2014年 FIM 世界選手権第9戦・第10戦イギリスGP

2014年7月19日・20日/ペンリス(イギリス)

ちょっと痛い連続5位。

photo 4位となって、少し上向き調子となったベルギー大会の1週間後、世界選手権はイギリスに渡った。ここは昨年と同じ会場で、4回目の世界選手権開催となる。この会場ではないが、イギリス大会では優勝したこともあり、藤波にとっては比較的相性がいい。

土曜日のイギリスは、降ったり止んだり、1日中イギリスらしい雨模様だった。かといって、カッパを着ると暑い。気温はそんなでもないものの、蒸し暑い。カッパを着ても着なくても、どっちにしろびしゃびしゃになってしまう、そんなコンディションだった。藤波も、1ラップ目だけカッパを着て、2ラップ目以降は脱いでしまった。

セクションは、だいたい例年通りの、採石場の岩をテーマとした斜面に設営されていた。どちらかというとインドアっぽいセクションで、そういう設定は藤波の得意とするところではないのだが、藤波はイギリスに悪い印象がないので、苦手意識も持たずに試合に臨むことができている。

ベルギーで4位となり、膝の調子も悪くない。ここらでさらに上り調子としておきたいところだ。

photoしかし1ラップ目、あまりいい走りができない。持ち時間が少なめで、それで少し急いで走ったということもある。1ラップ目の最終セクションは、ざっと見ると3点で抜けるのがやっとという感じで、タイムオーバー覚悟で走っても結果が変わらないような感じだったので、エスケープして5点となっている。

だいたい、藤波の1ラップ目はからだがかたい。なんとかしたいところだが、ここまで世界選手権を19年間走ってきて、克服することも変わることもできなかったところだ。それを含めて、藤波貴久のライディング、というところかもしれない。成績がいいときには、からだがかたいなりに、点数をまとめることができるものだ。今回は、そこのところがいまひとつだった。

1ラップ目は5位。ただし4位のファハルドとは5点差、3位のラガとは6点差だから、まだ充分に挽回のチャンスはあった。1位のボウは、1ラップ目をたったの1点で帰ってきたということで、これは勝負にならない。チームメイトとしてもライバルとしても、この1点には脱帽するしかない。

2ラップ目、1ラップ目に5点だった第5セクションをクリーン。でも他のところで減点が多かった。結果、2ラップ目の減点は1ラップ目より2点多い30点。なかなか追い上げができないでいる。それでも4位ファハルドとは3点差になっている。

photo3ラップ目、ようやく藤波らしいライディングができた。2ラップ目から比べると、減点数を半分近くとした16点。走り終えた藤波には、まずまずの満足感があった。しかし結果は結果。ファハルドに1点差まで詰め寄ったものの5位となった結果には、悔しさが残ることになった。

しかし悔しさ以上の問題は、最終ラップ最終セクションでのクラッシュだ。最終セクションでは、藤波はファハルドとの点差を聞いていた。ファハルドが最終セクションを5点となり、藤波が最終セクションを抜けられれば、逆転4位のチャンスがあった。だからとにかく抜けろ、というのが最終セクションでの藤波への指示だった。

なんとか3点で抜けようとした藤波は、途中、つるつるの切り株からなだれこむように降りていった。そのとき、真横に飛ぶような体勢となって、なんと痛めている右足から着地してしまった。右足に、全体重と、おまけにマシンの重さもそのままのしかかった。そして、このセクションでの減点も5点となった。

逆転4位の座と、このところ具合がよかった膝の調子が、いっしょに消えていった瞬間だった。

膝の痛みは、ゴールしてもなお痛い。そのうち、だんだん血がたまってきた感じになってきた。このまま腫れが引かずに日曜日を迎えるとしたら、日曜日の戦いはかなり厳しいことになるにちがいない。土曜日の夜は、とにかく冷やして、膝の回復を祈るしかなかった。

photo明けて日曜日、幸いにも、膝の腫れはそこまでひどくはなっていなかった。ただしお世辞にもいい状態とは言いがたい。これが練習の日だったら、膝を温存して静養するくらいの状態だ。レースだから、藤波は走る。膝は、90度ちょっとしか曲がらない。本当に具合が悪いときには、90度も曲がらないときがある。

案の定、ウォームアップを走っていても感触はかんばしくない。セクションは第4と第8が変更を受けている。難度を高められたというより、土曜日に見つけた抜け道ラインをふさがれたという感じだ。それ以外は変わらずだから、雨も上がりそうだし、土曜日より点数は少なくなることが予想された。藤波は、痛み止めを飲んでスタートをする。

1ラップ目、第4セクション。最後に大きなジャンプをしてすぐ登るという設定だった。着地と同時に登りにかかるので、空中で登りの姿勢となっている必要がある。つまり膝を曲げて着地する。実はこういう姿勢が、今の藤波には一番苦しい。着地すると同時に、体勢が大きく崩れてしまった。そのまま登りにかかり、失敗。5点だ。難度的には問題がないポイントだったから、この5点は手痛いところだ。

その次の第5セクションは、藤波がちょっと苦手なパターンだった。3つ4つの岩を次々に越える設定で、全部の岩に合わせていかなければいけない。ここはクリーン。ここをいけたのは、藤波には大きな収穫だった。

第7セクションはクリーンセクションだった。しかしここで、藤波は痛恨の5点となる。オーバーハングの岩に対して、マシンがほんの少し立ちすぎた。それでフロントタイヤがあたるべきところにあたらず、アンダーガードがぶつかっての5点だった。完全なライディングミス。しかも初歩的ミスだったと、藤波は言う。

photo第4と第7、このふたつはクリーンセクションだったから、ここで5点となったのは痛かった。第4は膝の痛みをかかえている中、避けられない5点だったかもしれないが、第7は残念というしかない。こちらは、膝の痛みとは関係がない5点だった。

2ラップ目、3ラップ目は、12点ずつでまずまずのスコアを残すことができた。これならファハルドに対して遜色ないスコアだ。1ラップに倍の24点とってしまったのが決定的だった。

終わってみれば、この日も5位。しかも4位のダビルとは、たったの1点差だった。土曜日も日曜日も、表彰台に食い込むのはむずかしかったかもしれないが、4位は可能性のあるところだった。

イギリスから帰って、まずは膝の治療。根本的になおるものではないものの、オートバイでのトレーニングはあきらめて、翌週のフランス大会までに、少しでも症状が改善するよう、加療中だ。

ベルギー大会では、この調子だったらシーズン後に手術をしないでも、と考えてもいたのだが、手術をしなければ不意に衝撃を受けたときにこうなりかねない。手術を受けた方が、安心にはちがいないが、最終的な判断は、もう少し先になりそうだ。

○藤波貴久のコメント

「このところ、膝の調子がよかったので、土曜日の最終セクションで膝を痛めてしまったのは残念でした。大会を終えた月曜日には、ふつうにしてても痛い状態なので、オートバイでのトレーニングはあきらめて、ジムに通います。筋肉で膝を守っているので、ジム通いはやめられません。ジム通いを少しさぼると、いきなり痛くなってしまいます。でも膝の状態よりも、日本GP以降、表彰台にまったく乗れていないので、それがなんともくやしいです。ランキング3位争いの上でも表彰台に乗っていないといけないのですが、ランキング争いよりまず、表彰台に乗りたいという思いでいっぱいです。次のフランスで、ぜひ表彰台に乗りたいと思います。」

World Championship 2014
土曜日
1位 トニー・ボウ (スペイン・Montesa)   18
2位 アダム・ラガ (スペイン・ガスガス)   49
3位 アルベルト・カベスタニー (スペイン・シェルコ)   57
4位 ジェロニ・ファハルド (スペイン・ベータ)   73
5位 藤波貴久 (日本・Montesa)   74
6位 ジェイムス・ダビル (イギリス・ベータ)  80
7位 アレキサンドレ・フェレール シェルコ  94
8位 マイケル・ブラウン (イギリス・ガスガス)   101
日曜日
1位 トニー・ボウ (スペイン・Montesa)   20
2位 アダム・ラガ (スペイン・ガスガス)   35
3位 ジェロニ・ファハルド (スペイン・ベータ)   36
4位 ジェイムス・ダビル (イギリス・ベータ)  45
5位 藤波貴久 (日本・Montesa)   48
6位 ホルヘ・カサレス (スペイン・ガスガス)  52
7位 アルベルト・カベスタニー (スペイン・シェルコ)   53
8位 マテオ・グラタローラ (イタリア・ガスガス)   64
世界選手権ランキング(世界選手権第10戦終了現在)
1位 トニー・ボウ レプソル・Honda 168
2位 アダム・ラガ ガスガス 158
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 120
4位 藤波貴久 レプソル・Honda 113
5位 ジェロニ・ファハルド ベータ 111
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 91
7位 ホルヘ・カサレス ガスガス 78
8位 アレッシャンドレ・フェレール シェルコ 67