2018年 世界選手権第6戦フランス

2018年7月15日/オーロン(フランス)

戻りつつあるマシンとの一体感。表彰台を逃す5位

photoこのところ、あり得ない不調に悩んでいる藤波貴久。シーズン前のクラッシュで右腕に力が入らない問題も、まだまだ解決していないのだが、なにより、マシンとの一体感がまったくつかめないままというのがつらい。あんまりうまくいかないので、よかれと思ってセッティングを逆にふったポルトガルでは、ことごとく高いところに登れないという悲しい結末になった。しかしようやく、少しずつ方向性が見えかけている。

フランス・アルプスと呼ばれる山の中、標高は1600m〜1700mほどある。標高の高い、空気が薄いところは藤波にとってチームにとって鬼門となることが多いが、トニーの住むアンドラでしっかりセッティングを煮詰めてきて、そちらの方にもある程度の自信がもてるようになってきた。

セクションは第1から第6までが簡単めで、しかしそれだけに失敗ができない、気が抜けない設定になっていた。第8からはむずかしくなって、最後の第14、第15は人工セクションとなっていた。第7までは、とにかく5点を取らないようにがんばろうというのが藤波のもくろみだ。勝負は第8から第13だ。

photoグリップはよかったが、アンドラのような地形ではなく、土の登りもけっこうあって、ちょっと藤波好みといえる。今回はチャンスがあるかなとは思ってスタート台に向かった藤波だった。

第1、第2とクリーンして、第3を1点。まずまずの出だしだったのだが、第4で5点となってしまった。バックしたということで、停止5点となった。これはちょっと不本意。というか、ミスジャッジではないか。藤波はそれまでのライダーとはちがうラインでこのセクションを攻めた。その結果、ラインがちがった時点で失敗したと思われてしまった疑いがある。そう考えると、なだれこみの失敗だと思えなくもないライン取りだった。しかし絶対にバックはしていないし、失敗などしていない。そもそもバックなどしようがない状況だった。5点と宣告されてからはクリーンでいったので、そのあとオブザーバーには失敗の根拠を問いただすことになった。でも結局、採点はくつがえらなかった。頑固な人で、どうも自分のまちがいを認めたくない人だったようだ。

photo今回のオブザーバー、いつものようにフランス人には甘いのだが、それ以外にはおおむね公平な採点をしていたから、この5点は納得はできないもののしかたないとあきらめる。惜しい失点になってしまった。公平な採点といっても、オブザーバーごとの採点の尺度のちがいはある。停止の尺度など、オブザーバーが10人いれば10人ちがう。そのオブザーバーのくせを見切るのも、今の世界選手権では重要なテクニックになっている。

そんなわけで、第4の5点は残念だった。これがクリーンなら、気分的にはだいぶちがう戦いになっていただろう。

1ラップ目、藤波は第8は上がっている。これが1ラップ目の優位だった。それで1ラップ目は3位。しかし藤波の背後には、ハイメ・ブストが1点差、アダム・ラガが2点差で迫っていた。だから2ラップ目にはさらに心して、第8から第13までの勝負どころをきっちり上がらなければいけないだろうなと覚悟しての2ラップ目となった。

photoところがしかし、藤波は第8から第12まで連続5点となってしまった。1ラップ目にクリーンした第10セクションは、岩が動いて危険だということで、2ラップ目はGPクラスだけキャンセルになった。つまり4連続5点ということだ。このうちの1個か2個を抜けていないと、表彰台獲得は厳しかったかな、というのが今回の戦いだった。

ただ、5点にはなったものの、これまでのわけもわからず5点になっているのとはちがい、本人がなぜ失敗したかがわかっていた。マシンをちゃんと操れたうえでの、失敗や成功だったから、結果の5位はともかく、今回は戦えている実感が戻ってきたのはなにより収穫となっている。

マシンとの一体感についての正解ができたことで、これだけの進化があった。ただ、温度などの影響か、走っているうちに感触が変わることもあって、1ラップ目後半にはちょっと感触が変わってしまうということもあった。それで1ラップ目と2ラップ目の間に一部パーツを変えたのだが、これが慣らしの必要なパーツだったから、2ラップ目前半はちょっと苦戦をすることになったのだが、それでも前回までとはまったく異なる戦いができたのはなによりよかったことだった。

photo今回は黒山健一が参戦したことで、ヤマハの人をはじめ、日本人が多かった。トライアル・デ・ナシオンではともかく、いつもの世界選手権では珍しいことだ。いつもは日本人がほとんど皆無のパドック環境だから、たくさんの日本人のいるパドックは、やはりちょっと楽しい。それが成績になにか影響があったかというと微妙だが、日本語で会話ができる人がいるのは、どこかリラックスできていたのかもしれない。

藤波は、これでランキングでジェイムス・ダビルを抜いて、ランキング7位に浮上した。

○藤波貴久のコメント

「結果は5位でしたが、ようやく自分の思ったような走りができる、失敗しても納得ができる、という戦い方ができてきました。長く苦しんでしまいましたが、少し本調子に戻れそうです。ランキングはひとつ上がりました。この先、ランキング6位には上がれそうですが、ランキング5位はどうかな。それ以上はちょっと離れちゃっていますが、もともと今シーズンの目標がランキング5位というわけではありませんから、ランキングが5位になるか6位になるかというより、いまは残る数少ないラウンドを、ひとつひとつちゃんと走って、表彰台にのりたいと思っています」

World Championship 2018
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 22 22
2位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ガスガス 29 22
3位 ハイメ・ブスト スペイン・ガスガス 39 19
4位 アダム・ラガ スペイン・TRRS 41 17
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 50 12
6位 アルベルト・カベスタニー スペイン・ベータ 57 11
7位 ミケル・ジェラベルト スペイン・シェルコ 60 14
8位 アレックス・フェレール フランス・シェルコ 65 12
9位 オリオル・ノグエラ スペイン・ホタガス 69 12
10位 ジャック・プライス イギリス・ガスガス 72 13
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 110
2位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ガスガス 97
3位 ハイメ・ブスト スペイン・ガスガス 91
4位 アダム・ラガ スペイン・TRRS 78
5位 アルベルト・カベスタニー スペイン・ベータ 69
6位 ホルヘ・カサレス スペイン・ヴェルティゴ 54
7位 藤波貴久 日本・モンテッサ 53
8位 ジェイムス・ダビル イギリス・ベータ 50