2018年Xトライアル第3戦。第1戦を欠場した藤波は、今シーズン2度目のXトライアル参戦となる。インドアトライアルはあまり得意ではない藤波だが、前回の8位はあまりに不本意な結果だったから、もう少しよい成績をあげてはずみとしたいところだ。
クォリファイたるラウンド1を最初に走ったのはジェロニ・ファハルドだった。クォリファイを走る順番は、その時点でのランキング順となるので、ランキング5位のファハルドはもっとあとからスタートするはずなのだが、なにか裏があるらしい。
そういえば、ファハルドは今年のXトライアルはノミネートライダーに選ばれていない。藤波と同じく、ゲスト参加した大会で成績をおさめることで、次回の参加が可能になるという枠のはずだ。モンペリエでのファハルドは6位だったから、トゥールーズに出場の権利はなさそうなのだが、なにかの裏事情があって一番スタートで出場することになった模様なのだが、真相はわからない。ファハルドに続いて、今回初登場のジャック・プライスがクォリファイを走ることになった。その次が藤波の順番だった。
ファハルドが23点、プライスが25点。セミファイナルに進むためには、9人の参加者のうち、少なくとも3人に勝っておかなければいけない。あとから走るほうは手ごわいのがずらりと並んでいるから、少なくともこの二人には勝利しておかなければいけない。
ふたりの走りっぷりは、なかなかすさまじく、藤波としては、彼らには勝つ自信もあり、もっといい走りができる自信もあった。ところが藤波のクォリファイの走りは、あまりいいものではなかった。
第1セクションはクリーンはともかく、確実に抜けられる予定のセクションだった。そして最後の最後まで走っていながら、最後の小さなポイントでリヤタイヤを滑らせ、5点になってしまった。このセクションの最難関ポイントはクリアしていたから、この5点は惜しまれるところだった。ここは悪くても1点で抜けたかったセクションで、実際、その可能性は大きかった。
第2セクションはケーブルコアが主体のセクションだった。中盤に二段があって、これはむずかしそうだが、上がれるのではないかと考えていた。しかし、ここは登れず、第1、第2でいきなり10点となった。プライスは第2までで8点、ファハルドは7点だったから、ちょっと先行きが悪い。
ただしそれ以降は、上出来とはいえないながら、それなりに点数をまとめることができた。第3はクリーン、第4は1点。第5、第6は高いステアがあって、不安は大きかったから、ここは連続5点となっても、いたしかたないと思えるセクションだった。第5は、その後、ボウさえ5点となっている。第6はインに高いものがあり、そこさえ抜けられれば持ち時間にも余裕があったので、戦況はだいぶ有利になっていたはずだが、インで落ちて、これで藤波のクォリファイは終わった。
6セクションを走りきって、藤波の減点は21点。プライスとファハルドよりはよかったが、ファハルドと2点差では、残りの6人と勝負してトップ6に勝ち残ることができるかどうか、微妙なところだ。
藤波の計算では、15点くらいはいきたかった、というところだ。第1を1点、第2か第6のどちらかを3点で抜けていれば、それで15点となる。目標としては現実的な戦だったから、それに及ばずの21点は残念だった。
その後、ライバルが次々にクォリファイを走る。第2戦で2位となったジェイムス・ダビルは、藤波が1点で抜けた第4セクションで5点になった。ダニエルで飛んでいかなければいけないポイントでの失敗だったが、ダビルのクォリファイの減点は23点。このダビルの失敗で、藤波はクォリファイの上位6名に残ることができて、前回に続いてセミファイナル進出を果たすことになった。
6位でのクォリファイ通過はぎりぎりだが、クォリファイはぎりぎりでも、セミファイナルで勝てばファイナルにも進出できる。つまりクォリファイの6位から、極端をいえば優勝するチャンスもあるわけだ。気持ちをリセットして、セミファイナルに臨んだ。クォリファイ6位のハンディとしては、セミファイナルを真っ先に走らなければいけないことだ。
セミファイナルでの藤波の相手は、アダム・ラガとブノア・ビンカス。セミファイナルは点数いかんにかかわらず、勝利したものがファイナルに進むことになっている。
トップバッターだから、誰の走りも参考にせずに6つのセクションを走る。ところが第1セクションでいきなり5点になってしまった。ここはフロントを上げて飛び降りるやり方と、アンダーガードを接地させて降りる方法があり、藤波はボウと相談して、取り降りるほうを選んだ。しかしこれがうまく飛び降りられずに5点になったものだ。ラガとビンカスは確実に下ろして2点で抜けている。
第2セクションは高さがあった。ここは成功する可能性がごく低い。とはいえ、トライはしなければいけない。モンペリエ大会の時、望みのないセクションをさっさと5点になったところ、次からは罰金が科せられると警告された。Xトライアルはショーイベントでもあるので、見込みがないからといって走らない選択はないし、全力で走る姿勢も必要だ。
それでも、いけないものはいけない。第2セクションは5点。第3は2点、第4は確実に走って1点。セクションはクォリファイと同じものだが、入口と出口が反対になっている。第5は、途中までは行けていたので、ちょっと惜しい結果となった。第6は、インが上がれずに5点となった。
藤波は23点。ビンカスは20点、ラガは15点で、ファイナル進出の望みは断たれた。あとは、クォリファイのもう1組、ボウ、ミキュール・ジェラベルト、ハイメ・ブストの対戦を待ち、それぞれのライダーの減点数によって3位から6位までの順位が決まることになる。
セミファイナルの2組の結果は、ボウ11点、ジェラベルト22点、ブスト23点となった。ジェラベルトには1点差、ブストとは同点だ。セミファイナルの6セクションの走破タイムを見ると、藤波は4分38秒3、ブストは4分48秒5。約10秒の差で、藤波は5位を獲得することができた。セミファイナルを走ることもでき、モンペリエの8位からは、大きくポジションを復活させてきたことになる。
この後は、バルセロナ大会での出場が決まっているが、今回ジェラベルトに敗退した藤波は、次のストラスバールには出場しない。ワイルドカード枠の藤波は、同じワイルドカード枠のジェラベルトと、出場枠を争わなければいけないことになっているのだ。
バルセロナ大会のあとは、もう1戦ほどは出ることになりそうだが、ワイルドカードの扱いでもあり、予定はまだ定かには決まっていない。藤波貴久のXトライアルは、2018年はちょっとむずかしいことになっている。
「今回はクォリファイで6位となり、セミファイナルに進むことができて、5位を得ることができました。でもクォリファイを走り終えた時点では敗退を覚悟していたし、セミファイナルでもいい走りができた感触とはほど遠いものでした。不可能と思えるような高さのあるものがいけないのはある程度はしかたがないとあきらめもつきますが、今回は確実に走れば1点とか2点で抜けられそうなところで5点となっているケースがいくつかあって、そこが心残りです。全戦出ていないということもあり、インドアで自分の思ったような走りを披露するのは、やっぱりむずかしいな、という感想です。走る限りは全力を尽くしたいですが、いまのところはちょっと厳しさを実感してしまっています」
Final(ファイナル) | |||
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1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 3 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 20 |
Round2(セミ・ファイナル) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 11 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 15 |
3位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 20 |
4位 | ミキュル・ジャレバート | シェルコ | 22 |
5位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 23 |
6位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 23 |
Qualification(1ラップ目) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 8 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 11 |
3位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 13 |
4位 | ミケール・ジェラベルト | シェルコ | 14 |
5位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 16 |
6位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 15 |
7位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 23 |
8位 | ジェロニ・ファハルド | ガスガス | 23 |
9位 | ジャック・プライス | ガスガス | 25 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 60 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 42 |
3位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 26 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 22 |
5位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 21 |
6位 | ミケール・ジェラベルト | シェルコ | 16 |
7位 | ジェロニ・ファハルド | ヴェルティゴ | 16 |
8位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 9 |
9位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 3 |
10位 | ホルヘ・カサレス | ヴェルティゴ | 3 |