2013年 FIM 世界選手権第3戦・第4戦アメリカ

2013年5月25-26日/SEQUATCHIE(アメリカ)

5位と、表彰台獲得。ちょっと不完全燃焼

photo ■土曜日

日本大会で待望の勝利を得て、いい気分でアメリカ大陸に乗り込んだ藤波貴久。ここは2008年にも勝利している会場であり、相性もいいはず。期待が高まるアメリカ大会だった。

しかし結果は、日曜日に表彰台に上がったものの土曜日は5位、藤波本人は満足にはほど遠い印象を持っている。どちらかというと、日曜日の3位の方が、悔しさがつのっている。

日本での勝利は、藤波の自信を大きく取り戻させるものだった。日本で勝った勢いでアメリカでも勝利をおさめれば、2004年のチャンピオン獲得シーズンを思い起こさせるような展開になる(あの年は日本で2勝し、次のアメリカで2勝してシーズンの流れを決めた)。

周囲もそういった期待をかけていたし、藤波本人もそんな期待をしていた。しかしそんな前向きの期待は、時に大きな落とし穴を作ることもある。

土曜日1ラップ目。第7セクションまでは、動きもからだもかたいと思いながらも、なんとか点数をまとめていた。しかし第8セクションで、最初のつまずきがあった。ここは、トップライダーにとってはそれほどむずかしいポイントではなかったのだが、大きく飛びつくポイントで、そのまま左に落ちていってしまった。これが、空回りのはじまりになった。

photo優勝の期待を背負って走る藤波の緊張の糸が切れた瞬間、がこの第8セクションでの5点だった。そこから、勝利のオーラはぽろぽろとこぼれていって、それと歩調を合わせるように、ぼろぼろと足が出た。それもむずかしいポイントではなく、こんなところでどうして足が出るんだというとうころでの足つきだったから、失望も大きかった。

今回のセクションは、第2から第5までが川。滑るセクションだった。第6はごろごろの岩。第7は比較的簡単。第8から12まではドライ設定だった。

藤波は第7までを抑えて、さぁここからきっちり抑えれば、という矢先の失点だった。気持ちを落ち着かせて、もう一度本来のコンセントレーションを取り戻し、ここから再出発と思った2ラップ目の第4セクション。ここでも、5点を取るようなポイントではないところで5点になった。せっかく復活しかけていた気持ちが、ふっと元に戻ってしまった。

photoもう、まったくいいところがない。滑って谷底に落ちたりもした。スペイン勢の4人はもちろん、ダビルにも負けているのではないかと思いながらトライを続けた。

こんな状況だから、5位に入れたのはラッキーだったし、ここまで内容が悪いこともめったにないので、成績が悪いのは悪いとして、藤波の気持ちは案外晴れ晴れとしていた。惜しい要素は、この日に限っては、どこにもなかった。

■日曜日

開けて日曜日。セクションは5ヶ所が変更されていた。第2セクション、第4セクション、第8セクション、9セクションは変更はなかったが、きっかけに使った石がはずされていた。そして第10セクション、第11セクション。いずれも難度は高くなっていた。

一晩をすごして、しかし藤波の気持ちはまだすっきりしないまま、スタートが切られた。

第2セクションで5点。斜面の登りで振られての失敗だった。それはまだ、悔しいながらも納得せざるをえない。しかし問題はその次の第3セクションだった。ここは藤波の得意とする設定がされていた。しかし下っていったところでエンジンが止まった。以前なら、足を出さないままにキックをすれば減点にはならなかったのだが、今年のルールではそうはいかない。いきなり5点になった。

photo序盤にして10点。大きな痛手をおった藤波だったが、そこからまた藤波のがまんが始まった。トップはボウとラガで、このふたりはほとんどオールクリーンではないかという勢いで試合を進めている。序盤に10点を取ってしまえば優勝はむずかしいが、それでも少しでも挽回するべく、藤波はがんばる。

2ラップ目、第4では藤波自身の失敗によって5点を取ってしまったが、しかしライディング自体は本来のものに近くはなってきた。そして3ラップ目。自分の走りができてきて、いい感じで追い上げができていると思った第8セクションで、再びエンジンが止まった。

photoこれで、藤波のアメリカ大会はほぼ終了した。終わってみればラガもボウも3ラップ目に大きく減点を増やしていたから、ライディングそのもので比較をすれば優勝争いもできていたのだと思う。しかしそれにつけても、エンストで10点を失ってしまっていては、勝負にならない。

3位入賞をし、順位的には最低限の目標は果たしたことになるのだが、そういう背景があって、藤波の心は晴れない。日曜日は勝ちたいという思いも強かったし、いけるという気持ちもあった。それだけにくやしい3位となった。

○藤波貴久のコメント

「日本で優勝して、いい気持ちでアメリカにやってきたのですが、実は少し不安要素もありました。日本から帰って、スペインでの練習でも、あんまりいいフィーリングになっていなかったからです。ぼくとバイクがあっていないような、そんな感じでした。エンジンストップは、日本でトニーがやったのと同じで、対策は進められているとのことなのです。採点は、日本より甘く、というより、これでいいのかというくらいに甘い採点でした。もしこれがノンストップルールなら、練習方法を変える必要もあるかもしれません。とにかく、土曜日の5位より、日曜日の表彰台が悔しい週末となりました」

World Championship 2013
土曜日
1位 アダム・ラガ ガスガス 9
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 17
3位 ジェロニ・ファハルド ベータ 19
4位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 24
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 37
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 40
7位 ロリス・グビアン ガスガス 57
8位 マテオ・グラタローラ ガスガス 62
日曜日
1位 アダム・ラガ ガスガス 24(28x0)
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 24(27x0)
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 38
4位 ジェロニ・ファハルド ベータ 40
5位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 55
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 61
7位 アレキサンドレ・フェレール シェルコ 83
8位 ロリス・グビアン ガスガス 90
世界選手権ランキング
1位 アダム・ラガ ガスガス 70
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 69
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 59
4位 ジェロニ・ファハルド ベータ 56
5位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 49
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 41
7位 アレキサンドレ・フェレール シェルコ 24
8位 ジャック・チャロナー ベータ 23