2015年 FIM 世界選手権第13戦・第14戦アメリカ

2015年7月25-26日/ステッピング・ストーンズ(アメリカ)

ゲンのいいはずのアメリカ、でも波に乗れず

photo アメリカの北東部、ロードアイランド州のステッピング・ストーンズ。藤波が1996年に初めて世界選手権挑戦をしたとき、アメリカ大会が開催された会場だ。藤波の世界選手権挑戦は20年目だから、19年ぶりに訪れた会場ということになる。

藤波とアメリカ大会は、比較的ゲンがいい。比較的よい成績も残っているし、セクションや地形も藤波の好きなロケーションであることが多い。

今回もまた、会場は藤波にとっていい雰囲気だった。ダイナミックで見ごたえもある。そして3段や4段のテクニカルなステップも多い。ここに来る前からアメリカ大会を楽しみにしている藤波だったが、現地を見て、さらにここを走るのが楽しみだった。

ところが今回のアメリカ大会では、大きな問題が起こっていた。藤波をはじめとする多くのライダーのマシンが、税関で引っかかって出てこなかったのだ。

藤波、ボウ、ブストのモンテッサチームにシェルコ、そしてラガのガスガスと、スペインから送ったすべてのマシンがひっかかってしまった。ただしイタリアから送られたベータチームのマシンはすんなり出てきている。スペインからの荷物が全部まとめて出てきていない。どうやら税関に意地の悪い(仕事に厳格な)担当者がいて、その担当者につかまってしまったのではないかということだが、とんだアメリカ大会となってしまった。

藤波らがアメリカ大会の会場入りをしたのは水曜日の朝だったが、結局マシンが会場に届いたのは金曜日の午後になってからで、ウォーミングアップもなし、セクションの下見もバイクには乗らずに行った。なにせヘルメットもブーツも、マシンといっしょに梱包して送ってしまったから、荷物が届くまでは手も足も出ず。ホテルのジムで汗を流し、用意してもらった自転車をこいだりと、とにかくからだがなまらないようにせめてもの調整に腐心したものだった。

幸い、マシンはあっという間に組み上がり、金曜日のうちにセッティングがあっているのを確認し、それでもなんとか土曜日を迎えることができた。そうとなれば、楽しみにしているアメリカ大会のこと。気持ちはプラス思考でスタートラインに向かった藤波だった。

■土曜日

photo楽しみにしていたアメリカ大会。滑り出しは悪くはなかった。クリーン、クリーン、1点。第4セクションで5点となるも、第5セクションをクリーン。第6セクションはちょっと難関で、ここではファハルドも3回5点となっている。抜けているライダーもいるにいるが、ここでの5点はまずしかたがないともいえる。

問題はここからだった。第7セクションで5点を取ると、11セクションまで連続5点。第6セクション以降、6セクション続けて5点を並べてしまった。第6はしかたがないとしても、第7、第8は走破可能なセクションだった。10セクションは充分抜けられているのに、カードにさわってしまって5点となった。くやしい5点の連続だ。

しかし、これだけ5点を増産したにもかかわらず、1ラップ目の成績は5位だった。今回は成績をチームから教えられていて、これだけ失敗が続いているのに成績がどん底でないことで、逆に2ラップ目3ラップ目に向けて勇気がわいてきた藤波ではあった。

しかしところが、今度は時間がない。もともと金曜日にオートバイがなくてしっかり下見ができていなかったから、当日の下見にどうしても時間をかけることになる。結局10セクション、11セクションあたりになると下見もせずにセクションインをすることになってしまっていた。

そして2ラップ目、起死回生のラップではあったが、第6から第10までまたも5点が続いた。11セクションは1点で抜けたものの、劇的な改善にはほど遠く3ラップ目に入ることになった。

そしてまた3ラップ目、なんと三度、第6から第10までが5点。第6や第9など、むずかしいセクションではあるものの、3ラップともに1度も出られないというのは、藤波自身にとって大きなショックだった。

今回は金曜日の夜に雨が降り、土曜日の1ラップ目はそこそこ滑る状態での戦いとなった。そのうえ土曜日朝のウォーミングアップの、それも最後の最後でクラッシュをしてしまって、クラッチカバーを割ってしまった。クラッチカバーは交換パーツがあるのだが、クラッチのセッティングには人一倍神経を使っている藤波のこと、クラッチカバーは単なるカバーではなく、クラッチの性能を司る重要な部品となる。クラッシュしたのがスタート30分前で、修理が完了したのがスタート10分前。クラッチの調子には少々違和感があったのだが、時間がないこともあり、走れないというほどの違和感ではないのでそのまま走ったのが土曜日の藤波だった。

結果は6位。これだけ5点を取ってしまってはしかたがないという一方、6位以下に落ちずによかったという内容でもあった。事実、藤波に7点差だったジェームス・ダビルは藤波が3回5点となった10セクションをクリーン、1点、1点で抜けている。

今回はホルヘ・カサレスが3位となっているが、この日のカサレスの乗れっぷりを見ればそれも納得ではあった。今回9位となってしまった藤波のチームメイト、ハイメ・ブストを含め、3位になれるライダーは6人ほどいる、というのが藤波の読みだ。もちろん藤波もその最右翼なのだが、その実力があるのと実際に3位になれるのとは少しちがう。表彰台からちょっと遠ざかってしまっている藤波としても、実力をきちんと発揮するむずかしさを痛感したアメリカの土曜日だった。

■日曜日

photo土曜日の大会が終わってから、藤波はトニー・ボウにラインや乗り方を教えてもらったりして、同じ目にはあわないと日曜日の走りに期待をかけた。

その効あって、序盤はクリーン続きで悪くなかった。第4セクションは5点となってしまったが、ここはクリーンか5点かというセクションだったから、クリーンがあれば5点もある。だから第4で5点となったこともくさることなく、先に進んでいくことができた。

ところがこの頃から、雲行きがあやしくなってきた。この会場は、雨が降るといきなりものすごく滑るコンディションとなる。この日の藤波は、前日の6位でスタートも早い。藤波の前を走るライダーで、参考にしたいライダーもいないので、それならさっさと先へ行こうと決めてペースを進めていった。といっても、あくまでもマイペースだ。

すると第8、第9セクションに到着した頃には、なんと全員を抜いてトップに出てしまった。藤浪についてくるのは、早まわりが大好きなブストくらい。藤波とブスト、ふたりのモンテッサライダーが真っ先にセクションに到着するという流れになっていた。

藤波の調子は、抜群によいとは言わないまでも、悪くはなかった。第6セクションは土曜日には難セクションだったが、修正されることなく日曜日も同じセクションが使われた。藤波は、この日はここを3点で抜けた。ちなみに2ラップ目は2点、3ラップ目は1点。土曜日のオール5点に比べると、だんぜんに調子がいい。

ところが10セクションで、プスンとエンジンが止まってしまう不運に見舞われた。8セクション、9セクションはむずかしかったから5点も納得さぜるをえないが、10セクションの5点は痛かった。

これで1ラップ目は4つの5点で27点。2ラップ目はさらに減点を減らしていくぞと気合いを入れた藤波だった。それでも1ラップ目は3位のファハルドに5点差の4位。ライバルもノーミスで走っているわけではないのだ。

2ラップ目。挽回を誓ってまわり始めていきなり、第3セクションで悪夢が起こった。第2セクションに続いて、安全のために1点をついて抜けたと思ったら、オブザーバーは5点を告げている。藤波としてはきつねにつままれたような判定だった。するとマインダーのカルロスが、自分が岩を息で吹いたらその瞬間に笛を吹かれて5点といわれた」としょげて報告してきた。それはまた、あんまりの厳しい裁定だ。

しばらく抗議をしてもみたが、ここのオブザーバーはマインダーのアクションについては神経質に厳しく、ダビルもカサレスも同じように5点を取られている。ほかのライダーもやられているということで、まずはそのままトライを続けることにした。

次のセクション第4では、1ラップ目に5点となっているも、2ラップ目にクリーン。落ち込んでいるカルロスには、第3の5点は第4で取り返したから安心しろと声をかけ、自分自身をも元気づける藤波だった。

ところが10セクション、前日と同じように、カードをはねて5点となった。誰にでも起こりうる失敗だが、こういう失敗がリズムを崩して調子を上げられないのがトライアルのむずかしさだ。結局2ラップ目は、第3、第10、第11ともったいない失敗をしてしまった。11セクションは5点ではなかったが、ラインをまちがえてばたばたの3点になってしまっていた。

3ラップ目。第4セクションでまた5点となってしまった。この日のセクションでは、4と8が抜けられるかどうかで大きな差になって現れる。藤波のスコアを見ると、4は5-0-5、8は5-1-5。あと一つか二つ、このどちらかを抜けられていれば、流れも変わっていただろうし、そして結果もちがっていたはずだ。

運もついていなかった、そして流れにものれなかった。しっくりとこないまま、アメリカの2日間がすぎてしまった。残念だが、これもトライアル。

藤波にとって、少し朗報だったのが、最終戦スペイン大会の会場変更だ。もともと組まれていたヘレスはインドアっぽいセクション設定となるということで、インドアに苦手意識のある藤波としては歓迎ではなかったのだが、新しい会場は自然の設定が多くなるということで、残り4戦の戦いにあらためて気合いを入れている藤波だった。

○藤波貴久のコメント

「アメリカも、満足には遠い大会となってしまいました。足のほうはだいぶよくなっていて、痛みも少なくなりました。飛び降りなどをしても痛みはありません。手首と足の指も、もうほとんどなんの問題もなくなりました。といってももう最終戦目前です。ランキング3位を目標にしていましたが、今の段階ではそれは厳しい状況になっています。けっしてあきらめてはいませんが、ランキングよりも、今はまず表彰台がほしいです。残り4戦、きっちりと表彰台にのっていけば、結果はついてくるはずですし、もともとランキング3位の目標の次には、全戦表彰台を目指すという目標があったので、今はそこに集中して、がんばりたいと思います」

World Championship 2015
土曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 37 27
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 69 19
3位 ホルヘ・カサレス スペイン・ベータ 78 14
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 83 17
5位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 91 14
6位 藤波貴久 日本・モンテッサ 100 12
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 26 26
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 50 22
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 55 22
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 79 14
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 81 12
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 83 15
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 271
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 237
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 194
4位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 179
5位 藤波貴久 日本・モンテッサ 166
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 138