スポーツ7プロモートとなってのトライアルGPも、今回のフランス大会が終了すると、全体の半分を消化したことになる。新しいシステムの導入などがあり、プロモーターとライダーの意見の橋渡しをする役割が必要だということになって、今回から藤波がその役を任ずることになった。いわば、選手会長だ。
その最初の仕事が、ホルヘ・カサレスがセクションの下見のルールを破った件になってしまった。金曜日の下見は、セクションに入ることができないのだが、カサレスはこの約束を破ってセクション内で下見をしていた。ペナルティ20点も前から決まっていたことで、藤波がカサレスに20点を与えたわけではないのだが、選手会長はこんなとき、選手の不満の矢面に立ってしまう。
選手会長としては、カサレスの件というより、その要因に下見中にセクションに入れないこと、大会当日の持ち時間が慢性的に足りないこと、予選による理不尽なリスクと観客サービスの低下などがあることをプロモーターに提言しているところだ。特に持ち時間の不足から来る、ラップ後半の申告5点については、お客さんの前にライダーが現れないのだから、プロモーションとしても打撃は大きい。近日中に、なんらかの解答が届くということだが、どうなるだろうか。
さてルルドの戦いだ。会場入りしてから、ずっとしとしとと霧のような雨が降っていた。気温も18度くらいと、かなり涼しい。前の週のアンドラとは、まったくちがう気候だった。山の中の谷のエリアなので、だいたいこういう気候なのかもしれない。
金曜日に下見をした際には、それでも路面はドライだった。セクションの外からざっと確認した限りでは(それ以上は大会が始まってからしか見られない)、雨が降ればむずかしいが、降らなければ簡単なのではないかという予測だった。むずかし目のステアが全部で3個所くらいあり、勝負どころはそれくらいしか思いつかない。なので選手側からは、あまりセクション変更はしないで試合に臨みたいところだったが、金曜日の午後に雨が降ったため、セクションは若干簡単に変更されていた。
はたして1ラップ目はものすごく滑るコンディションに苦戦するライダーが多かった。
勝負どころと目されていたのは、第2、第4のステアと、第7、第8あたり。そして第11セクションのヒルクライム。いずれも、上がるか落ちるかという設定の難セクションだった。
懸案となっている持ち時間については、今回は第1セクションから渋滞があった。電動バイクのクラスが加わっていて、いつもより台数も多い。仮に下見をまったくしないでトライ待ちに並んだとしても、15分や20分は待ってしまう。下見なしでトライするのは危険すぎるから、最低20分は渋滞待ちをしなければいけないことになる。
こうしてセクションを回ってたら、第3セクションですでに時間がないということになった。第12セクションを出たところでは、残り時間がたったの2分になっていた!
第13と第14はざっと下見をしていた段階でむずかしいとわかっていたので申告5点でエスケープした。最終15は、第1セクションの隣にあって、第1の渋滞の時にちらちらと下見ができていたから、その記憶が頼りだ。時間がないから、たとえマインダーが間に合わなくても、たったひとりでトライしようと思っていた。
しかし途中、2m弱の大岩があって、そこで落ちた。自信はあった。落ちる予定ではなかった。しかし時間がない中、最終セクションまでを前回で走ってきていて、エンジンがヒートしていたというのも理由の一つにあったかもしれない。そしてこの5点が、結果的にはこの日の勝負を決定づけることになった。
2ラップ目、雨は止んだ。もともと雨というより霧だから、地面はそれほどびちゃびちゃにはならない。減点は、いよいよ少なめになってきた。たとえば第3セクションは、1ラップ目にはブストがクリーン、ボウが1点、カールソン(!)が3点で抜けた他は、全員が5点という難セクションだった。しかし2ラップ目は、5点はたったの二人(カールソンもなんと5点だった)、クリーンしなければ勝負のチャンスがないほどのセクションに激変していた。
2ラップ目、減点は大幅に減るにちがいない。しかしここまで、トップグループのみんながみんな、減点を減らしてくるとは、藤波にとっても、やや想定外だった。
藤波は、慎重にセクションをこなしていく。1点の足つきがやや多かったが、その中には、第7セクションなど、ゲートに接触の心配があったので、わざわざ足をついてゲートを回避したというケースもあった。しかし2ラップ目の藤波には、ひとつの5点もない。5点どころか、3点も2点もない。1点ばかりが6つで6点のスコアだった。
途中、ファハルドが第13セクションで5点になったのは知っていたから、むずかし目の第14セクションをなんとしてもクリーンすれば、打倒ファハルドはほぼ確定的となる。この第14が、この日の藤波のハイライトでもあった。
藤波はゴール後、あとから来るボウ、ラガ、ブストを待つ。ボウとラガの1位2位は点差が開いているが、ブストとは数点差で、ブストの結果次第では藤波が3位表彰台という可能性もあった。
藤波が集中してクリーンを勝ち取った第14セクション、ここはほんのちょっとのミスで5点になれるところだったから、このところ気を良くしているブストも失敗するかもしれない。しかしブストはこれをクリーン。藤波に4点差をつけて、自身2度目の表彰台を確保した。
後輩の表彰台獲得を見守りながら、藤波は4位。この結果、ブストがランキング3位に浮上して、藤波はブストと同点のランキング4位ということになっている。選手権は中盤にさしかかっているが、ランキング争いはまだまだ厳しい。
「1ラップ目10セクションまでは悪くなかったと思います。でも11セクションの登りは、下で振られて5点になってしまった。あの5点が痛かったですね。でも今回の4位は、悪くない結果だったと思っています。ランキング争いも、ここで3位と同点の4位というのは、悪くないと思います。ハイメは、2度続けて表彰台に上ったことで、もともと実力のあるヤツでしたから、これで皮がむけたというか、これからは表彰台争いの常連になってくると思います。育てる側としてもうれしいし、ライダーとしてのぼくのモチベーションもあがってきています」
日曜日 | ||||
---|---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 15 | 23 |
2位 | アダム・ラガ | スペイン・TRRS | 31 | 19 |
3位 | ハイメ・ブスト | スペイン・モンテッサ | 43 | 16 |
4位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 47 | 12 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・ヴェルティゴ | 47 | 12 |
6位 | アルベルト・カベスタニー | スペイン・シェルコ | 67 | 9 |
世界選手権ランキング | ||||
1位 | トニー・ボウ | スペイン・モンテッサ | 95 | |
2位 | アダム・ラガ | スペイン・TRRS | 82 | |
3位 | ハイメ・ブスト | スペイン・モンテッサ | 61 | |
4位 | 藤波貴久 | 日本・モンテッサ | 61 | |
5位 | ジェロニ・ファハルド | スペイン・ヴェルティゴ | 60 | |
6位 | アルベルト・カベスタニー | スペイン・シェルコ | 57 |