2004年2月21日
インドア世界選手権第8戦 ポルトガルGP(Lisbon)

 全12戦のインドア世界選手権だが、今後が少しあやしくなってきた。第9戦に予定されていたロシア(サンクト・ペテルブルグ)と第11戦フランス(ニース)が中止という情報が入ったからだ。これで残りは今回を入れて3戦ということになる。インドアのスケジュールは、いつもぎりぎりまで決まらないことが多いのだが、もしこの中止が決定なら、タイトル争いには大きな影響が出そうだ。

 会場は1万人を収容できるという巨大なスタジアム。公式発表では、観客数は6500人となっている。大きなスタジアムらしく、セクションは11セクションが用意された。このうち、クォリファイでは9個のセクションが使われる。持ち時間は12分。

 セクションは、ほとんどすべてが鉄板でできていて、ほか、ひとつは水の上に岩が浮いている設定、もうひとつは、いつも定番となっている、水が流れている滝セクション。スペイン人が得意そうな、インドアの中でももっともインドアらしいセクション設定となっている。

 最初に走ったのはカベスタニー。第一ライダーにもかかわらず、カベスタニーは調子がよさそうだった。カベスタニーは、9つのオブザーブドセクションを終えたところで16点だった。

 これは悪くないが、藤波は、これならなんとかなるのではないかとかんがえていた。インドアでは、これまでクォリファイを通過するのが大仕事だった藤波。今シーズンも、序盤ではこれが第一の関門となっていた。しかしシーズンを消化するに従い、毎回のようにクォリファイを通過し、経験も積んだ。今の藤波には、クォリファイを通過するのは、確実にこなす仕事の一つではあるが、大仕事でも特に厳しい難関でもなくなっている。

 カベスタニーに続いてはジャービス。ジャービスは28点、続いてはフレイシャで19点。その次が藤波だった。ランプキンとラガの点数が読めないところでクォリファイを走ることになるが、カベスタニーがひとまずの目安となる。

 第4セクション(3セクションはないから3つ目のセクションということになる)で、初めて減点を喫した。しかしこのセクション、ほかのみんなは揃って入り口で叩き落ちた。藤波だけがここを登った。登った時に1点、降りる時にちょん足が出て2点だったが、上々の滑り出しである。

 第6セクション(第5はないから、実際は第4に続く4つ目)は、インの三段がすごくむずかしかった。ここはカベスタニーが2点で通過している。もちろん藤波も果敢に立ち向かったが、実はここは、5点なら5点でしかたがないと考えていた。その前のセクションで3点のアドバンテージをとっているというのもあったし、もがいて時間を費やすのだったら、さっさと5点になって、可能性がより大きいセクションに時間を使ったほうがいい。インドアでの戦い方が、自分のものになっている、その証しでもある。そうは言いつつ、このセクションで落ちた時に、ハンドルが少し曲がった。でも、それもあっさり受け入れて、そのまま残りのセクションを走った藤波だった。試合展開が読めるようになった、と藤波は言う。

 結局、藤波はクォリファイを2位で通過した。ハイジャンプは全員クリアで、ラガとのダブルレーンは藤波が勝利した。しかしラガは藤波が5点になった三段をクリーンし、藤波より5点減点の少ない10点で9つのセクションを終えてトップだった。驚いたのは、ランプキンがフレイシャと同点の19点で5位に転落してしまったことだった。

 さてファイナル。今度は11セクションをフルに走る。藤波は、序盤、調子がよかった。第1は3人ともクリーン。第2では藤波とラガが1点、カベスタニーはタイムオーバーがあって2点、第3でも藤波とラガが1点、カベスタニーは2点。そして第4。カベスタニーが5点。続く藤波は、タイムオーバーを含んで2点で通過した。藤波のあとに走ったラガは、5点だった。

 ここで藤波はトップに出た。これなら勝てるかもしれないと、この時藤波は思った。次の第5セクションは、3人ともクリーンした。

 次の第6セクション、ぎりぎりまで上がっていたものの、引っかけたアンダーガードがほんの少し斜めにあたっていて、滑り落ちてしまい5点になった。ラガはここをクリーン。ここでラガには逆転を許した。カベスタニーはこれも5点となって、優勝争いからは一歩後退した感じだ。次の第7セクション、今度はラガだけが1点ついた。藤波とは、1点差となった。

 残念ながら、今回の藤波の優勝争いはここまでだった。次の第8セクションで、藤波は第6同様、惜しいところで5点となった。ほんの少しためらいながらセクションに向かったのが、しっかり結果になった。このセクション、カベスタニーは5点だが、ラガはクリーンした。点差は、6点に広がった。

 第9は3人とも5点、10セクションではカベスタニーだけクリーンをしたが、時すでに遅し。藤波はここを2点プラスタイムオーバー1点、ラガは1点で通過した。ここでラガと藤波の点差、8点。実は第8で落ちた時、藤波は腰を強打していた。マシンと鉄板の間に挟まってしまったのだ。痛む腰を冷やしながらの残りのトライは、ライディングにも微妙に影響を与えていたかもしれない。ちなみに、イギリスで痛めた足は、今でもまだ痛みはするが、毎回テーピングを巻いてライディングしているおかげで、負傷も順調に回復する一方、テーピングの達人になれたことが、メリットだとのことである。

 最終の滝セクション、ここで藤波は最後の意地を見せた。ラガとカベスタニーが5点となる中、1点+タイムオーバー1点、2点で通過したのだ。ハイジャンプとダブルレーンを残して、ラガとの点差は結局5点だった。ハイジャンプは藤波とラガはクリーン、ラガとのダブルレーンは、順当に藤波の勝利となったが、大会の勝利は4点差で、ラガのものとなった。

 これで藤波は、ランキングでランプキンと同点の54点となった。終盤戦に向けて、ラガとのランキング2位争いに注目したいところだが、藤波はそれにはあまり重きを置いていないという。インドアの現チャンピオンはやはりラガ。今シーズンは、今大会の時点でラガは20点のアドバンテージを持った。残りが本当に2戦なら、この時点でラガのチャンピオンは決定だ。しかし藤波は、チャンピオンにはなれなくても、インドアのライバルはラガだと思っている。それがトップを目指す藤波の戦い方だ。

○藤波貴久のコメント
今回は、今までにない、いい収穫の多い大会でした。結果は、惜しいところで負けてしまいました。たら・ればの話になってしまいますが、今回はいければクリーン、いけなければ5点のところで5点になっていますから、ふたつのどちらかでいけていればという無念はありますが、それよりも、ラガも今回はいい走りをしていたし、ぼくも、前半はいい走りをしていた。いい勝負ができたという点で、収穫でした。今回は、なってしまった2位ではなく、なるべくしてなったというところに、意味があります。今シーズンはもう残り少ないですが、今度はいい勝負をしたうえで、ラガを破って優勝したいと思います。

FIM Trial World Championship 2004
Pavilhao Atlantico
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ 20
2位 藤波貴久 24
3位 アルベルト・カベスタニー 30
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ 11
2位 藤波貴久 15
3位 アルベルト・カベスタニー 17
4位 マルク・フレイシャ 19
5位 ドギー・ランプキン 19
6位 グラハム・ジャービス 29
Ranking
1位 アダム・ラガ 74
2位 ドギー・ランプキン 54
3位 藤波貴久 54
4位 アルベルト・カベスタニー 39
5位 マルク・フレイシャ 36
6位 グラハム・ジャービス 31

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