開幕戦のシェフィールドから3週間。激戦によって膝にたまった水を抜き、1週間休養を余儀なくされた藤波だったが、膝の負傷はまだまだ回復途上。状況は少しずつだが確実に改善されている。
6人のセミファイナル参加者を選ぶクォリファイでは、藤波はフランス人のアレッシャンドレ・フェレールとの対戦だった。フェレールはインドアではなかなかの才能を発揮した若手だったが、今回は10人中もっとも減点が多く、フェレーるを相手とした藤波は、これでまずセミファイナル進出の権利を得た。クォリファイではジェイムス・ダビルが好調で、ダビルと対戦したジェロに・ファハルドがベスト敗者としてセミファイナル進出をしている。
減点数順でみると、トップのトニー・ボウは5点、2位のラガが11点、藤波は19点で5位。4位がアルベルト・カベスタニー18点、6位のファハルド21点で、なかなかの僅差だった。5位となった藤波は、セミファイナルでは2位のラガと対戦することになる。
セミファイナルの順位は意味がないとは言わないが、その後の対戦相手に大きな影響があることを考えると、上位が必ずしもいいとはいえない。前回、藤波はクォリファイを6位で通過し、ボウと対戦で走行順は最後の組となった。これはこれで悪くない。ボウに勝つのは至難だが、試合の流れをすべて見渡せる状況で走れる点ではメリットも大きい。
ただし今回は、試合の流れを把握するのは比較的容易だった。セミファイナル最初の対戦のカベスタニーvsダビルが、11点で同点。最終セクションでダビルが5点、カベスタニーが1点だから、カベスタニーの勝利となる。ファイナルに進出するには、ダビルのマークした11点がボーダーラインになるのが見て取れた。できれば10点以内の勝負だ。
藤波とラガの対戦はカベスタニーとダビルに次いで2番目。第1セクションはラガがクリーンで藤波は1点をついた。カベスタニーはここで5点となって、ダビルを相手に苦戦をしたのだ。ここは上がったところが滑って難しい。藤波は上がれていたのだが、アンダーガードをつけば1点となってしまうし、がまんして落ちるよりはと1点をついて引き上げたのだ。
マルセイユのセクションは、スペインのインドアのように大きなブロックにどかんと上がるというパターンより、もうちょっと複雑な形状のものが組み合わされていて、走れるラインはタイヤ1本だけという難度の高い設定だった。藤波にすれば、あまり得意なパターンとはいえない。
第2セクションでは、2段となっているステアで落ちた。ここを上がったのは、ボウ(クリーン)とラガ(1点)のふたりだけだった。ラガは1点とタイムオーバーの2点で3点。ラガにはここで3点差をつけられてしまった。
セクションの持ち時間は1セクションあたり60秒となっている。60秒を過ぎると90秒まではタイムペナルティ1点がつき、120秒までは2点。去年まではそれ以後も5点になるまで走れていたのだが、今年から、120秒を過ぎると5点になることになった。
そして第3セクション。藤波とすれば、ここは絶対クリーンする予定だった。最初に走ったダビルとカベスタニーもクリーンしている。しかしなんと、インのステアで落ちてしまった。万事休す。すでにダビルと同じ11点に並んでしまった。これからまだファハルドとボウの対戦があり、どちらかが(それがボウになるとは思えないが)敗者として藤波とダビルとスコアを競うことになるのだが、ファハルドが11点より少ない場合はもうどうしようもない。せめてダビルより好スコアをマークしていれば、ファイナル進出への希望がつながるというものだ。それには、最後の第4セクションを、なんとしてもクリーンしなければいけない。クリーンした上で、もしもファハルドが11点の同点で並んだ場合を考えれば、少しでも速くセクション走破をしている必要がある。
藤波のトライは、しかしうまくはいかなかった。アンダーガードを一瞬かけて回るところがあったのだが、そのままひっかけてしまうと1点になってしまう。そこでアンダーガードをかけずに飛んでいくことにしたのだが、そこを飛びすぎて5点となってしまった。このセクション、すべての岩がホイールベースぎりぎりで、とてもテクニカルだった。クリーンをするには、1分では時間が足りない。ラガもタイム減点1点で、足つき1点で通過している。
これで藤波のマルセイユは終わった。ダビル11点に対して、藤波は16点。その後ボウと対戦したファハルドは15点で、前回ファイナルを走った藤波とファハルドは、そろってセミファイナル敗退となった。
シェフィールドの試合後は1週間バイクに乗れなかった。1週間前に開催された世界選手権でないトゥールーズのインドアの後は、3日後にはバイクに乗れた。今回はもう少し早くバイクに乗ってのトレーニングが再開できそうだ。靭帯断裂の負傷は、どんなに回復しても100%元に戻ることはあり得ないのだが、今は確実に戦闘力を増している実感はある。
今回、ダビルがファイナルを走って4位となったので、藤波のランキングはダビルと同点ながら6位に後退している。次はトライアルのメッカ、バルセロナ大会だから、がんばらなければいけない
「残念でした。クリーンするはずだった第3セクションは、膝にはもっとも負担がかかる形状で、どこか無意識にこわごわとトライしてしまったかもしれません。膝のトラブルをかかえながら、調子は悪くないので、今回の結果は残念でした。試合のあと、膝から水を抜く量も毎回少なくなってきているので、状況は悪くないと思います。おそらく、手術はもうしないと言い切っていいと思います。まずは、次のバルセロナをがんばります」
Final(決勝) | |||
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1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 4 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 6 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 11 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 12 |
Semi Final(セミファイナル) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 1 |
2位 | アダム・ラガ | ガスガス | 5 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 11 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 11 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 15 |
6位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 16 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
○ | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 5 |
× | スティーブン・コクラン | ガスガス | 28 |
○ | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 18 |
× | ホルヘ・カサレス | ガスガス | 26 |
△ | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 21 |
○ | ジェイムス・ダビル | ベータ | 15 |
○ | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 19 |
× | アレッシャンドレ・フェレール | シェルコ | 31 |
○ | アダム・ラガ | ガスガス | 11 |
× | ロリス・グビアン | オッサ | 29 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 40 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 27 |
3位 | アダム・ラガ | ガスガス | 21 |
4位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 18 |
5位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 14 |
6位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 14 |
7位 | ホルヘ・カサレス | ガスガス | 7 |
8位 | ロリス・グビアン | オッサ | 6 |
9位 | スティーブン・コクラン | ガスガス | 3 |
10位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 2 |
11位 | アレッシャンドレ・フェレール | シェルコ | 1 |
12位 | ジャック・チャロナー | オッサ | 1 |