2018年Xトライアルは、2017年12月から開幕している。その緒戦はフランスのベンデで開催された。藤波貴久は、これには出場していない。同じ週末、日本でレーシングサンクスデイが開催されていてそれに参加していたのだが、今年はXトライアルからのライダーへのオファーが遅れていて、藤波には全戦参加のオファーが届かないままに開幕となっていた。ただし今年は、全戦出場しなくても1戦をのぞいたポイントでランキングが決定するということで、その点では1戦の欠場は大きなハンディではない。
あらためて藤波に出場のオファーがあったのが第2戦のモンペリエ大会。くしくも大会開催日の1月13日は、藤波貴久の38回目の誕生日でもあった。
2018年のXトライアルは、これまでとちょっとやり方がちがう。前回までの成績順などの下位のライダーからクォリファイたるラウンド1を走る。6セクションを一気に走り、その間の時間も計測されて、同点の場合はタイムの速い者が勝ちとなる。持ち時間は6分。6分を過ぎたら、そのとき走っているセクションと、それ以降のセクションが5点となる。途中でマシンが壊れたりなどしても、時計は止まらない。
このラウンド1の上位6名が、次のラウンド2に進出する。ラウンド2はラウンド1と同じく、6セクションを一気に走る。ただしセクションは主としてラウンド1の逆走となり、3人ずつに分かれて走る。この3人の組み分けは、ラウンド1の1位、4位、5位が2回目、ラウンド1の2位、3位、6位が1回目となっていて、それぞれヒート1、ヒート2と命名されている。この両ヒートの勝者が、決勝であるラウンド3に進出する。もしもヒート1の3人の減点がそろってよく、ヒート2の3人の減点がそろって悪かったとしても、決勝に出られるのは両ヒートの勝者のみだ。
ファイナルは、1セクションずつの対戦式。同じセクションを、主としてラウンド2で使ったセクションを使うが、場合によっては往復として使うこともある。これまで、Xトライアルのルールでは、セクションの持ち時間を過ぎたら30秒ごとに1点ずつ減点が加算されていたが、今年からは一気に5点になるという。
藤波は今回が初出場だから、同じく初出場のアレックス・フェレール、ミキュル・ジャレバートに次いでラウンド1に登場した。この二人の減点が14点。ラウンド2に進出するには、振り落とされる3人に混ざらないようにすればよいわけなので、まずはこの二人に勝つのが一つの条件になる。二人は第4をクリーン、第5が5点、第6がクリーンは同じで、第1から第3までが1、5、3と、3、1、5。この3セクションで勝負すれば、ラウンド2へ進める道は見えてきそうだ。
今年のXトライアルでは"美しい"走りが要求されるようになった。一時は芸術点が導入されるなどという話があったのだが、実験の結果、(やっぱり)現実的でないことがわかって却下。しかしアンダーガードの接地や、つま先の接地などは特に厳しくチェックされて、1点減点と採点される。
藤波はまず第1セクションで、予定通りアンダーガードをかけて登り、そのままアウト。第2は3点で抜けて、これもまず予定通り。第3は5点となってしまったが、1点、3点、5点でここまで9点。このあと第4は予定通りクリーン、第5は長くてむずかしくて、よほどうまくいっても2点、それもタイムオーバーのリスクがある設定だった。ならばと、入口ですぐに5点になった。ここで5点になれば、ジャレバートとフェレールと同点の14点。同じ5点になるなら、ライバルより早くゴールして順位を稼いだほうがいい。藤波のタイムは4分43秒7、フェレールは5分34秒4で、ジャレバートは5分25秒。この二人に勝利しておけば、チャンスはあると思った。
その後、10点内外の攻防が続いていたが、ガスガスに移籍していったハイメ・ブストが第3セクションでクラッシュ、マシンをスペアに取り換えて続きを走ることになった。ところがこのスペアが思ったように走ってくれないらしく、第5、第6と連続ミス、なんと前回大会で優勝争いをしたブストが、最下位に沈むという番狂わせとなった。
これで藤波はラウンド1での6位を確保したはずだったが、結果が出てびっくり。藤波の減点は14点ではなく15点になっていた。15点ではラウンド2に進むことはできないし、ジャレバートにもフェレールにも勝てない。藤波が予定通りアンダーガードを引っかけて登った第1セクション、藤波の心積もりではアンダーガードをかけた1点のみだったのだが、採点ではアンダーガードをかけた1点に加えて、マシンを出すときにつま先がマシンを押し出した、という判定だ。今年のXトライアルでは例年以上に、アンダーガードの接地と、その際につま先が接地することを警戒してライディングしなければいけない。それが大きな教訓として残ることになったトゥールーズ大会となった。
「Xトライアルは、けっして得意ではないので、好成績はあまり望めないのですが、それでも8位になるとは思っていませんでした。今回は作戦を立てて、その通りに走って6位以内に入る予定だったのですが、採点の読みまちがいで残念なことになりました。トニーにもアンダーガードを引っかけたときにはつま先に気をつけろといわれていたのですが、思っていたよりもはるかにその採点が厳しかったということです。次はアンダーガードを引っかけたときには、つま先で乗ったりとか、対策を講じていかなければいけないと思っています」
Final(ファイナル) | |||
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1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 8 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 13 |
Round2(セミ・ファイナル) | |||
1位 | アダム・ラガ | TRS | 11 |
2位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 12 |
3位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 14 |
4位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 16 |
5位 | ミキュル・ジャレバート | シェルコ | 16 |
6位 | ジェロニ・ファハルド | ガスガス | 18 |
Qualification(1ラップ目) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 1 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 2 |
3位 | ジェロニ・ファハルド | ヴェルティゴ | 6 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 9 |
5位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 13 |
6位 | ミキュル・ジャレバート | シェルコ | 14 |
7位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 14 |
8位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 15 |
9位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 16 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソルHondaチーム | 40 |
2位 | アダム・ラガ | TRRS | 27 |
3位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 19 |
4位 | ハイメ・ブスト | ガスガス | 16 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ヴェルティゴ | 14 |
6位 | ブノア・ビンカス | スコルパ | 14 |
7位 | ミキュル・ジャレバート | シェルコ | 7 |
8位 | アレックス・フェレール | シェルコ | 3 |
9位 | ホルヘ・カサレス | ヴェルティゴ | 3 |
10位 | マテオ・グラタローラ | ガスガス | 2 |
11位 | 藤波貴久 | レプソルHondaチーム | 2 |