2004年3月19日
インドア世界選手権第10戦 フランスGP(Nice)

 インドアシリーズの最終章は、忙しい週末となった。

 金曜日がニース大会。その翌日の土曜日がドイツ大会。藤波はニースまで陸路移動して、そこからニース大会を戦い、空路ドイツへ移動し最終戦。翌日空路ニースへ戻り陸路でバルセロナへ帰るというあわただしい旅程となった。マシンは参加者全員分を、オクタゴンがニースからドイツまで輸送した。ヨーロッパ人は、ときどき日本人には理解できないバイタリティを発揮する。

 さてニース大会は、当初はワイルドカードのライダーを2名加えて8名参加とされていたが、開けてみればいつもの6名の参加となった。予選通過ラインが4名から3名となり、これがランプキンと藤波のランキング2位争いにも影響を与えることになった。

 今回藤波のスタート順は一番最後。トップスターとのジャービスから始まって、すべてのライダーの走りを観察してからのスタートとなった。セクションは見た目には簡単そうで、オールクリーンをするつもりでは知らないと決勝進出はままならないかなぁという印象だった。

 ところがここで、藤波にトラブル発生。インドア大会には、スペアを含んで2台のマシンを持ちこむのだが、メインマシンに不具合が生じた。これで大会は、スペアマシンで走らざるをえなくなってしまった。スペアマシンは、すべてのセッティングを藤波バージョンにしてあるが、いつも乗り込んでいるメインマシンと、ライダーとのコミュニケーションがわずかにちがう。精神的には、やはり逆境となった。もちろん、ランキング2位を得るため、ランプキンに勝たなければいけないというプレッシャーもある。

 第1セクションを走り始めてすぐ、藤波はこの日の走りが、自分のライディングでないことを感じていた。もちろん、だから結果が悪かったでしたではそれまでのもので、そういうときでもリザルトをまとめてこそ実力者である。藤波は2セクション以降、ライディングを本来の自分に戻そうと努力するが、この日ばかりは、それができなかった。第1セクション、第2セクションと1点ずつをついた滑り出しから、第5セクションではあわや5点の3点を喫してしまった。5cm振るべきポイントで、30cmも振ってしまった。これで岩から落ちかけてしまって、なんとか5点にならずにアウトできたのが不幸中の幸いのようなライディングだった。

 終わってみれば、予選3位のカベスタニーとは同点。レギュレーションによって、7分53秒のカベスタニーに対して、8分50秒を費やした藤波が次点となって、藤波の予選落ちは確定した。しかし57秒の差によるくやしい予選落ちというよりも、この日はライディングのできが結果に正直に反映されていた。

 ランプキンは予選をトップで通過した。このまま勢いに乗られると、予選落ちした藤波はなすすべなくランプキンに逆転を許すことになる。ファイナルを見守る藤波の前で、ランプキンの第1セクションは非常に落ち着いて見えた。しかし第2セクションで5点を喫したのを見て、藤波にやや安堵が戻った。案の定、ランプキンはラガとカベスタニーを相手に3位となり、4位で予選落ちした藤波とのランキングポイント差は、たった1点だけ詰め寄られたにとどまった。まだ、チャンスは充分に残っている。

 今シーズン2度目の予選落ち。しかし香港で予選落ちした時には「今年もまた」という形容詞がついても不思議ではない状態だったが、今の藤波はすでに「珍しく予選落ち」と形容されるライダーになっている。

○藤波貴久のコメント
久しぶりに、ファイナルのライディングを外から見ました。ファイナルの行方を見ている外野席というのは、自分のいるべき場所ではないというのが今回の実感です。自分が出ていなければ、ライバルのライディングをじっくり観察することもできて、それはそれで情報収集になるのですが、そんなことよりも、やはりライダーは自分がいるべき場所で戦わなければいけないのだと、気持ちを新たにしました。ランキング2位は、最終戦で決勝進出ができれば、可能性は充分にあると自信は持っていました。トップで決勝に進出したランプキンが、決勝の第1セクションをクリーンした時までは、正直なところ「やばい」とも思いましたが、今はもう大丈夫です。

FIM Trial World Championship 2004
Granada's Palacio de Deportes
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ 4
2位 アルベルト・カベスタニー 9
3位 ドギー・ランプキン 12
Qualificarion Lap(予選)
1位 ドギー・ランプキン 4
2位 アダム・ラガ 4
3位 アルベルト・カベスタニー 7
4位 藤波貴久 7
5位 マルク・フレイシャ 10
6位 グラハム・ジャービス 13
Ranking
1位 アダム・ラガ 94
2位 藤波貴久 65
3位 ドギー・ランプキン 63
4位 マルク・フレイシャ 51
5位 アルベルト・カベスタニー 48
6位 グラハム・ジャービス 39

Pix:Mario Candellone 公式リザルト(PDF)はこちら
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