2015年 FIM 世界選手権第3戦・第4戦チェコ

2015年5月30-31日/ソコロフ(チェコ)

膝の痛みと戦いながら、5位、6位

photo3週連続で開催される世界選手権、その最初の戦いがチェコになった。ところがチェコは、藤波にとって試練の戦いになった。6位と5位、成績はよくないが、しかしある意味、全力で勝ち取った順位でもあった。

■土曜日

雨がしとしとと降っていた。もともと、パサパサの土の地形である。その上に雨が乗って、むずかしさを増している。しかし藤波が直面していたのは、セクションのむずかしさではなかった。

実はもてぎで2位になったあと、藤波の膝は最悪の状態になってしまっていた。もてぎの日曜日には、痛み止めがことのほか効いて膝の痛みを軽減することができたのだが、それゆえ膝には無理をさせてしまっていたのかもしれない。腫れもひどく、痛みもひどい。

スペインに帰ってからも、マシンに乗ってのトレーニングはせずに、1ヶ月、オートバイに乗らない生活を貫いた。ときどき乗ってはみるものの、痛みがひどく乗れたものではない。

それでとうとう、手術室にはいることになった。いきのよい髄液を腰骨からお借りして、悪い膝に注入するという処置だ。これでうまくいけばよいが、これでだめなら、今シーズンをあきらめてもう一度膝の手術をやりなおすことになるかもしれない。そんな、最後の方策だった。

photoこれがチェコ大会の1週間前。結局マシンには乗らないまま、チェコのパドックにやってきた藤波だった。金曜日に走ってみたが、やはり痛くてすぐに乗るのをやめてしまった。こんな状況ではたして試合ができるのか、周囲も不安いっぱいの、藤波のチェコ大会となった。

1ラップ目、案の定、膝が痛くて、走れない。走りがいい悪いという以上に、絶望的な状況だった。1ラップ目、藤波は5つの5点を献上して減点28。1ラップ目の順位は6位だったが、しかしその実、5位には1点差、3位まで2点差、トップまでも7点差でしかなかった。もちろん、この点差は藤波は知らないまま、膝の痛みと格闘している。

ところが2ラップ目、少し様子が変わってきた。よくなったとはいえる状況ではないものの、土曜日のもてぎと同じくらいの痛みで走ることができるようになっている。3ラップ目になると、さらに膝はよくなった。絶望的な状況から裏腹、なんとかなる痛みとなって、いい感じになってきた。どうやら、1ラップ目の11セクション、12セクションあたりから足が動くようになってきたようだ。

だから6位という結果は、とてもくやしいものになった。2ラップ目の11セクションでは、カードにさわった、さわらない、という採点で、ちょっとトラブルもあった。それで抗議を出していたのだが、その抗議は通らず、藤波はあと5点を減らせずに試合を終えることになった。この抗議が通っていれば、藤波は4位までジャンプアップしていたことになる。今回、4位にはチームのルーキー、ハイメ・ブストが入っているが、そのブストと藤波の点差は、たった4点だった。

この1ヶ月、痛みが出るので安静に努めていた。自転車トレーニングでも痛みがでる状況だったからだ。それゆえ、膝が動かないままかたまっていたのかもしれなかった。1ラップを走ることで、その膝が動くことを思い出してきたようだった。

■日曜日

photo日曜日の朝、膝は痛い。しかし痛いけれど、踏ん張りは利いた。結果を見ると、1ラップ目から、トップ3に離されてしまっているが、これは膝のせいではなかったという。足のせいにはできない、自分の結果として、この日のリザルトがあった。そういう点で、この日のトライアルはある意味で満足がいくものだった。

3ラップ目、難所だった第2、第3セクションを連続してクリーンした。これはいいぞと思ったのもつかの間、続く第4、第5、第6と3連続5点となり、結局追い上げもままならならず、4位を守ってゴールすることになった。

この日はブストに4点差。土曜日に、膝が不調とはいえ、チームメイトのルーキーの後塵を拝してしまった元世界チャンピオンの藤波。それでも、チェコ入りをした時点では走りきれるかどうかも微妙で、途中で試合をあきらめて即手術、という可能性もなくはなかったから、6位と4位というこの結果は、想像もできなかった好結果でもあった。

○藤波貴久のコメント

「2位。そしてトニーとのワンツー。素晴らしい結果を残すことができました。今までもそうでしたが、日本では、日本のファンの皆さんに背後から押し上げられるような実感がとても強くあります。今回もまた、そんな戦いになりました。土曜日の4位は、順そのものについては、自分としてはけっして悪いものではなかったですが、トップ3との点差の隔たりが大きくて、課題が大きいと感じました。日曜日も、出だしは同様で、つらい戦いになりそうでした。でも2ラップ目に少しよくなって、3ラップ目に、ようやくトップ争いの集中の走りができるようになりました。これがずっと続けられれば、今シーズンも活躍ができるのではないかと思います。今回は、手術後の長い療養からの復帰戦で、ほんとうに走れるのか、正直不安が!
いっぱいでしたが、日本で、日本の皆さんといっしょに、まだまだやれるという喜びをつかむことができました。ありがとうございました。ヨーロッパに帰ってシーズン本番。がんばります」

World Championship 2015
土曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 47 18
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 60 18
3位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 66 16
4位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 72 17
5位 ジェイムス・ダビル イギリス・ベルティゴ 73   17
6位 藤波貴久 日本・モンテッサ 76  16
日曜日
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 31 26
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 37 23
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 49 21
4位 藤波貴久 日本・モンテッサ 65 15
5位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 69 17
6位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ 71 19
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ スペイン・モンテッサ 80
2位 アダム・ラガ スペイン・ガスガス 62
3位 ジェロニ・ファハルド スペイン・ベータ 56
4位 藤波貴久 日本・モンテッサ 53
5位 アルベルト・カベスタニー スペイン・シェルコ  47
6位 ハイメ・ブスト スペイン・モンテッサ 44