2004年2月14日
インドア世界選手権第7戦 イタリアGP(Pesaro)

 インドア世界選手権も早くも後半戦。ペサロは、イタリアの最西部にある。藤波貴久の住むのはスペインの最西部だが、ペサロまでは1300kmのドライブとなった。インドアの選手権は、通常は飛行機での移動となるが、今回はマシンを輸送する段取りの問題で、藤波はマインダーのジョセップとともに、ジョセップのバンで会場へ向こうことになった。行きも帰りも1300km。長旅である。会場はふだんはバスケットなどを多く開催しているスタジアムで、ほぼ満員。観客動員は4500人と発表されている。

 セクションは6セクション。今回のセクションは、見た目の派手さよりも、トライアル玄人にこそ理解できるテクニカルな設定が特徴だった。バリエーションの豊かさも特筆で、第1は鉄板でできた四角い素材、第2は大きなタイヤ、第3は木。第4はコンクリートのでっかい円柱。第5は真四角のヒューム管。最終第6は水の流れる川セクション。それぞれがちがう素材で作られ、これまた走りにくさを際だたせていた。テクニカルというのは、滑るコンディションや、ホイールベースぎりぎりで飛びついたりというその設定ゆえ。細かい位置調整や正確なライン取りがより重視される設定だ。

 今回、藤波がひいたくじは最後から2番目。最終のくじを引いたのはランプキンだった。第1ライダーはカベスタニーで、カベスタニーの減点は11点。ジャービスも11点だが、タイムオーバーが1点あって(わずか2秒だが)12点。ジャービスがハイジャンプでバーを2本落とし、ダブルレーンではカベスタニーがジャービスにやぶれ、トータルではカベスタニーが12点、ジャービスが14点。

 3人目にスタートしたフレイシャは、タイムオーバーの1点を加えたものの、小計8点。着実に調子を取り戻している。続くはAグループのラガ。ラガはなんと最終の水セクションで2点となった以外のすべてをクリーン。13秒のタイムオーバー減点1点を加えて小計3点となった。

 その次が藤波。藤波は最終の水セクションで5点となったが、タイムオーバーはなし。フレイシャの8点に対して6点と、決勝進出に向けて、とりあえずは無難なところ。最後に走ったランプキンは藤波と同じく6点。ランプキンと藤波は同点だが、6つのオブザーブドセクションの走破時間がランプキン8分49秒に対して藤波8分57秒。これでランプキンの2位が確定して、ラガ対ランプキンのダブルレーンはファイナルでのスタート順を決めるだけの儀式となった。

 藤波とフレイシャは、これでファイナル進出が決まる。2点のアドバンテージは、藤波にすればやや余裕の点差だったが、ハイジャンプで少し状況が変わった。藤波が、珍しくバーを1本落としてしまった。これで7対8。ダブルレーンの結果次第では、フレイシャにファイナル進出の席を奪われてしまう。

 今年のインドアの規則では、同点の場合は、オブザーブドセクションの走破時間が早い方が勝者となる。フレイシャの走破時間は9分7秒、藤波は8分57秒。同点に持ちこめば、藤波が決勝進出だ。つまり、ダブルレーンで、藤波は1点の減点までは許されるということ。ダブルレーンのセクションはやはりテクニカルで、無理をして急げば足をついてしまう可能性がある。藤波はここで、ダブルレーンの勝利よりも確実にクリーンして、ファイナルに進出する方を選んだ。これで8対8の同点、そして10秒のタイム差で、藤波のファイナル進出が決まった。

 決勝は、藤波が一番スタート。第1から第5までは、クォリファイラップの逆回り。第6の水セクションだけはクォリファイと同様だ。滑り出しの第1セクション、藤波だけ1点ついてしまった。第2セクションは、クリーンしたものの1分の制限時間を2秒すぎて、1点減点。ランプキンは1点+1点、ラガは1点。ラガがふたりに対して1点リードランプキンと藤波は、同点。

 第3は、アンダーガードをのせていくステアで、やや滑った。念を入れるため、一度マシンを下げてやりなおそうとしたところ(インドアでは、後退は減点にはならない。念のため)、なんとフロントが浮いてしまってそのまま後ろに落ちてしまった。藤波7点、ランプキン5点、ラガ3点。

 第4セクション。藤波は2点+タイムオーバー1点。ランプキンは1点+1点だったが、ここでラガが5点になった。10対7対8。ランプキンがリーダーとなった。

 第5セクション。今度はランプキンがひとり5点。ラガがリードを奪い返し、藤波が2位に浮上。

 第6セクション。ここでまたどんでん返し。藤波が、つまらない足つきを繰り返して、なんと4回足つきで5点となってしまったのだ。ランプキンはここを1点。しかしラガはここでひっかかって5点となった。その結果、ラガとランプキンが13点で同点、藤波は15点ともうひと息届かずで、6つのオブザーブドセクションを走り終えた。藤波は、この大会は3位でフィニッシュかと、半ばあきらめの境地にいた。3位表彰台は悪くないが、ファイナルに限っていえば最下位だから、その心境は複雑なのだ。

 しかし、今回のドラマは終わっていなかった。

 落ちこんでいる藤波だったが、ハイジャンプはきちんと飛び越え、と、藤波の目に入ってきたのは、ランプキンがバーを2本も落としている、そのシーンだった。これで、藤波とランプキンは同点ではないか。藤波の闘争心は、ここで再び火がついた。

 勝者を決めるダブルレーンを前に、まず2位を決定するプレイオフ。舞台は第1セクションだった。ここでの走破タイムが早い方が、ラガとの優勝決定戦である最後のダブルレーンに進出できる。もちろん、足をついたらその分減点が加算されるから、速いだけでは許されない。トライは、まず藤波から。藤波のタイムは30秒8。途中、フロントをつったまま走破すれば一発でクリアできるステップで、フロントを落としてしまい、その処理に多少手間取ってしまったものの、まずまずの走破タイムだった。藤波は、セクションをスピーディに走破することには、長けているのだ。

 この藤波の走りにプレッシャーを感じたか、ランプキンの走りには乱れが走った。なんと入り口で落ちてしまった。プレイオフは、藤波の勝利だ。これで、ランプキンの3位が決定した。

 最後は、ラガと藤波の優勝決定戦のダブルレーン。ここでラガが藤波よりも2点以上多く減点すれば藤波の優勝なのだが、逆にラガは、足つきをしないように慎重に走れば勝利である。ダブルレーンは藤波の勝利、しかし大会の勝利はラガということで、ドラマはすべて終了した。

 ランプキンを直接対決で藤波が破ったことで、藤波とランプキンのポイント差はわずか4点となった。逆にラガとランプキンは14点差となり、ラガの連覇は日増しに濃厚なものになっている。まだまだ余談は許さないが、今後は藤波とランプキンのランキング2位争いが注目だ。

○藤波貴久のコメント
インドア世界選手権で、2位になったのは初めてです。今回のセクションは、ドギーは好きじゃないと言っていたけど、それとこれとは話は別。2位になれてうれしいです。クォリファイのオブザーブドセクションが終わった時には、予選落ちかぁとがっかりしていたのですから、ものすごいハッピーエンド。まぁ終わってみれば、あと少しだけミスを消していけば、優勝もできたかもしれないという結果ですけども。ドギーも、チャンピオンシップを半分あきらめたみたいなコメントをしているし、これからはドギーと一騎討ちです。思いきり、やっつけます。

FIM Trial World Championship 2004
BPA Palas
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ 14
2位 藤波貴久 15
3位 ドギー・ランプキン 15
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ 3
2位 ドギー・ランプキン 7
3位 藤波貴久 8
4位 マルク・フレイシャ 8
5位 アルベルト・カベスタニー 12
6位 グラハム・ジャービス 14
Ranking
1位 アダム・ラガ 64
2位 ドギー・ランプキン 50
3位 藤波貴久 46
4位 アルベルト・カベスタニー 33
5位 マルク・フレイシャ 31
6位 グラハム・ジャービス 28

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