2016年 世界選手権第5戦・第6戦ドイツGP

2016年5月28-29日/ゲフレース

あと一歩なれど表彰台を逃した2日間

photo■土曜日

ドイツのゲフレース。藤波は、何回かここを走ったことがある。最後に走ったのは2011年だったろうか。それ以前、2000年には黒山健一選手の優勝も目撃している。今回はぜひ、藤波自身が吉報を持ち帰りたいところだ。

会場は、なかなか滑りやすいロケーションとなっている。セクションそのものは、前回走ったときと比べて、それほど変更はないようだ。ライダーのテクニックが向上していることを考えれば、セクションはやさしいともいえるし、しかし前回はストップルールの元での勝負だった。今回はノーストップだから、難易度は増しているともいえる。

加えて、前日には雨も降った。ここは雨が降るとてきめんに滑ってむずかしくなる。当日は試合前半は雨も止んでいたが、後半になって雨がぱらつき出して、セクションもちょっとこの影響を受けることになった。

藤波自身はといえば、今回はあまり調子がいいとはいえなかった。それでも、中盤までトップを走っていたりということもあって、上位入賞の可能性があった大会だった。藤波自身は途中経過を把握しないで闘うのを常としているが、日本GPで3位だったので、トライ順が最後の方になっている。なので知ろうとしなくても、だいたいのポジションはわかってしまう。

ところが後半、誰も失点しないようなセクションで5点となった。それも第7、第10と二つにわたっての失敗だった。これで10点を加算して、1ラップ目の順位はトップに6点差の4位となった。

第7は3段4段と続くアタックで、いければクリーンだし、タイミングが合わずにここをクリアできなければあっさり5点になるというセクションだった。そして藤波は、攻略のタイミングに失敗したのだ。第10は、雨が降り始めた直後のトライで、滑り始めた路面コンディションに対応できなかったのが敗因だった。

しかし結果を見ると、この日の藤波の敗因は2ラップ目にあった。大きな失敗があった1ラップ目より、2ラップ目はさらに5点減点を増やしてしまっている。

photo実は2ラップ目、藤波は第5セクションで足を強打して、これがなかなか痛かった。去年おととしは、最初からこんな痛みと闘っていたわけで、それに比べればなんということはないのだが、それでも2ラップ目の間は打ち身の痛みと戦いながらトライを続けることになった。

2ラップ目、トップ集団は1ラップ目同様か、もしくはより減点を減らしてきているので、上位を追撃したい藤波には手痛い2ラップ目となった。2ラップ目、トップはアルベルト・カベスタニーで21点、2位争いがトニー・ボウとアダム・ラガが同点で28点。それに対して4位の藤波は43点だ。

3ラップ目、雨が降り始めた中、藤波は自分のベストスコアをたたき出した。3ラップ目だけでいえば、ラガと同点でトップのスコアだ。足の痛みは、すでに消えている。去年や一昨年は、おおきくちがうのが、この点だ。しかし追い上げにはならず、4位のままゴールすることになった。

■日曜日

明けて日曜日。やはりスタートはよくない。土曜日の鬼門は、第3セクションだった。3ラップ目に2点で抜けられているが、うまく走れた実感はなく、終わってからボウとブストと3人で攻略法を検討に出かけたりしたのだが、日曜日もまたここが鬼門だった。終わってみれば、第3セクションは3ラップとも5点に終わっている。

泥と岩で、とにかくすごい斜度がついている。ここでつまずいたところに、1ラップ目は第4セクションで大クラッシュをした。藤波自身は問題ないのだが、なんとエキゾーストパイプがぺっちゃんこになって走れない状況に陥った。メカニックがすぐにパドックまで戻って部品を調達しマシンを修復。戦列に復帰した第5セクションでは、2点で抜けたと思いきや停止5点を取られていた。なんと、第7セクションまで連続5点という、とんでもないスコアとなってしまった。

終わってみれば、この5つの5点のうち、ひとつでもふたつでもクリーンなら、クリーンといわずとも何点かで抜け出ていられたら、結果はちがっていたにちがいない。日曜日の藤波は5位に終わったが、4位まではたったの3点差、3位表彰台待ても6点差でしかなかった。

2ラップ目、藤波は調子をやや取り戻して、1ラップ目のトップ争いと同じようなスコアをマークした。しかしトップのボウは、一桁減点をマークして、さらに調子を上げている。藤波の復調は、3位争いをかき回せるほどには至っていない。復調したといっても、2ラップ目3ラップ目にはミスもあり、ベストとはいいがたい。世界選手権は、自分のベストが出せて初めて戦いの仲間に入れてもらえる舞台だ。ふつうの調子では、ふつうの結果しか届かない。

photoセクションは、どこでも気が抜けないもので、体力的にはともかく、精神的にはとても厳しい戦いとなったという。この状況下では、ちょっとした失敗で大きく順位を落とすことも考えられた。事実、土曜日に3位表彰台に上がったカベスタニーは、この日は11位まで低迷している。

2日間を4位と5位。最低でも、2日間のうちどちらかは表彰台に乗りたい藤波にとって、この結果はまったく芳しくないものだった。それでも、日曜日にカベスタニーが11位となったことで、藤波はランキングを3位にあげることになった。漁夫の利で得たランキング3位だが、この週末は、これが唯一よかったと思えることだった。

もちろん、この時点でのランキング3位などはまだまだ途中経過。ひとつひとつの戦いを大事にしていかなければいけないのは、これからも同じだ。

○藤波貴久のコメント

「日曜日は、ハイメ(ブスト)とは3点差、終わって結果を見れば、表彰台に乗れる可能性が大いにあったなぁというものでした。しかし今回の走りっぷりでは、4位と5位はしかたがないというか、そこの数点を悔しがるよりも、もっと自分の走りをしっかり出せるようにしないといけません。シーズンはまだまだ長いし、次は標高の高いアンドラですが、表彰台に乗れるように、ひとつひとつの試合、ひとつひとつのセクションをしっかり戦います」

World Championship 2016
土曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 35 28
2位 アダム・ラガ スペイン・TRS 37 20
3位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 38 23
4位 藤波貴久 日本・モンテッサ 56 17
5位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 64 17
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 65 .15
7位 ジェイムス・ダビル イギリス・ヴェルティゴ 72 14
8位 ミケール・ヘラベルト スペイン・シェルコ 86 12
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 30 24
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 47 20
3位 ジェイムス・ダビル イギリス・ヴェルティゴ 64  19
4位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 67 17
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 70 17
6位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ヴェルティゴ 84 14
7位 エディ・カールソン モンテッサ・スウェーデン 87 11
8位 ポル・タレス TRS・スペイン 89 10
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 114
2位 アダム・ラガ スペイン・TRS 103
3位 藤波貴久 日本・モンテッサ 74
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 73
5位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 72
6位 ジェイムス・ダビル イギリス・ヴェルティゴ 62