2004年1月24日
インドア世界選手権第5戦 フランスGP(Marseille)

 1月24日、インドアトライアルも、早くも第5戦、中盤戦を迎えている。6500人の観客をつめこんだマルセイユのスタジアム。前回ドイツのコブレンツで優勝した藤波貴久には、さらなる飛躍を目指した次のステップへの一戦となる。

 前回コブレンツでは、藤波は一番最後のスタート順のくじをひいた。今回もまた、藤波のひいたくじは一番最後だった。2戦続けて、くじ運はいい。

 セクションは、ずいぶんむずかしめの設定だった。ワイルドカードの野崎史高、ベチューンのスコアを見るとわかるが、7つのセクションのうち、野崎の5点が4つでクリーンがゼロ、ベチューンの5点が6つでクリーンがひとつという険しい状態だ。しかも野崎にはタイムオーバーが6点、ベチューンには4点ある。クォリファイラップのタイムオーバー減点は、決められた時間内に全セクションを走りきれなかった時に、30秒ごと1点が課せられる。今回は7セクションを10分で走るきまりで、これもまた、厳しい状態だった。

 野崎とベチューンが35点をめぐる攻防、フレイシャとジャービスが20点をめぐる攻防で、この時点でファイナル進出はほぼ決まった感じがあった。ジャービスの次に走ったカベスタニーは5点ひとつ、タイムオーバーなし。今日のカベスタニーは調子がよさそうだ。しかしその次に走ったラガは、11点と1点のタイムオーバー減点。次のランプキンも、減点8点にタイムオーバー3点でトータル11点と、申し合わせたような減点数となった。この日のセクションが、よほどむずかしいという証明だ。

 そして最後が藤波。コブレンツの優勝再びとばかり、藤波の走りは好調だ。5点減点はひとつだけ、タイムオーバーもなかった。インドアのセクションはハードなうえに、次から次へとセクションをこなさなければいけないから、体力的にとてもきつい。タイムオーバーが続出なのも、続けざまのセクショントライに、みんな腕が上がってしまうからだ。今年になってからの藤波は、こういうところでも、インドアトライアルの走りを吸収しつつある。力を入れるところと抜くところ、そこをうまく使い分けないと、インドアで規定時間内にベストパフォーマンスを発揮するのはむずかしい。さて藤波のクォリファイラップの結果は、カベスタニーには劣ったものの、トータル7点。この日の勝負は、カベスタニーと藤波の間で競われるものと、誰もが思った走りっぷりだった。

 ところがファイナルラップでは、ちょっと様子がちがった。

 第1セクションでの出だしはよかった。ラガがけっこうな大クラッシュを演じ、おそらくフットレストで足をぶつけたのだろうと思われるが、かなりの痛みを訴える。これに対してランプキンはタイムオーバー1点のみで通過、藤波はタイムオーバー1点、減点1点であわせて2点で通過した。カベスタニーはラガと同じく5点で、ランプキンと藤波が、最初から逃げるパターンかと思われた。

 なおインドア世界選手権でのタイムオーバー減点は、ファイナルでは、1セクション1分(第2と第4セクションのみは1分半)の設定タイムに対して、30秒を越えるごとに1点の減点となっている。

 しかし、病院に直行するかと思われたラガと、同じように第1で失敗したカベスタニーがそのご調子をあげてトライする。対して藤波は、第3セクションでただひとり5点となってしまい、雲行きが怪しくなってくる。ここの5点は、藤波の前を走るラガとカベスタニーが、藤波の想定していた行き方とちがう方法で走破していったのを目撃したからで、それで自分の走りに迷いが出たのだという。くじ運、そしてクォリファイでの成績がよいと、らいばるたちの走りをじっくり観察できるのはメリットだが、反面、迷いが出てきてしまうデメリットもある。これも、インドアの上位を走るようになって初めて経験することだった。

 次の第4セクションでは、ランプキンがけっこう大きなクラッシュをした。ラガはこれを1点で抜けている。藤波は、谷状の黒いパイプを渡っていくポイントでトラクションをうまくかけられず、落ちそうになったところからリカバリーをした。セクションの設定的に、足をついて運んでいけるものではなかったから、このセクション、タイムオーバー1点を加えて3点で抜けられたのは、がんばったと評価していい。しかし、この時点で、藤波は3位に転落していた。

 さらに、第5セクションでは、藤波とカベスタニーのみが、5点を喫してしまった。この5点は、この日の藤波には致命傷となった。4位に転落して、本人のテンションも、落ちかけ始めていた。

 セクションの数が少ないから、大きなミスをすると、取り返しがつかない。コブレンツでは、最初に失敗をしたが、残りのセクションは集中力を持って勝利に進んだ。今回のように、中盤でミスをすると、そこから巻き返すには、セクション数が圧倒的に足りない。これで、藤波の4位は決定的となってしまった。そして、最初に大クラッシュ劇を演じたラガが、いつの間にかトップに立っていた。

 ランプキンとカベスタニーは結局同点となって、7セクションを走ったあとに、タイブレークがおこなわれた。ひとつのセクションをタイムアタックして、速い方が勝ちとなる。まずランプキンが30秒でクリアした。次に走るカベスタニーは30秒以内で走ることが2位獲得の条件。これにあせったカベスタニーが転倒して、ランプキンの2位が決まった。

 藤波とすれば、ランプキンが2位に入れば、ランキングで差を広げられることになるので、あまり歓迎ではない。しかしカベスタニーが2位になれば、藤波のランキング3位を脅かす存在として近寄ってくるので、これも歓迎ではない。藤波にすれば、ただ見守っているしかないタイブレーク、そしてランプキンとラガとのダブルレーンでの一騎討ちを見せられて、藤波の第5戦は終わった。

○藤波貴久のコメント
1ラップ目までは、ぼく的には上出来でした。インドアは、観客の声援もあるし、次々にセクションを走るし、休憩するポイントがないから、疲労がたまるというのがあります。でも今回は、タイムオーバーもなく走れたので、インドアの走り方が、だんだんできるようになってきたかなというところです。ただ、ファイナルには進めるようになったけど、その分、今まで知らなかった、上位争いでの走り方が必要になってきています。前回は優勝しましたけど、まだ今の時点では“勝っちゃった”という感じ。とりあえず今年は、ランキングは3位でいいから、あと何度か、インドアでの勝ち方を勉強したいと思います。

FIM Trial World Championship 2004
Marseille Palais des Sports
Final Lap(決勝)
1位 アダム・ラガ 10
2位 ドギー・ランプキン 11
3位 アルベルト・カベスタニー 11+5
4位 藤波貴久 17
Qualificarion Lap(予選)
1位 アルベルト・カベスタニー 6
2位 藤波貴久 7
3位 ドギー・ランプキン 11
4位 アダム・ラガ 13
5位 マルク・フレイシャ 19
6位 グラハム・ジャービス 21
7位 ジェローム・ベチューン 35
8位 野崎史高 36
Ranking
1位 アダム・ラガ 44
2位 ドギー・ランプキン 49
3位 藤波貴久 32
4位 アルベルト・カベスタニー 26
5位 グラハム・ジャービス 20
6位 マルク・フレイシャ 18

Pix:Octagon esedos
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