パリで3位表彰台に乗ってから約2週間後、Xトライアル最終戦はハンガリーの首都ブタペストで開催となった。
パリでタイトルを獲得したトニー・ボウは肋骨の治療に専念するためにこの最終戦は欠場、ジェロニ・ファハルドも出場しないということで(ファハルドは本来レギュラーメンバーではないから、ここまで全戦出続けていたのが不思議)、藤波にとってはいつもよりちょっとライバルが少ない戦いとなった。
1ラップ目は参加した9名が全員トライ。ここまでの4戦、藤波は常に最初の3人のグループに入っていて、最初のトライをして他のライダーに走りを見られてしまう立場にいたのだが、最終戦になって初めて、セカンドグループでの出走となった。今回の出走順は第1グループがアレックス・フェレール(なぜフェレールがトップなのかは不明だ)、ガブリエル・マルセリ、そしてこれまたなぜかミケール・ジェラベルト。そして第2グループがルカ・ペトレーラ、藤波、ジェイムス・ダビルとなっていた。いつもとちがって、4人のライダーがセクショントライをするのを見ていられるということになる。
とはいえ、試合を走るコンディションを作る上で、ウォーミングアップも欠かせない。今回は試合会場のすぐ近くにウォーミングアップエリアが設けられていたから、その点はライダーにとってはありがたかったが、それでも満足なウォーミングアップをするには、時間が圧倒的に足りない。試合前には45分しかウォーミングアップの時間がない。加えていつもはトライ直前のウォーミングアップエリアが気温が低い会場の外だったりするので、へたにウォーミングアップをすると体が冷えてしまう問い本末転倒もありえる。
藤波の予定としては、第1から第3セクションまではクリーンでいこうと考えていた。この3つをクリーンしておけば、そのあとのセクションで失敗があってもだいぶ楽な展開になる。たとえば最初のラップ(ラウンド1と命名されている)は6セクションを6分で走らなければいけない。去年まではタイムオーバーには30秒おきに減点が6分を過ぎたらその時点でトライ中のセクション以降は全部5点となる。たいてい最終セクションで6分を迎えるかどうか、ということになるのだが、3連続クリーンをしておけば、最終セクションで時間がなくなってもあわてずにすむということだ。3までをクリーンしていれば、第4セクションではちょっとトライしてみたいラインも見つけていた。
トップのフェレールは6セクションで21点、マルセリが25点、ジェラベルト12点、ペトラーラ21点と続いての藤波は、第1クリーンの後、第2、第3と1点で抜けた。目標の3連続クリーンはならなかったが、第3は5点となったライダーも多いから(その後にトライしたブストも5点だった)、まずまず満足の行く滑り出しだった。
そして第4は、見つけてあったみんなとはちがうラインでトライ、これも1点で抜け出ることができた。第5はインで5点になった。そして最終第6。実は今回の藤波は、第1から第3までを慎重に走っていて、少し時間がかかっていた。それで第6セクションでは、ちょっと時間がぎりぎりになってしまっていた。今年のXトライアルではマインダーはラインを指示したり残り時間を伝えたりというサポートができないので、会場の時計を横目で見ながら、頭の中で計算しながら走ることになる。これは忙しい。
ただし、この最終第6がたとえ5点でも、藤波の減点は13点となり、藤波に先んじて走った4人には優っている。つまり5位以内でのセミファイナル進出は決まっているわけだ。
今年のXトライアルでは、クォリファイの順位によって、セミファイナルの出走順が変わってくる。これが大問題だった。クォリファイで1位、4位、5位のライダーは、セミファイナル2組目を走る。2組目は1組目の走りを見ることができるから、その点は有利になる。しかしファイナルに進めるのは各組のトップただ一人。ボウが予選1位となることが多いXトライアルでは、2組目となると優勝争いに加わるのは限りなくむずかしいことになる。
今回はボウがいないから、その点でセミファイナル2組目でも可能性があるのだが、クォリファイの順位を思い通りにするのはこれまた限りなくむずかしい。藤波の後、藤波のスコアを上回ったのは、ラガとダビルの二人だけだった。つまり藤波は、クォリファイ3位ということになる。3位は、セミファイナル1組目を走る決まりだ。
セミファイナルでは、藤波はダビルが走っているのを見られるだけで、2番目にセクションにでなければいけない。せっかく3位になったのに、ちょっとがっかりといったところだが、藤波の予定としては、セミファイナルでも第1から第3をクリーンして、作戦を組み立てるのはそこからだと踏んでいた。
第1、第2はクリーン、第3は、最初のポイントで1点を失ったが、最後のポイントまで無難にマシンを進めていた。ところが最後にウーポンで飛び出すところで失敗して、5点になってしまった。
ここ最近、藤波は1速を使うことが多くなった。以前なら、1速はいらないんじゃないかというくらい、2速や3速を使っていたものだったが、ボウの影響もあって、こんなところでも1速を使うのか、というシーンでも1速を使っている。しかしことこの第3セクションに関しては、もし2速を使っていたら、まちがいなく登っていた。ちょっと手痛い5点となった。
この5点が、すべてを狂わせてしまった。第4はアンダーガードを接地させてしまい1点、さらにつま先の接地をとられて2点となった。第5は、インで落ちてしまった。そしてその時点で、6分の持ち時間は残り45秒くらいしかなかった。じっくり走ればクリーンができる、少なくとも1点か2点で抜けられるセクションだったが、落ち着いて走ることができなくなっていた。それでインで落ち、5点。第3の5点の後、3つの5点と2点一つで17点が藤波のセミファイナルのスコアとなった。
17点は、ミケール・ジェラベルトと5位争い。しかしジェラベルトの方が30秒ほどタイムがよく、5位はジェラベルトのものとなった。あとから走るライダーは、前のライダーの点数を把握しているから、同じような点数で競うことになったら、タイムを稼いだほうが勝ちということになる。最終戦の藤波は、6位ということになった。
全戦参加にはならなかった2018年Xトライアル。藤波のランキングは8位。それでもパリでの3位表彰台など、このシーズンの収穫は大きかった。次は本命のアウトドアシーズンの開幕だ。
「予選ではよかったのですが、準決勝でいい走りができなかった。まだまだインドアは克服しなければいけない課題が多いのですが、今年は2戦抜けているし、ランキング8位はしかたがないところだと思っています。それでも、第2戦のモンペリエ以外は準決勝に進んで6位以内にはいれたこと、トニーが本調子でなかったとはいえパリで3位にはいったことなど、ここ数年のXトライアルの中ではぜんぜんよいシーズンが遅れたと思います。乗ってても楽しかったです。Xトライアルは6分を一気に走るなど(ファイナルのみ1セクションずつ走る)の特異性もあり、これが体力的にはものすごく厳しい。そういうおもしろさはあるのですが、お客さんにとって今のシステムが本当にベストなのか、きちんと議論されていけばいいなと思っています」
Final(ファイナル) | |||
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1位 | アダム・ラガ | TRRS | 5 |
2位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 9 |
Round2(セミ・ファイナル) | |||
2-1位 | アダム・ラガ | TRRS | 3 |
1-1位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 8 |
2-2位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 8 |
1-2位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 15 |
2-3位 | ミケール・ジェラベルト | シェルコ | 17 |
1-3位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 17 |
Round1(クォリファイ) | |||
1位 | アダム・ラガ | TRRS | 5 |
2位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 9 |
3位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 10 |
4位 | ミケール・ジェラベルト | シェルコ | 12 |
5位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 17 |
6位 | ジェイムス・ダビル | ベ ータ | 17 |
7位 | ルカ・ペトレーラ | TRRS | 21 |
8位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 21 |
9位 | ガブリエル・マルセリ | モンテッサ | 25 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 106(106) |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 92(104) |
3位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 64(65) |
4位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 60(64) |
5位 | ミケール・ジェラベルト | シェルコ | 43(43) |
6位 | ジェロニ・ファハルド | ヴェルティゴ | 36 |
7位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 35(37) |
8位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 28(28) |
9位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 6(6) |
10位 | ルカ・ペトレーラ | TRRS | 3(3) |