2018年 世界選手権第4戦アンドラ

2018年6月17日/セント・ジュリア(アンドラ)

なんと12位に。最悪のアンドラ大会

photo土曜日に表彰台に乗りながら、日曜日は9位と、なんとも浮き沈みの大きい戦いっぷりをしてしまった日本GPを終え、スペインに戻って2週間後、トライアルGPは毎年恒例の開催地、アンドラへやってきた。ここはトニー・ボウが住んでいるところでもあり、ボウにしてみれば第2の地元的GPとなる。藤波も、早めに現地入りをしてマシンセッティングなどを煮詰めて当日を待つことにした。日本GPでは特に日曜日にマシンとのコンビネーションに問題を感じていた藤波。ここでしっかりマシンを仕上げて、日本GPの土曜日1ラップ目のように、きっちり実力を発揮したい。セットアップは、いい感じで進んでいた。

セクションはというと、アンドラ大会特有、乾いた岩をどこまでもどこまでも上っていくもので、この設定ではラインがしっかりできるあとからのトライが有利だというのは予想ができた。つまりスタート順を決める予選も、勝利には重要な要素となってくる。

土曜日、大会当日を翌日に控えて、予選の日。練習走行は、そこそこいい走りができた。予選では不満の残る走りばかりの今シーズン、今度こそは、納得のいく走りをしてそこそこいいポジションでスタートしたいものだ。ところが予選の1回目、マシンにちょっと違和感。高い気温のせいなのか、この変調にはちょっとあわてた。そのまま予選1回目を走って7位。14人中のちょうど半分。クリーンしたのは10人だったから、あまりいい結果とはいえない。

本番ともいえる予選2回目までに、なんとかベストのセッティングを引っ張り出したい藤波陣営だったが、なかなかうまく進まず。ボウも同じ症状に悩んでいるものの、あちらはなぜかそこそこに乗りこなしてしまう。藤波ばかりがセッティングに悩んでいるように見られてしまい、ますます困ったことになる。

photo2時間ほどある予選のインターバル、実力を発揮できるようにチーム一丸となってセッティング改善に努めたが、絶好調には遠い感じで予選に挑まざるを得なかった。自分の手足になってくれないマシンでは、一発タイムを狙う走りはリスクがありすぎる。足をつかない、ぎりぎり速い走り方に努めた藤波だったが、しかし今回の予選は、予選システムが始まっていない初めて、全員がクリーンという結果になった。いつもなら、5点が何人かいて、1点、2点の減点が何人かいるものだが、今回はそれがいない。しっかりクリーンに努めた藤波は、なんと14人中13番目となってしまった。ボウは渾身の走りを見せてトップに立ったが、ちょっと明暗のコントラストがつきすぎの結果となってしまった。日本GPでも予選はよくなかったが、あの時にはジェロニ・ファハルドやボウ、そして小川友幸に黒山健一と、予選が悪かったライダーが多くいて、予選の失敗があまりハンディとはならなかった。今回の予選の失敗は、ちょっと痛い。

藤波の前でスタートするのは、アレックス・フェレールただ一人。T2の選手がつけたわだちはGPクラスのラインにはじゃまになることが多いので、トップスタートの不利益は甚大だ。加えて、今回は停止の判定を厳しくとるというオブザーバーからのお達しがあり、これもまた特に先頭グループにとっては走りにくさに輪をかけることになった。じっくりバランスを修正すれば走破は容易だが、止まらずに走りきろうと思うと失敗のリスクが増す。しかしバランス修正をしていると停止5点のリスクが大きくなる。そのジレンマに挟まれて、藤波は第1セクションで5点になった。停止を警戒して、わずかにバランスが崩れたまま走っていっての失敗だった。

藤波の前を走ったフェレールはクリーンしていったので、この第1での5点は痛いところとなった。それでも、この時点での藤波はそれほど絶望的ではなかった。セクションが密集して作られていたので、藤波が第3、第4にいながら、後続のライダーの第2、第3の様子を見ることができた。アダム・ラガが第2で5点となり、ファハルドも第2で足をつくのを見ていたから、この先をしっかり走れば、第1での5点は取り返せるものだと思っていた。

photoしかし今回の戦いは神経戦だった。いければクリーン、失敗すれば5点。なかなか間がない設定で、クリーンか5点の間でライダーは戦わなければいけない。第4では1点を失ったが、ここでもまだまだ挽回はできると信じていた。

第5セクション。フェレールが抜けたポイントを、藤波も同じように抜けていく。いや、わずかに藤波の方が斜面の下側を選んだのだが、そのとき、タイヤの下の地面がごっそり崩れてなくなった。そのまま地面ともども落ちていき、止まったところはセクションテープの外だった。これで5点だ。

なんとか調子を維持してがまんの戦いができているかなというところで出鼻をくじくような5点。この日はずっとこんな調子で、まったく自分のペースを作れないまま、走り続けなければいけなかった。

第11セクションで2点となった後の第12セクション。ここはむずかしいセクションで、しかも持ち時間も残り少なくなっていた。それでも下見で入口から出口までは歩いてみたのだが、ちょっと可能性が薄そうだ。その後の13、14、15セクションは比較的簡単だったので、そちらをしっかり抜けるのが先決だ。なので第12は申告5点で先を急ぐことにした。

今年から、採点スコアの入力方法が変わって、ライダーは自分の情報が記録されているカードをタブレット端末に提示して、ライダーと減点とをマッチさせる作業を行うことになった。これまで、トライアル競技といえばスコアカードを持って走るのが通例だったが、今年ライダーが持っているのは磁気カードだ。

ところがこの磁気カード、少なからずトラブルが起きる。特に開幕戦のスペインでは雨の影響もあって、磁気カードの読み取りがうまくいかない。そんなとき、オブザーバーは磁気カードの読み取りをあきらめて、手動でゼッケンを入力してスコアを記録していった。そういう例がいくらでもあったので、この時の藤波も、第12セクションのオブサーバーと話をして、手動で入力してもらうことにした。藤波は下見で出口まで歩いてきたが、磁気カードはオートバイといっしょにセクション入り口にあったからだ。

photo藤波がそうやって申告5点をもらっているのを見て、アレックス・フェレール、フランツ・カドレックの二人も同じように申告5点をして、先へ進んだ。と、第12セクションのスコアが空欄になっている。これはなにかのまちがいだろうと思ったが、主催者に確認したところ、磁気カードを提示しないのは認められないということで、カドレック、フェレールともに5点となってしまった。今年になって、カードなしでスコア入力してもらったことは何度もあった。そういって交渉をしたのだが、機器の不具合の場合はともかく、ライダーの都合でカードを提示しないのは規則上認められない、ということだった。藤波らの心情は理解できるけど、ごめん、認められない、ということだった。今後、スコア入力にカードが必須という申し合わせはより徹底をされていくのだろうが、その代償として、藤波はペナルティ10点を甘んじて受けることになった。差し引き、5点の追加減点だ。こうして、1ラップ目は、小計として出ている31点に10点を加えて、41点もの大量減点を食らうことになった。1ラップ目の順位は12位。11位のカドレックも13位のフェレールも藤波といっしょにペナルティをもらっているから、藤波のこの成績は第12セクションでのペナルティのせいとばかりはいえないようだ。

photo2ラップ目も、藤波は苦しみながらゴールを目指した。スタートの早い藤波らにはのスコアは、あとからくるグループのスコアが把握できていないから、実際のスコアより下位に沈んでいるように思えるのだが、今回はそれを差し引いても、究極的に厳しい戦いとなっているのは明らかだった。

2ラップ目、藤波の減点は23点。1ラップ目からは7点減って、ペナルティ分を含めると17点も減点を減らしてきた。2ラップ目の減点を2倍して結果表に照らしてみるとラガの後ろ、6位となる。調子が悪いとはいえ、このくらいがいつものよくないリザルトだ。このスコア、この成績は想定外だ。

あらためて試合を振り返り、ネットにあがっている動画などを見ると、停止の判定もラインの取り方も、藤波らのグループと後半のトップグループの間には、ずいぶんと差異があるのを発見した。これなら戦い方もあったといまさら気がつかされるところだが、それだけ、スタート順は重要だということだ。

雪辱を晴らすべき次戦はすぐ1週間後のポルトガル。せめてふつうに走れれば、結果はついてくるはずだ。

○藤波貴久のコメント

「最悪の結果となりました。とにかくマシンとの一体感がないまま、減点をどんどん増やしてしまいました。そこさえ解決すれば、日本GPの初日のような結果が出せるのは確認ができているので、とにかくそこに立ち戻らないといけません。ポルトガルでは、笑顔のトライアルを取り戻したいです」

World Championship 2018
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 16 26
2位 アルベルト・カベスタニー スペイン・ベータ 18 23
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ガスガス 20 23
4位 ハイメ・ブスト スペイン・ガスガス 24 24
5位 アダム・ラガ スペイン・TRRS 29 18
6位 ホルヘ・カサレス スペイン・ヴェルティゴ 46 16
7位 ジェイムス・ダビル イギリス・ベータ 47 17
8位 ミケル・ジェラベルト スペイン・シェルコ 56 15
9位 ブノア・ビンカス フランス・スコルパ 56 15
10位 ジャック・プライス イギリス・ガスガス 61 12
11位 フランツ・カドレック ドイツ・ガスガス 62 14
12位 藤波貴久 日本・モンテッサ 64 13
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 70
2位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ガスガス 63
3位 ハイメ・ブスト スペイン・ガスガス 61
4位 アダム・ラガ スペイン・TRRS 54
5位 アルベルト・カベスタニー スペイン・ベータ 46
6位 ホルヘ・カサレス スペイン・ヴェルティゴ 42
7位 ジェイムス・ダビル イギリス・ベータ 37
8位 藤波貴久 日本・モンテッサ 34