2015年 FIM 世界選手権第17戦・第18戦スペイン

2015年9月12-13日/テオ(スペイン)

苦しみの最終戦。ランキング5位はキープ

 さんざんだったポルトガル大会の翌日、藤波は精密検査を受けた。幸いというかなんというか、ヘルニアが主原因ではなく(長年の酷使はあるので、若干の兆候はあるのだが)筋肉がかたまってしまった結果のぎっくり腰という診断だった。

しかし対処の方法はあまり多くない。背骨に注射をしたりいろいろやって、水曜日、木曜日と少しずつはよくなっていったのだが、劇的な回復にはほど遠い。

そして今回、最終戦に来てマシンを替えることになった。腰の痛みでそれどころではなかったのだが、ポルトガルではマシンのほうにも若干の問題があった。藤波の体調を考えると、今はとにかくマシンに助けてもらわなければどうしようもない。それでクラッチのつながりがこれまでの藤波号とはちがう、ボウのセカンドバイクで走ることになった。

ボウと藤波ではセッティングが大きくちがうが、今回はハンドルを変えただけで試合に挑んだ。TDNに参加する時など、ときどきガッチこと小川友幸が藤波のセカンドバイクに乗ることがあるが、今回はそんな要領で、藤波がボウのセカンドバイクに乗ることになったわけだ。藤波とすれば、いつもの藤波号のほうがエンジンのフィーリングが好みなのだが、今回はそんなことはいっていられない。だからこれは、賭けだった。

セクションは、これまたステアばかりだった。ウォーミングアップは1時間だけ乗って終了した。ウォーミングアップではいい感触だった。しかしこの日は気温が寒く、さらに第1セクションでは渋滞があった。今回は参加者が多かったという理由もある。問題は渋滞待ちをしているうちに、からだが冷えてきてしまうということだ。列に並んだらふつうはなにもできないのだが、うしろのライダーに頼み込んで、列をはずれてからだを温めさせてもらったりもした。それでも、充分ではなかったようだ。

第1セクションに、2段のステアがあった。ここでいきなり、ぐきっとやってしまった。せっかくよくなっていたのに、これでまた振り出しに戻る。そして、どうしようもなくなってしまった。

それから先は、ボウ仕様のクラッチに慣れない失敗もあったりしたが、なによりやはり、ぎっくり腰の影響が大きく、1ラップ目2ラップ目は散々だった。それでも3ラップ目は1ラップ目から1/3にまで減らすことができた。3ラップともにこの点数なら、表彰台は無理でも6位以内には入れるスコアだ。たぶん、からだがあたたまってきたからだと思うのだが、ともかくもこの日の藤波は腰の具合次第という感じになってきた。

土曜日の結果は10位。藤波は20年間世界選手権を戦ってきて、10位以下になったことが10回もない。その希有な大会が、20年目の最終戦でやってきてしまった。

その晩、先生に来てもらって、マッサージをやってもらった。マッサージをしてもらってからだをあたため、翌日に備える。トライ待ちの列に並んでじっとしていることが多かったので、からだが冷えているというのが先生の診断でもあった。

日曜日、体調は少し回復した。土曜日の3ラップ目のような走りを、3ラップともすることができた。それで7位。スペインの強豪4人に加えて、カサレスとブスト、ふたりの若手スペイン勢が、藤波の前に並んでいた。いつもならこれが最悪の結果だが、きのうの今日だから、それでも少しよくなったと思う藤波だった。

これで、2015年シーズンは終わった。全戦表彰台が藤波の目標だったが、今年の表彰台は、2位1回3位2回の3回にとどまった。それでも、去年と同じくランキング5位を獲得したのは、周囲からは肯定的な評価を受けている。もちろん、藤波はそこに甘んじてはいない。

来るシーズンは、ブストやカサレスが加わって、ますます厳しい戦いになるだろう。それがまた、藤波の闘志を盛り立てている。

○藤波貴久のコメント

「夏以降、ひざもよくなって調子が上がりました。だから終盤の2戦はやってやるぞという気持ちでいっぱいだったので、それができなかったのはとても残念でした。内容も悪くて、もちろんまったく満足していませんが、それもまたしかたがない。今は、来シーズンに向けて、きちんとトレーニングをしていきたいと思っています。今年は開幕戦にこそ間に合いましたが、まったくトレーニングができない状態でシーズンを迎えることになりました。テストをほとんどできなかった。それがいろいろと大きなハンディになっていました。若いスペイン勢も伸びてきましたが、トライアル界にとってはいいことだと思います。厳しい戦いにはなりますが、彼らを迎え撃ち、そして来年こそ全戦表彰台を達成するのが、ぼくのモチベーションになっています」

World Championship 2015
土曜日
1位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 12 31
2位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 29 25
3位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 43 20
4位 ホルヘ・カサレス スペイン・ベータ 54 19
5位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 56 21
6位 アレックス・フェレール フランス・シェルコ 58 16
10位 藤波貴久 日本・モンテッサ 97 9
日曜日
1位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 9  31
2位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 14  30
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 22  26
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 32  22
5位 ホルヘ・カサレス スペイン・ベータ 32  21
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 43  22
7位 藤波貴久 日本・モンテッサ 50  17
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 345
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 311
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 246
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 233
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 196
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 182