2004年11月6日
2004インドア・トライアル・ナシオン(スペイン・カナリア諸島)

 2004年の公式行事もいよいよこれで最後。国別対抗トライアル・デ・ナシオンのインドア版は、11月6日の土曜日、大西洋に浮かぶ観光の島、カナリア諸島のテネリフェで開催された。

 インドアは、アウトドアとちがい、全世界の国が集まるわけではない。インドアのセクションが走れるライダーは世界でも限られているからだ。その顔ぶれは、スペイン、イギリス、そして日本に限定されている。

 日本からは、世界選手権を戦い、ヨーロッパに拠点を持つ3人がこの大会に参加した。藤波貴久、黒山健一、野崎史高の3人だ。ヨーロッパを活動のベースとしていれば、インドア大会に招待されるケースも多い。日頃からインドア慣れしていないと、勝負以前の問題になってしまう。

 この大会、藤波以下、ランプキン、フレイシャの3人のレプソル・モンテッサHRCのメンバーには、ひとつの歴史の区切りでもあった。長く苦楽をともにした2ストロークマシン、ホンダRTL250R(モンテッサCOTA315R)に乗るのは、これが最後になる。2005年シーズンからは4ストロークマシンRTL250F(COTA4RT)での参戦が決まっている。すでにチームではこのマシンのテストが始まっている。そんな渦中での大会となった。

 藤波には、さらに過酷なスケジュールの追い打ちもあった。11月3日、日本では、大きな熱気球の大会が開催されていた。ここに集まる10万人とも20万人ともいわれる大観衆の前でのデモンストレーションを自ら希望した藤波は、会場から直接スペインに飛び、時差ぼけのままカナリア諸島の会場に到着するという強行スケジュール。これも世界チャンピオンの試練、かもしれない。

 試合は、いくつかの採点セクションとダブルレーン、ハイジャンプがあるという点ではいつものインドア大会と同じだが、大きくちがうのは、一人のライダーがすべてのセクションを走らないという点だ。ほとんどのセクションで(ハイジャンプのみ全員で飛ぶ)ひとつのセクションを走るのはひとりだけ。どのライダーをどこで走らせるかは、チームの采配ということになる。そして成績は、ひとつひとつのセクションで順位を出し、1位から3、2、1点と加算していく。この点数が多いチームが優勝だ。

 この日、藤波は調子がよいとはいえない状態だった。むしろ、すごく調子が悪い。本人のコンディションの問題よりも、愛車に乗る機会がまったくなかったことがある。コルドバでのデ・ナシオン以来、藤波が自分のマシンに乗ったことはない。2ストロークマシンに乗ったのも、2度ばかりデモンストレーションをしただけだ。そもそも、デ・ナシオン以来、愛娘の誕生やチャンピオン獲得にまつわる取材対応で、トライアルの練習をする時間もなかった。この1ヶ月間、藤波がマシンに乗ったのは、2度のデモと2度の(4ストロークマシンでの)テストのみだった。

 このハンディが、試合にそのまま現れた。藤波の調子は明らかだったので、難セクションは黒山が担当し、藤波は確実にとれるところをとっていくという作戦をとったのだが、それでもなかなか会心の走りができない。

 そんな中、スペインは第6セクションでラガが1回の足付きにタイムオーバー(セクションの持ち時間は1分)を加えて2点を取った以外、2ラップを通じてその他のセクションはすべてクリーン。こういう走りをされては、ライバルは指をくわえて見ているしかない。カナリア諸島は地理的にはアフリカ大陸に近いが、お国はスペインである。観客席のすべてのお客さんがスペインの旗を振って大喜び。イギリスと日本は、スペインのための引き立て役を担当させられてしまったのだ。

 イギリスに対しては、けっして勝利が無理な戦いではなかった。試合前には、選手3人のあいだで、2位になるための算段が相談された。1ラップが終わったところでイギリスとの点差が5点。この差は届きそうな点差でもあり、また挽回がむずかしい点差でもあった。2ラップめ、日本は1ラップめよりは調子を上げたが、点差は7点に広がって、表彰台の最後の席を得た。

 さて、これで藤波にとっての2ストロークの日程がすべて終わった。これからのシーズンオフとインドア世界選手権を通じて、新しい4ストロークマシンの完成と熟成に全力を尽くすことになる。

○藤波貴久のコメント
セクション自体は、インドア世界選手権より簡単で短めでしたが、今回は、どう転んでもスペインには勝ち目はない感じでした。イギリスも、コリーの調子がよかったのは計算外でした。ぼく個人の調子については、とにかく2ストロークマシンに慣れてないな、という感じです。途中からは、イギリスへの挽回もむずかしい感じになったので、ショーに徹して走ってしまいました。これが終わったら、来シーズンに向けてテストテストの連続です。

Indoor Trial of the Nations 2004
1位 スペイン 66(33+33)
2位 イギリス 46(22+24)
3位 日本 39(17+22)

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