2004年6月27日
世界選手権第6戦 アンドラ(Sant Julia de Loria)

 フランス大会から1週間後、世界選手権はピレネー山脈の真っ只中にある小国アンドラへやってきた。

 今回世界選手権は、試みとして日曜日1日制となって開催された。しかし土曜日にはスペイン選手権が開催され、セクションも同じとあって、ほとんど全員がスペイン選手権に参加することになった。参加する側からすれば、いつもの世界選手権となんら変わりない。ただ、土曜日の結果が世界選手権の記録に残らないだけだ。

 スペイン選手権での藤波は8位に終わった。しかしこの結果は、減点25点に対して、タイムオーバー減点が37点、合わせて62点の総減点によるもの。スペイン選手権を1戦休んだ藤波のスタート時間はスペインのトップライダーより20分ほど早い。タイムオーバーにならないように走って成績を残す必要はないので、タイムオーバー覚悟で、翌日のシミュレーションをした結果だった。8位、実質優勝のこの結果に、藤波の表情は明るい。

【日曜日】

 しかし藤波は、第1セクションでいきなり5点をとってしまった。前日には、2回ともクリーンしていたセクションだ。このセクション、実は前日のクリーンもぎりぎりで、この日はさらに余裕をもって走ろうと、少しペースを早くした。それが裏目に出ての5点だった。

 もちろん、試合は始まったばかりだし、これで落ち込んで試合を失ってしまうような藤波ではない。気持ちを入れ換えて自分のトライに励もうとするが、しかし第3セクションでは岩に肩がふれたのを減点ととられ、どうにもペースがつかめない。

 アンドラのセクションは、激しい地形が特徴だが、しかしグリップはよいので、見た目の派手さほど実際にはむずかしくない。それでも、ワンミスで5点になる可能性はあるから、トップライダーには神経戦とはいっていい戦いになった。

 藤波が、本来のコンセントレーションを見せて試合の流れに乗ってきたのは、1ラップ目の後半だった。第6セクションまでの藤波は暫定6位といったところだったが、それ以降を減点2点で押さえた。

 1ラップ目後半、藤波はチームの監督であるシレラさんに「混戦だから気を抜かずに走れ」とアドバイスを受けている。どういう混戦なのか、誰と混戦なのか、そのアドバイスからはなにも読み取ることができなかったが、これで藤波は2ラップ目に向けて再びコンセントレーションを高めている。

 2ラップ目、難関セクションの一つだった第5で1点。しかしこの1点は、失敗が続出した後半の登りではなく、前半でのことだったから、惜しい1点となった。クリーンの可能性は高かったわけだ。

 そして第6。きのうは5点とクリーン。しかし日曜日に向けてセクションに手直しがされ、藤波がクリーンしたラインは通れなくなっていた。ここで藤波は5点。ラガとランプキンは、ここを2ラップともにクリーンしている。このセクションをクリーンしたのはラガとランプキンとパスケットしかいない。

 しかしその後の藤波は見事だった。このセクションを最後に、藤波には減点がない。そして13セクションで、シレラさんが再び藤波に駆け寄った。「2位は確実だ。ラガがものすごくいいから、1位になるのは不可能だが、3位とも離れているので、2位はまちがいない」。

 そして藤波はクリーンを続けるのだが、この時点で藤波は、3位にはランプキンがつけていると信じていた。しかし事実はちがった。ランプキンは藤波より5点を5つも多くとり、なんと7位まで転落していたのだ。

 これで、ランキング2位にはラガが浮上。藤波とは14点差となった。ライバルは、ラガでもランプキンでも変わらない。残り5戦。しかし藤波はこれまで通り、優勝をめざし、たとえ勝てないとしても表彰台を逃さず、1戦1戦を戦っていくという作戦の王道を変えるつもりはない。

○藤波貴久のコメント
今回の2位は、チャンピオンシップの上では優勝に匹敵するような価値があったと思います。しかも、ドギーが7位にまで落ちてくれたのがぼくにとってはラッキー。まだまだあなどれない相手ですが、残り5戦になって19点差というのは、去年のぼくの経験からすると「きついなぁ」という点差です。でも、今はへんな計算はしません。ひとつひとつ今まで通りにきちんと戦っていれば、チャンピオンにはなれると信じています。

World Championship 2004
日曜日/Sunday
1位 アダム・ラガ 10(3+7) 21
2位 藤波貴久 17(11+6) 22
3位 アルベルト・カベスタニー 31(17+14) 21
4位 黒山健一 34(14+20) 15
5位 マルク・フレイシャ 35(19+16) 15
6位 ジェロニ・ファハルド 39(22+17) 14
7位 ドギー・ランプキン 44(22+22) 16
Ranking
1位 藤波貴久 193
2位 アダム・ラガ 179
3位 ドギー・ランプキン 174
4位 アルベルト・カベスタニー 141
5位 マルク・フレイシャ 123
6位 ジェロニ・ファハルド 111

Pix:Hiroshi Nishimaki 公式リザルト(日曜日)(PDF)はこちら
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