2004年6月19〜20日
世界選手権第5戦 フランス(バルデブローレ)

 日本、アメリカと、しばしヨーロッパを離れていた世界選手権は、アメリカ大会から2週間を経て、再びヨーロッパに帰ってきた。ライバルのドギー・ランプキンもアダム・ラガも、ヨーロッパに帰ればより本調子を発揮するにちがいない。4連勝をなしとげた藤波貴久だが、ここからはじまるヨーロッパラウンドが、チャンピオンシップ争いの正念場だ。

【土曜日】

 5連勝を達成できるかどうか、ランプキンとの点差をさらに大きく開けるかどうかの1戦となったが、しかし藤波の調子は芳しくない。2ラップを通じて5つの5点をとり、細かい減点も多い。とても、5連勝がのぞめる走りではない。

 しかし終わってみれば、好調のラガにはともかく、2位のランプキンには追いつける位置にいながらの表彰台。結果的には「惜しかった」試合となった。それでも藤波本人は、この走りで3位になれたのはラッキーだった、との印象を持っている。もちろん、そこにはただの運不運ではなく、やるべきことをしっかり積み上げた結果なのだけれど……。

 今回は、参加台数が珍しく多い大会だった。今年から新たに設けられたユース125クラスに、多くのフランス人ライダーが参加してきたのだ。彼らの2ラップめが、藤波らトップグループの1ラップめにぶつかった。125のライダーは、持ち時間をたっぷり持ってのトライだったから、藤波らは彼らにお願いして、先にトライさせてもらったりしていたが、しかしそれでも時間はぎりぎり。しかも藤波は、終盤にフロントタイヤをパンクさせてしまい、その交換に数分間のロスを作っている。この結果、藤波は1ラップめに3分間のタイムオーバー減点を献上した。

 渋滞がなければ、せめてパンクがなければこのタイムオーバーは、あるいはなくてすんだかもしれないのだが、もちろん結果は結果。「たら・れば」を言い出せばきりがない。藤波は意外にも3位表彰台を獲得したが、しかしライバルのランプキンは2位表彰台。10点まで離したランキングポイントは、2点つめられて8点になってしまった。しかしこの結果に奮起して、日曜日により集中を果たすことができたと考えれば、土曜日は、なかなか上出来の結果ではあった。

【日曜日】

 この日、2ラップめの藤波は、よい集中力が保たれていた。結果的にはほんとうにぎりぎりの勝利だったが、前日同様、結果がすべてである。日曜日は、再び藤波の日となった。

 調子は、けっして絶好調というわけではなかった。しかし1ラップが終わったあたりで、すでに今日の敵はランプキンひとりと知らされていた。そのとおり、前日に絶好調だったラガは、少しずつ減点を増やして、勝手に崩れていっていた。終わってみれば、ラガはクリーン数の差で3位表彰台を獲得するという状態だった。

 1ラップが終わって、藤波のもとに届いた情報は、ランプキンに1点負けて入るというものだった。もちろんこの差はまだまだ逆転可能だ。しかし油断ができない状況であるのはまちがいない。藤波は、ランプキンをぴたりとマークしてトライを続けた。もちろん、ランプキンも藤波をマークする。お互いに、ライバルの戦況は把握しての戦いだ。

 彼らが動きを止めたのは2ラップ目の第8セクション。水の中からステアケースに登るセクションで、5点になるのも簡単、というセクションだ。そして1ラップめには、藤波も5点になっている。2ラップめ、藤波はここで別のラインを見つけた。しかしそのラインを試す者が、誰もいない。じっと待っていれば、前日の順位で決まったスタート順が早いだけ、藤波の時間がなくなることになる。動いたのは、藤波だった。

 新しくみつけたラインは、思ったよりもはるかに楽だった。思ったよりも簡単にいってしまったため、藤波はのぼったところでいきすぎて足をついてしまった。それを見ていたランプキンは、登り方を調整して、見事にここをクリーンした。ランプキンにすれば、藤波に走り方を教えてもらったことになるのかもしれない。ランプキンは2ラップめ序盤の第2セクションで1点ついているので、ここまで同点だったのだが、藤波のこの1点で、勝負は再びランプキンの1点リードの展開となった。藤波が、ぎりぎりで点数をまとめれば、ランプキンも一歩も引かずにクリーンを続ける。

 13セクションは、多くのライダーが3点か5点となる難所だった。ここもまた、藤波がランプキンに先がけてトライする。そして1点。この難セクションでの1点は貴重だ。藤波は、これでいただいたと思った。しかし直後にトライしたランプキンは、ここもまた藤波が示したお手本通り、同じく1点でここを通過する。両者の差は、変わらずだ。

 ところがその次の14セクション、ランプキンが1点をついた。ランプキンにすれば、痛恨の足つきになった。これでふたりは同点になった。15セクションをともにクリーンして、勝負はクリーン数の戦い。藤波のクリーン24、ランプキンのクリーン22。日本に続いて、またもクリーン数差での勝利。ぎりぎりの勝利だった。

 2日間を通じて、藤波の獲得ポイント35、ラガも同じく35、ランプキンが34。ランプキンとのポイント差は、結局1点だけ引き離すことができた。日本とアメリカの勢いで、とはいかなかったが、藤波は世界チャンピオンに向かって、順調につき進んでいる。

 次戦アンドラ大会は、土曜日にスペイン選手権が開催される。ここ数年検討されて入る1日制のテストの意味を兼ねての実験だ。当初藤波は土曜日は走らない予定だったが、セクションもほとんど同じということで、スペイン選手権にも出場することになっている。

○藤波貴久のコメント
日曜日は、ぎりぎり。ほんとにぎりぎりの勝利でしたね。土曜日がよくなくて、それでも3位になれてしまったから、土曜日も日曜日もぎりぎりだったけど、まぁまぁの週末だったと思います。土曜日にはアダムがドギーを押さえてくれたので2点追いつかれただけですんだし。ほんとは日曜日もぼくとドギーの間に入ってほしかったところだけど、あぁ、崩れていきやがったなぁと思ってしまいました。でも、今の戦いは、ラガを含めて、3人がちょっと抜き出ているという感じですね。去年とは、やっぱり走っている感覚もぜんぜんちがいます。去年より勝っているというのもあるけど、調子が悪いときも、悪いなりに試合をまとめられている。もちろん、まとめるようにやるべきことをやっているんですけれど。去年よりは、集中力に大きなちがいがあるような感じがしています。この感じで、後半戦、がんばります。

World Championship 2004
土曜日/Saturday
1位 アダム・ラガ 36(24+12) 17
2位 ドギー・ランプキン 44(21+22+1) 13
3位 藤波貴久 48(22+23+3) 14
4位 アルベルト・カベスタニー 54(33+21) 15
5位 ジェロニ・ファハルド 54(31+23) 10
6位 黒山健一 55(34+21) 12
日曜日/Sunday
1位 藤波貴久 13(11+2) 24
2位 ドギー・ランプキン 13(10+3) 22
3位 アダム・ラガ 26(15+11) 22
4位 アルベルト・カベスタニー 26(23+3) 18
5位 ジェロニ・ファハルド 29(16+13) 15
6位 マルク・フイシャ 32(18+14) 17
Ranking
1位 藤波貴久 176
2位 ドギー・ランプキン 165
3位 アダム・ラガ 159
4位 アルベルト・カベスタニー 126
5位 マルク・フレイシャ 111
6位 ジェロニ・ファハルド 101

Pix:Mario Candellone, Agnese Andrione 公式リザルト(土曜日)(PDF)はこちら
公式リザルト(日曜日)(PDF)はこちら
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