテッサ) 77 10
10位 ダン・ピース (イギリス・シェルコ) 78 8
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ (スペイン・モンテッサ)  75
2位 アダム・ラガ (スペイン・TRRS)  65
3位 ハイメ・ブスト (スペイン・ヴェルティゴ)  61
4位 ミケル・ジェラベルト (スペイン・ガスガス)  39
5位 ガブリエル・マルセリ (スペイン・モンテッサ)  38
6位 ジェロニ・ファハルド (スペイン・シェルコ)  28
7位 ホルヘ・カサレス (スペイン・ガスガス)  36
8位 藤波貴久 (日本・モンテッサ)  35
9位 ブノア・ビンカス (フランス・ベータ)  34
10位 ジェイムス・ダビル (イギリス・ベータ)  30