2004年3月20日
インドア世界選手権第11戦(最終戦) ドイツGP(Riesa)

 早いもので、インドアシーズンもこれが最後。立ち上がりはランプキンが好調で、昨年のチャンピオンのラガも苦しそうだったが、終わってみればラガは6連勝を含む7勝をあげ、圧倒的な強さを発揮した。そして終盤の興味の焦点は、王者ランプキンに強める、我らが藤波貴久の追撃だった。

 7つのオブザープドセクションとダブルレーンひとつは、コンパクトな会場に合わせての設定。今回はいつもの6名に加えてタデウス・ブラズシアクとカルステン・ストランコネルが加わったが、7つのセクションのうち、5つが5点というスコア。コブレンツのときにはフレイシャを脅かさんばかりの勢いだったブラズシアクだったが、今回はふつうだった。

 今回のマシンは前夜のニースから夜を徹して運ばれてきたものだから、前日のトラブルは、根本的には会計されていない。試合が始まるぎりぎりまで修復をしつつ、スペアマシンでウォームアップをする藤波。実は本番車と予備車はエンジンの仕様に若干のちがいがあって、スタート前の藤波は、マシンのセレクトに悩むことになった。メインマシンの仕上がりは、点数をつければ70点くらい。スペアマシンは完璧な仕上がりだが、ライダーが乗りたいのはやはりメインマシンだ。ニースの試合中にも、スペアマシンゆえの違和感を感じていた藤波は、この大会を70点の仕上がりのメインマシンで戦うことに決めた。

 今回は、予選の持ち時間が厳しかった。タイムオーバーなしに7セクションを走りきったのはラガとランプキンのふたりで、ジャービスとストランコネルは2点減点(30秒以上1分までのタイムオーバー)、ブラズシアクにいたっては4点(1分30秒以上のタイムオーバー)も減点を喫している。藤波もわずか6秒とはいえタイムオーバーで1点減点を加算してしまっている。

 タイムオーバーの元凶は第2セクション。階段を上っていくタワーセクションに時間を費やされたのと、失敗すると取り返しがつかないダニエルで飛んでいく石のセクションを慎重に走ったためのタイムオーバーだが、ランプキンが残り3秒と、18秒を残したラガ以外は、全員が時間との戦いに苦労させられたセクションだった。

 見た感じはむずかしめのセクションだったので、カベスタニーが3点で走破した時には、今日のカベスタニーは乗れていると感じられたものだったが、走ってみると、藤波も同様にいい感じで走れているのを実感。減点もタイムオーバー減点を加えて3点と、カベスタニーと並んだ。これでほぼ、決勝進出はまちがいないところで、一安心といったところ。跡は、ランプキンがどこまで崩れてくれるかが、藤波陣営の期待となった。しかしランプキンは7つのセクションを2点と、最後の最後に気合いが入っている。さすがに百戦練磨のチャンピオンはちがうと、あらためて思わせられたランプキンのがんばりだった。

 予選では、2点のランプキンと3点のラガがダブルレーンで戦い、ラガが勝ったので同点、タイムの速かったラガが決勝進出一番手となった。藤波は、珍しくダブルレーンでカベスタニーに負けて、減点4。予選4番目で、決勝では最初に走るライダーとなった。

 一番手スタートは、ふつうに考えれば走りの見本もなく、時間的な配分も読めない。不利な条件だが、藤波はそうは考えていなかった。最初に好スコアをマークすることで、ライプルにプレッシャーを与えることもできる。今回は特に、時間をオーバーしても、落ち着いて走ることでランプキンとの戦いを優位にしようと考えていた。

 そのとおり、第2、第3で藤波はタイムオーバー2点を加えることになったが、ランプキンは第1、第2で5点となった。藤波には、最初からいい展開。さらにラガとカベスタニーが絶好調で、この日はこのどちらかが勝利するのは、セクションを3つ4つ走った時点で明らかだった。これは藤波が勝てないということを意味するが、同時にランプキンにも勝利がないことになる。藤波より勝ち星がひとつ多いランプキンは、ここで藤波に対して2点以上ランキングポイントを離せば、ランキング2位を再び奪うことができる。ランプキンと藤波がともに決勝に残った次点で、ランプキンは2位以上にならないといけなかったのだ。

 7つのセクションを走り終えて、残るはラガとカベスタニーによるプレイオフレース。ランプキンと藤波は、ここで試合が終わった。藤波15点に対して、ランプキンは19点。7セクションを走り終えたところで、ランプキンは藤波に「おめでとう」と声をかけてきた。イギリス紳士のランプキンらしい、ランキング争いの終章となった。しかしその実、ランキング2位を藤波に奪われたランプキンは、その事実をかなり悔しがっていた模様。2004年の藤波とランプキンは、正々堂々と真剣勝負を展開したのだ。

 さてこの試合の後、日曜日にドイツからニースに飛行機で移動、ニースからバルセロナまで戻り、月曜日からさっそくアウトドア用マシンでの本格的トレーニングに入る。この週末はスペイン選手権の第2戦で、その翌週は、いよいよ世界選手権開幕戦、アイルランド大会である。

○藤波貴久のコメント
シーズン前には、ランキング2位という今の結末はまったく考えてもいなかったことだったので、今年のインドアはいいシーズンになったと思います。ライダー仲間にも「今まではインドアの藤波はメンバーになりきれていなかったけど、今年は“インドアの藤波”にかわったね」と評価してもらえるほどになりました。でもふだんの練習はアウトドアばかりで、特にインドアの練習をしているわけではありません。でも、トレーニングメニューなども充実していて、インドアの試合で続けてセクションを走っても、腕が上がるなんてことはなくなっています。テクニックだけではなく、いろんな点で今年の成績があるし、それが自信になっています。チャンピオンをとれなかったのが残念、と言いたいところですが、今年は予選落ちを2度に抑えたこと、なにはともあれ1勝できたこと、第1戦からランキング3位をキープして、予選でいいスタート順を得られたことなどが大きな収穫でした。アウトドアシーズンを前に、いい感じでインドアシーズンを終えられたのは、とにかく大きな成果でした。明日からは、気持ちを切り替えて、アウトドアシーズンに突入します。

FIM Trial World Championship 2004
Erdgas Arena Riesa
Final Lap(決勝)
1位 アルベルト・カベスタニー 4
2位 アダム・ラガ 8
3位 藤波貴久 15
4位 ドギー・ランプキン 19
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ 3
2位 ドギー・ランプキン 3
3位 アルベルト・カベスタニー 3
4位 藤波貴久 4
5位 マルク・フレイシャ 9
6位 グラハム・ジャービス 14
7位 カルステン・ストランコネル 30
8位 タデウス・ブラズシアク 30
Ranking
1位 アダム・ラガ 102
2位 藤波貴久 71
3位 ドギー・ランプキン 68
4位 マルク・フレイシャ 61
5位 アルベルト・カベスタニー 52
6位 グラハム・ジャービス 42

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