2015年 FIM 世界選手権第15戦・第16戦ポルトガル

2015年9月5-6日/パコス・デ・フェレイラ(ポルトガル)

ひざは復調傾向、しかしぎっくり腰に悩む

photo 夏休みあけ、世界選手権は最後の勝負が2大会組まれている。ポルトガル、そして最終戦がスペインだ。

今年、ひざの手術からの復帰で、さまざまな逆境で戦ってきた藤波にとって、今シーズン最後の仕上げになる。ランキング争いでは、すでに4位以上を狙うのはたいへんに厳しい状況になってきているが、元世界チャンピオンとして、藤波貴久として、あといくつか、表彰台を獲得してシーズンを終わりたいという思いの強い夏の藤波だった。

ポルトガルは、以前にTDN大会で走ったことがある町が会場で、比較的セクション何度が低いとされている。

夏休みの藤波は、ひざが順調に回復していて、シーズン当初のようにひざの痛みに悩まされることは少なくなったし、それにあわせて筋肉トレーニングも復活できている。からだの調子は、これまでにないほどに調子よくなっていた。

そしてポルトガル大会までが直前に迫った練習時、事件が起こった。この頃の藤波は、からだが復調してきて練習にも精を出していた。いままで、ライディングのトレーニングはセーブしてきたから、その制約が外れて思い切り練習できる喜びに満ちていた。しかしそれが、もしかしたらからだにオーバーワークを与えていたのかもしれなかった。

photo2段のステアを上がろうと、いつものようにからだが伸び上がったその時、バイクが思ったように上がってこなかった。おそらく、滑ったかなにかで、加速ができなかったのだと思われるが、それで調子が狂ったのが伸び上がっている藤波だった。

ぎっくり腰のような、そんな症状だった。痛み止めではなおらなかった。ちょっと処置なしの状態だが、整体に通って、少しずつ状況はよくなっていっての、ポルトガル大会だった。

ところがポルトガル前の月曜日の練習で、またひどくなってしまった。ちょっとしたアクションをためしてみると、やっぱり痛い。

原因としては、やはり8月のトレーニングに精を出した結果ではないかということだった。いまでもまだ、手術をした右足よりも左足のほうが筋力が強い。つまりからだのバランスが崩れている。その崩れたバランスのまま、今まで休んでいたいろんなトレーニングを、こころおきなくやってしまった8月の藤波だった。そこに、疲労があったのかもしれない。あるいは、これまでやってきたマッサージなどのケアの時間が、トレーニング時間が増えたことで足りなくなってしまっていたのかもしれない。

こうなると、簡単なポルトガルのセクションも、簡単ではなくなっていく。ポルトガルはステアが多く、上がれれば簡単。上がれなければ5点ばかりということになる。下見をした時点で、これはたいへんなことになるかもしれないと覚悟した藤波だったが、実際には想像以上にたいへんなことになってしまった。

photoそれでもいろいろなケアをして、少しはコンディションを整えて挑んだ土曜日の1日目だったが、その第2セクション、岩に斜めに飛び移ったところで、再びグキリとやってしまった。これでもう、そこから先はどうしようもないトライアルが始まった。

5点かクリーンか。なすすべがなく、セクションを回っていくしかなかった。

土曜日は9位、日曜日は8位。藤波にすればあり得ない成績だが、この日のコンディションではこの結果も甘んじて受けるしかなかった。

トップを見れば、ボウとラガは両日ともに一桁減点、それもかなり少ない減点で1日を走りきっている。3位以降のライダーも、3ラップのうちどこかで一桁減点をマークしてきている。藤波が最もよかったのは、土曜日の3ラップ目の10点だった。このラップだけは、5点が一つもなかった。

驚異的な減点で試合をまとめるトップライダーの戦いを、藤波は不可能なことではないと思っている。完璧な藤波貴久なら、その戦いに加われたにちがいないと信じている。しかしいっぽうで、とりこぼしをまったくすることなく12セクション3ラップ、それを2日間続けて行う彼らの精神力には、素直にすごいと思ってしまう藤波だった。

○藤波貴久のコメント

「いい悪い、という以前の問題で、とにかくぜんぜんだめなポルトガル大会になってしまいました。セクションがむずかしいとかどうという問題ではありません。とにかく自分との戦いでした。終盤の2戦は、今年はじめて自分らしい戦いができるのではないかと期待していたので、自分でもがっかりしてしまっています。最終戦スペイン大会まで1週間、なおればいいのですが、時間が足りません」

World Championship 2015
土曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 3  35
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 7  33
3位 ジェロニ・ファハルド  スペイン・ベータ 26 26
4位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 36  26
5位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 36  26
6位 ホルヘ・カサレス スペイン・ベータ 46  25
8位 藤波貴久 日本・モンテッサ 65  12
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 6  34
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 12  31
3位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 24 27
4位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 25 29
5位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 27 29
6位 ホルヘ・カサレス スペイン・ベータ 44 22
9位 藤波貴久 日本・モンテッサ 89  14
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 311
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 271
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 220
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 205
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 181
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 164