2017年 世界選手権第10戦(最終戦)イタリア

2017年9月17日/トレント(イタリア)

シーズンの総仕上げは、なんと10位というあり得ない結果に

photoアメリカ、チェコと、不本意な戦いを続けてしまった藤波貴久。最後の決戦は、北イタリアのオフロードパークでの戦いとなった。

予選は6番手。最後くらいは一発勝負をかけていい結果を狙いたいという思いもあったが、途中あわや足が出そうになる場面もあって、タイムは平均的なものとなった。7番手にジェロニ・ファハルドがつけている。ファハルドとはランキング4位争いのライバルだから、そのファハルドの直後でトライができるというこのスタート順は、悪くないともいえる。

しかしトライアルが始まってみると、近来まれにみるというか、藤波の長い世界選手権経験でも例のないような失敗の連続となった。雨が残る朝のうち、表土が滑ってコンディションはむずかしかったのにはちがいないが、トライするセクション、ことごとく5点というのは例がない。

ジェイムス・ダビルが第4セクションまで連続5点、ホルヘ・カサレスが第5セクションまで連続5点と、それぞれにてこずった今回のセクションではあったが、なんと藤波は、第7セクションまで連続5点。いきなり35点の大量減点を築いてしまった。最終結果を見ると、このあとすべてのセクションをオールクリーン下としても、かろうじて4位にしかなれない。この序盤の失敗が、今回のすべてだった。

ダビルやカサレスのスコアを見ても、序盤のセクション群で5点を取りやすいのは認めなければいけない事実だった。それでも、第6セクション以降はきっちり走ればクリーンができる設定で、トップライダー以外でも抜けているライダーが多かった。

藤波も、そこでうまく切り替えができて追い上げができれば、あるいは結果もちがってきたかもしれないのだが、今回の藤波には、その権利も残っていなかった。アメリカ以後、どうも藤波本来の戦いができていない。チェコは、それでも5位となったが、そのラッキーがなかったイタリアでは、本調子が出ないままの結果がリザルトとなった。

アメリカ以後、悩み始めたセッティングは、結局最後まで決定打が決まらないままシーズンを得ることになった。

藤波の調子を狂わせた新しい仕様は、とにかく走破力が高い。トニー・ボウの抜群の走破力は、そのライディングスタイルももちろんだが、いまのセクションにはこのマシンでなければ行けなくなっているのかもしれない。しかしその反面、とにかく今までの藤波のとはちがう次元のライディングスタイルが要求される。見ている限りはわからないかもしれないが、それがほんのわずかなところで、ほんのわずかなとっさのタイミングでスタイルのちがいが露呈してしまう。

藤波といえば、滑るところは得意なタイプのライダーだ。ところがマシンとの対話ができない現状では、得意なはずの滑るところでの失敗が目立っている。高さのあるステアケースを華麗に飛び上がり、しかしその先のマシンコントロールに失敗して5点となるようなケースも少なくなかった。とにかく今まで通り、マシンとふつうに接することができるようにさえなれば、もうちょっとふつうの成績が出るにちがいないのだが、残念きわまる。

後半、藤波は誰よりも早いペースでトライを進めていった。トップ争いをする面々をはるか後方に追いやって、イタリアのファンに声援を求めながら2017年最後のトライを噛みしめていく。天気予報では、午後にもう一雨来るということだった。雨が降る前に藤波がゴールして、トップグループがトライ中に雨が降るようなことがあれば、試合の結果にももう一波乱あるかもしれない。そこに望みを託した藤波だったが、しかし雨はがまんをしてしまった。表彰式の頃に降り出した雨は、藤波のラッキーにはつながらなかった。

10位。その結果はあまりにも残念なものとなった。ファハルドを破ればランキング4位獲得という見込みは夢と散った。ランキング5位。

藤波は1996年に世界選手権挑戦を始め、そのデビューシーズンにランキング7位となっている。翌年1997年には1勝をあげて早くもランキング4位を獲得した。これ以降現在まで、一度もランキング5位以下に落ちたことがない。21年連続のランキング5位以内ということだ。22年目のシーズンを終えた藤波に、この功績を讃えてくる声もあったが、今の藤波にとっては、23年目の2018年をどう戦うか、それまでになにを準備するかがなにより重要になっている。

○藤波貴久のコメント

「今回はさんざんでした。いろんなことがあって、いろんないいわけがをしたいけど、成績が成績だから、しょうがです。今は落ち込んでいますが、こういういやなことがあったあとは、ぼくは基本負けず嫌いなので、このままで終われないという思いが強いです。これをバネにして、来シーズンをしっかり戦いたいと思います。しかしとにかく操れていない、うまくマシンに乗れていない、対話ができていないので、まずそこをなんとかしたいと思います。22年目の世界選手権となって、そろそろ終わりか、などという人もいると思いますが、こういう結果になって、ますますこのままでは終われないという気持ちです。しかし今は、あり得ない結果で気分が悪い、というのが正直なところです」

World Championship 2017
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 18 22
2位 アダム・ラガ スペイン・TRRS 27 (20
3位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 30 19
4位 ジェイムス・ダビル イギリス・ガスガス 39 18
5位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 48 16
6位 フランツ・カドレック ドイツ・ガスガス 51 9
7位 マテオ・グラタローラ イタリア・ガスガス 58 13
8位 ホルヘ・カサレス スペイン・ベータ 61 13
9位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 62  14
10位 藤波貴久 日本・モンテッサ 63  14
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 192
2位 アダム・ラガ スペイン・TRRS 164
3位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 133
4位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 119
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 112
6位 ジェイムス・ダビル イギリス・ガスガス 102