2004年2月1日
インドア世界選手権第6戦 スペインGP(Barcelona)

 全12戦のインドア世界選手権の、ちょうど半分。バルセロナは、オリンピックに使われたサン・ジョルディの巨大なスタジアムを使用して、盛大に開催される。インドアトライアルが世界選手権となる以前からの、伝統のイベントでもある。観客数は13500人ということだが、ざっと見てもほぼ満員。

 スタジアムが大きいから、セクションの数も多い。オブザーブドセクションが11個。このうち3つは、観客席に向かって登っていくような設定になっていた。ほかにハイジャップがひとつとダブルレーンがふたつだが、ダブルレーンは、スタジアムの端から端までを使った長大なものを、片道ずつ使うかたちで2セクションに設定していた。

 トライアルが盛んなスペインにあって、バルセロナはトライアルがもっとも盛んな都市でもある。モンテッサをはじめ、トライアルメーカーもバルセロナに近いところに本拠地をかまえていることもあって、この大会には、いろんなお客さんがやってくる。モンテッサの関係者も、ずらりと勢揃いで、どのライダーも、負けられないという思いたっぷりだ。

 ところが藤波は、これまでバルセロナのインドアで決勝に進んだことがない。去年までの藤波は、決勝に進出すれば大収穫で、インドアは苦手なライダーの烙印を押されていたのだ。今年は優勝もしたし、5戦中4戦でファイナルに進出するなど、これまでとはちがった活躍を見せているが、しかし、今回は会場が大きいわりに、参加ライダーは6名だけで、ファイナル進出は3名となっている。ファイナル進出はむずかしいかなと、試合前の藤波は謙虚に考えていた。

 今回一番くじを引いたのは、ランキング5位のジャースだった。ところがジャービスが、思いのほか走れている。11セクション13分の持ち時間も1分半ほど残して22点。次に走ったカベスタニーは、どうしたものかどこでもかしこでも落っこちて、減点35。今年のカベスタニーは、なかなか本調子が発揮できないでいる。続いて3番スタートがフレイシャ。これまで不運を一手に背負っていたフレイシャだが、今回は調子がいい。セクションも、フレイシャの得意なステアケースの多いものだったが、カベスタニーの1/3近い12点は見事。

 藤波は、トップ3人の中で一番くじ運の悪い4番スタート。ライバルの走りを観察しながら、フレイシャくらいには走れるのかなと当たりをつけて走り出したものの、そこここで5点となった。上がれるか上がれないかという設定のセクションが多かったので、ひとつ5点になっても取り戻すチャンスがあった点では気が楽で、5点になって気持ちまで落ちこまずに走れたのはよかったが、最後の水の流れるセクションでただ一人5点となったのは痛かった。これで減点は23点。ラガとランプキンを残して、ジャービスに次ぐ3位となってしまった。

 藤波の次に走ったラガは、まったく別格の走りだった。事前に練習していたんじゃないかと勘ぐってしまうほどの正確な走りで、たったの8点。最後にセクションインしたのが、ランプキン。しかしランプキンはラガと対照的に、あちこちで落ちまくった。カベスタニーほどひどくはなかったが、ファイナルには進めず。今シーズン2回目の予選落ちが確定した。

 ラガ、フレイシャ、このふたりに次ぐ、3人目のファイナル進出を決めるのが、このあとのハイジャンプと、ふたつのダブルレーンだ。ジャービス22点に対し、藤波が23点。同点の場合は、セクション走破時間が少ない方が勝利となる規則。12分5秒の藤波に対し、ジャービスは11分17。藤波は、なにがなんでもジャービスに1点以上のリードをとらなければいけない。ダブルレーン、ハイジャンプは、ジャービスよりも藤波の方がだいぶ得意な種目だが、それでも全勝しなければ勝ち目のない藤波に対して、どこかで勝てばいいジャービスに分があるのは明らかだ。

 いつも、ダブルレーンは2速を使う。しかしここは非常事態だ。ギヤは3速で、思いきり全開で勝負に挑んだ。スタジアム全体が大盛り上がりになったのは、藤波対ジャービスの、この一番の時だった。

 結果、藤波はジャービスに2点差をつけて、ファイナルに進出することになった。香港でファイナル進出を逃して以来(これもパンクに起因する予選敗退だった)、ファイナル進出はふつうになった2004年の藤波である。

 ただし今回の活躍はここまで。決勝では、セクションを知りつくしているかのようなラガにはついぞかなわず、フレイシャはなんとか射程距離だったかもしれないが、今回のフレイシャは起死回生にもかけていたし、また彼の得意なパターンでもある。徐々に藤波はこのふたりにリードを広げられて、3位に落ち着いた。

 ランキングでは、ランプキンが予選落ちしたことで、ラガが10点のリードを奪っている。対してランプキンと藤波は6点差まで縮まった。ラガを破ってチャンピオンとなるのはちょっとむずかしいかもしれないが、ランプキンを破ってランキング2位となるのは、かなり現実的な線となってきた最近の藤波貴久である。

○藤波貴久のコメント
クォリファイでは、最後の5点がなければ、まぁまぁといったところだったでしょうか。ランキング争いは、可能性はありますけど、あんまり欲のあることを言っていてもうまくいかないから、大きなことはいわないでおきます。でも、じりじりと追いあげていきますよ。足のけがは、どんどんよくなっていると思います。お医者さんに言わせると「おまえの“大丈夫”はあてにならん」ということで、あんまりいい状態ではないらしいですけど、ぼくはオートバイに乗ると痛いのも忘れちゃうんで、大丈夫です。来週は、インドアではなくて、スペイン選手権の第1戦です。

FIM Trial World Championship 2004
Sant Jordi Olympic Stadium
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ 12
2位 マルク・フレイシャ 29+4
3位 藤波貴久 33
Qualificarion Lap(予選)
1位 アダム・ラガ 8
2位 マルク・フレイシャ 15
3位 藤波貴久 23
4位 グラハム・ジャービス 25
5位 ドギー・ランプキン 28
6位 アルベルト・カベスタニー 35
Ranking
1位 アダム・ラガ 54
2位 ドギー・ランプキン 44
3位 藤波貴久 38
4位 アルベルト・カベスタニー 29
5位 マルク・フレイシャ 26
6位 グラハム・ジャービス 25

Pix:Pep Segales 公式リザルト(PDF)はこちら
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