2016年 世界選手権第12戦・第13戦イギリスGP

2016年7月16日〜17日/トング

1ラップ目と3ラップ目が手痛く両日5位に

photo■土曜日

初めて世界選手権が開催されるトングなる町での世界選手権。ここはジェイムス・ダビルの地元ということで、ダビルの家から15分しかかからないという立地とのことだ。

人工的な障害物が多く、いつものイギリス的なセクションからはちょっと印象が異なる設定となっていた。とはいえ、前日に雨が降って、コンでションはいくぶん悪化していると思われた。雨が降らなければ簡単め。失敗すれば簡単に5点となるセクションが多いというのが、前日に下見した多くのライダーの共通した認識だった。

第1セクションから第5セクションまでは川の中から岩を上る、などの設定。ちょっとした失敗が5点につながる。第6以降は人工的セクションが続いている。

藤波はまず第2セクションで5点となった。ここはラガも5点となっている難セクションではあった。藤波は、リヤを滑らせてしまい、それに対応して思い切り後ろ加重で岩にアプローチしていた。その結果、フロント加重がなくなってしまって、フロントのコントロールができなくなってしまった。そしてテープの外にフロントタイヤが出てしまったという失敗につながってしまった。

その後の藤波は、第8セクションまでクリーンを出せないトライが続いた。うち3セクションで5点となった。クリーンが出ないのは、ちょっとした不運もあったが、なによりマシンとの一体感がない。思っている走りができず、開けすぎたり、かといえば開けなすぎたり、どうにもぎくしゃくしたトライが続いてしまった。

前日に練習した時には、雨が降っていて気温が15度と、ちょっと寒かった。対して試合当日は晴れた。セッティングは前日の状況に合わせていたから、どちらかというと、雨仕様の滑る仕様で仕上げられていた。それでドライとなった当日のコンディション下では、サスがぴょんぴょんはねてしまって失敗につながっていたのかもしれない。

それを指摘してくれたのは、藤波のメカ、ジョルディだった。金曜日に練習する以前のセッティングに戻してみたらどうかという提案だった。藤波とすれば、サスのセッティングがそこまでライディングやスコアに影響をしているとは思えなかったのだが、なにかを変えることも必要だった。

しかしてセッティングを変えたのが功を奏したか、藤波の調子は、少しずつ上向いた。2ラップ目のスコアは1ラップ目の半分に近かったから、最初からこの調子ならと思われた。

前回ベルギー大会で5位だった藤波は、ファハルドやカベスタニーよりもスタートが早い。いっしょに回っていても自分のライディングを見られて情報を与えるだけなので、藤波はダビルといっしょにトップグループよりは先行して走っていた。

情報として、ダビルとボウはすごくいい、という話を聞いていたし、実際、藤波の目の前を走るダビルは好調だった。地元中の地元だから、地の利もあるのだろうが、それにしてもうまい。ボウも調子がいいので、さすがに優勝争いには至らなそうだが、ラガよりはスコアもよさそうだ。となると、表彰台はこの3人でほぼ決まってしまう。

ランキング争いのライバル、カベスタニーは藤波の後ろだから、なかなか情報は伝わってこないが、このままのペースで走れば挽回も可能そうだ。

photo3ラップ目。1ラップ目、2ラップ目と5点だった第2セクションをクリーンし、藤波の追い上げが始まった。同じく、2ラップ目までは5点だった第7、第8をクリーンし、2ラップ目よりさらにいいスコアをマークできそうになった矢先、第9セクションのどろどろの登りで5点、そして続けて、連続3段の10セクションで5点となった。

終わってみれば、4位のカベスタニーに2点差。藤波には1点のタイムオーバー減点があったので、足つき減点だけで見れば、わずか1点差だ。

それでも、ランキング3位を守るという意味では、カベスタニーに詰め寄られたのが2点だけだった、というのは、不幸中の幸いだった。

■日曜日

明けて日曜日。土曜日の反省点として、とにかく1ラップ目が悪すぎた。チームで対策案をいろいろ悩んではみたものの、抜本的な解決策もなく、淡々と走るしかない、ということでミーティングは終了した。土曜日は土曜日、日曜日はまた新しい日が始まる。セクションは、土曜日に比べて、少し難易度が上げられていた。

1ラップ目は、3位につけた。この日は全体に接戦だったので、3位といっても安心できるものではないが、ついきのうの状態を思えば、今日はよい日になりそうな予感だった。藤波の1ラップ目の18点は、ボウの10点、ラガの15点に次ぐ3位。ファハルドが20点、カベスタニーが21点、ブストが23点、ダビルが24点と5点内外に多くのライダーが引きめきあっていた。

藤波とすれば、18点はベストではなく、3つあったうちの5点を、あとひとつくらいは減らせたのではないかと考えている。あと5点少ないとすると、ボウに3点差の2位となる。

2ラップ目、しかし5点の数は1ラップ目と同じ。クリーンしていた第7で5点になり、第6から第8まで5点続きということになってしまった。それでもチームからは、3位には入れる、と言われていた。トップのボウと2位のラガは調子を上げているが、それ以降はつばぜり合い。2ラップを終えたところでのスコアを見てみると、藤波が37点、ファハルド37点、カベスタニーが40点となっていた。

実は2ラップ目の藤波には、マシンの変調というハプニングもあった。クラッチが調子を崩して、フィーリングが変化してしまった。そのままがまんして走るか、パドックに帰ってパーツを交換するか、さて。

藤波とすれば、マシンがちゃんと走れば絶対に行ける、という自信があった。それで一度、パドックに戻ることにした。作業自体はスムーズに進められたので、それほど遅れなく戦列に復帰することはできた。

3ラップ目、藤波は点数を把握しながら、3位を狙っていくことにした。チームは藤波に対して、聞けば戦況を教えてくれるが、聞かなければ黙っている。戦況を把握するかどうかは、ライダー次第だ。この日の藤波は、戦況を聞いて試合を進めた。第2セクションで、一番後方を走っていたボウを抜いて、ファハルドとカベスタニーの後ろについた。マシンの調子はよくなっていたが、時間はちょっと厳しくなっている。この日の当初の目標だった、淡々と走ることもままならない感じになってきた。あわただしくセクションをこなしていくしかない。

結果、藤波の3ラップ目は、5点が5個も積み上がってしまった。第6では、沢から上がるところで5点となった。第8では、難所の手前で5点となった。第9では、難所のどろどろは上がって、その先のポイントで5点だった。

雲行きがあやしくなってきたところで、駄目押しとなったのが最終セクションだった。セクションに入る時点で、すでに持ち時間はなくなっていたから、少しでも早くセクションを走ってタイムオーバー減点を減らさなければいけない。それがいけなかった。セクション途中でからだを休めるタイミングがとれず、手が外れてしまって、5点となった。

4位のファハルドに9点差、3位のカベスタニーには10点差。最終セクションと、あとひとつ5点を克服していれば、表彰台は確保できていた点差で、そしてそれは充分可能だったと藤波は考えている。予定通り、淡々と走れさえすれば、3位表彰台にはのれる、という再確認はできたものの、連続5位はくやしい結末となってしまった。

photoなおイギリス大会の土曜日、ボウが優勝したことで、モンテッサは通算200勝をあげることになった。表彰台にはモンテッサチームが称賛され、200勝に貢献したライダーも壇上に上がることになった。壇上に上がったのは、トニー・ボウ、藤波貴久、ドギー・ランプキン、マルク・フレイシャ、マルク・コロメ、マルコム・ラスメルの、往年、現役のモンテッサライダーたちだった。

○藤波貴久のコメント

「ランキング3位を守るという点では、カベスタニーに6点点差を縮められたものの、まだリードはありますが、油断はできません。成績もですが、戦い方が納得いくものではなかったので、最終戦はきっちり戦えるように、仕上げていきたいと思います。どうも戦況を聞きながら戦うといいことがないので、次回はもう聞かずに走ります」

World Championship 2016
土曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 35  24
2位 ジェイムス・ダビル イギリス・ヴェルティゴ 42  18
3位 アダム・ラガ スペイン・TRS 59  19
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 55  18
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 61  19
6位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 63  18
7位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 81  15
8位 フランツ・カドレック ドイツ・ガスガス 82  14
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 20  28
2位 アダム・ラガ スペイン・TRS 40  23
3位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 54  19
4位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 55  21
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 64  21
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 70  17
7位 ジェイムス・ダビル イギリス・ヴェルティゴ 81  14
8位 エディ・カールソン スウェーデン・モンテッサ 85  11
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 249
2位 アダム・ラガ スペイン・TRS 218
3位 藤波貴久 日本・モンテッサ 169
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 155
5位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 148
6位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 143