Xトライアル第3戦は、第2戦からちょうど1ヶ月のインターバルを置いて、スペインの南西部の観光地、マラガで開催された。スペイン選手権が併催ということで、いつものノミネートライダーの他、フランチェスク・モレットとペレ・ボレラスのふたり(いずれもスペイン人でガスガス)がワイルドカードとして参加した。総勢10名による戦いだ。
クォリファイは、ワイルドカードの2名が真っ先に走り(くじ引きでボレラスが先を走った)次にランキング5位から8位までがグループとなってくじ引き、さらにランキング4位から1位までがくじ引き。前回まででランキング5位だった藤波貴久は、グループの中で3番目の出走順。ボレラス、モレット、チャロナー、グラタローラについでトライをすることになった。
インドアでの藤波の目標は、まず予選を通過すること。インドアでは、ひとつ失敗するだけで予選通過が厳しくなることが多々ある。現にラガが予選落ちをしていることもある。油断は禁物だ。なので藤波の戦略としては、スペイン勢の4人に次いで、5位でいいから予選を通過することが第一の目標となる。予選を通過しなければその先のセミファイナルやファイナルを走ることができず、優勝できる力があってもどうにもならないのだ。
藤波の前を走った4人は、5つのセクションを走って21点が3人と25点がひとり。つまり21点を上回れば、まずは予選は通過できる。藤波の見立てでは、勝負は最初の3つのセクションだった。残るふたつは難度が高い。いけるかもしれないが、5点となる可能性もまた高い。まずは最初の3つをいかに確実に抜けられるかが勝負だ。
最初のセクションは、1点だった。ここまでの4人は、第1セクションは全員5点となっている。セクションは大きなバケットというか、町中に置く巨大なゴミ箱を使ったもので、助走なしでゴミ箱に登る設定となっていた。ここを1点覚悟で走り、その通り1点で切り抜けた。その後、カベスタニーがここをポンポンと飛んで抜けてクリーン。それを見て同じように走ったファハルドが5点となっている。
続く第2、第3は、きっちりクリーンができた。第2をクリーンした時点で、残る3セクションで5点となってもトータルは16点。この時点で予選通過は確実となった。第4セクションは難セクションだったから、インに入ったところで5点になった。このセクションはボウ以外は全員が5点となっている。
最後のセクションは、少し可能性があった。ここをじっくり攻めるために、第4で早めに5点となって時間をセーブしたという作戦でもあった。しかし残念ながら、ここは5点となってしまった。トータル11点。このあと5人のライダーが走るが、5人すべてが藤波のスコアを上回っても6位で、セミクォリファイ進出は決定だ。
藤波のあとを走った5人は、しかし藤波ほど乗れていない。まずフェレルはオール5点で25点。チャロナーとともに、ノミネートライダーの二人がオール5点だ。さらにファハルドが4つの5点で20点。ラガも5点3つで16点と、終わってみれば藤波のクォリファイでの成績は3位となった。トップはボウで1点! カベスタニーが5点で続く。予選は通過できればいいとはいえ、ファイナルで同点となった場合はクォリファイの成績で順位が決まるので、ひとつでも上の順位であれば、それに越したことはない。
さてセミファイナル。藤波はこのシーズン、上位で予選を通過したことがないから、3位で予選通過をした今回は、いつもよりライバルの走りを観察することができている。グラタローラ、ファハルド、ラガが藤波の前を走り、藤波にヒントを与えてくれている。今までは、藤波がライバルにヒントを与えていたものだった。
最初に行われるダブルレーンは、グラタローラとファハルドが対戦しファハルドが勝利した。次がラガvs藤波。ラガは、ダブルレーンがそれほど速くない。もちろん藤波が楽勝というほどの差はないのだが、ここはしっかりラガに勝って、減点ゼロ。カベスタニーvsボウはボウが勝ち、まずはボウ、藤波、グラタローラが1点リードで4つのオブザーブドセクションに挑む。
第1セクション、藤波はいけると思っていた。しかし結果は、ボウを含めてみんな5点だった。ここはドロー。続いて第2セクション。ここはボウがクリーンをしたが、他の5名はみんな5点。ボウの牙城を崩すのは困難極まるから、これはしかたない。2位争いはまだ混とんというところだ。
藤波は、第3セクションが重要だと考えていた。ここは可能性があるセクションでもあり、ここを落としてはいけない。まずグラタローラが5点となった。続いてファハルドは、3点減点に1点のタイムオーバーで4点。ラガは足つき1点にタイムオーバー1点で2点。ここまでの小計は3点となった。
そして藤波。木とヒューム管の組み合わせのセクション。抜けられる自信はあるが、ちょっと失敗すればあっという間に5点にもなる。慎重に慎重を重ねてトライした。タイムオーバーも覚悟だ。焦って走って5点になっては元も子もない。それでも藤波は、タイムオーバーは1点で抑えようと思っていた。30秒までなら1点、以後30秒ごとに1点の減点が加算される。しかし最後で、ちょっともたつきがあった。ここでバタバタとセクションを抜けられれば、あるいはタイムオーバーは1点だけですんでいたかもしれないが、そこで焦って5点になるのは避けなければいけない。結局あと5秒くらいで2点減点となって、ここは1点+2点で3点。ラガに同点に追いつかれた。カベスタニーはタイムオーバーのみの1点、ボウはクリーンで、ファイナルの4つの席は、ファハルド、ラガ、藤波の3人が残るふたつを争う展開になってきた。
最後の第4セクションはボウのみがクリーン(タイムオーバー1点)。結局、グラタローラが21点、ファハルド19点、ラガと藤波が18点、カベスタニーが17点と、なかなか僅差の戦いとなった。ボウだけは6点で別格だ。これでファイナル進出は、ボウ、カベスタニー、藤波、ラガの4人に決まった。
ファイナルもダブルレーンから始まり、しかし今度はたった3セクションによる短期決戦だ。藤波はまずラガとのダブルレーンに挑んだ。セミファイナルでラガと同点となっているから、ダブルレーンでの1点の攻防は重要になる。藤波はちょっとリスクを負いながら、ダブルレーンを走った。5点になってもいいから、ラガにはどうしても勝ちたい。ひとつひとつなめていくところを、藤波は一気に飛びきった。これがうまくいって、ダブルレーンで勝利。まず、貴重な1点のアドバンテージを得た。
さて、ファイナルの3セクション。まず、最初にトライしたラガが、第1セクションで落ちた。続いて藤波。藤波は、第1セクションを上がった! 30秒以内のタイムオーバーがあったので、1点のタイムオーバー減点はついたが、見事にクリーン。これでラガには勝った、と藤波は思った。この第1セクションは、確実に走って抜けられるところで、ここを抜けられるかどうかが勝負の鍵を握ると考えていた。
今シーズン、藤波は高いステアでの走破性が増している。シーズンオフにこういったシチュエーションの練習をさんざんしたというのもきいているかもしれない。ただ、その後ノーストップルール導入が発表されて、止まる練習はほとんどしないで、ノーストップの練習に専念してきた。だから特にインドアに特化した練習をしているという覚えもないのだが、何ヶ月前におこなった特訓が、こんなかたちで実を結んでいるのかもしれない。
第2セクション、第3セクションは、結局抜けられたのはボウだけだった。セミファイナルとファイナルを集計して決められる総合順位は、ボウが8点で優勝、2位は29点でカベスタニーと藤波が並んだ。この場合、順位は予選の順位で決定する。予選ではカベスタニーが上位につけたから、藤波は3位表彰台ということになった。
あと1点。もしファイナルの第1セクションであと何秒か速く走っていればカベスタニーを抜いて2位となっていた計算だった。しかし速く走れば、5点となる可能性もある。そして、結果は結果である。
2位を逃したくやしさはないではないが、2戦続けて表彰台。そしてランキング3位に浮上。これはインドアでの藤波にすれば、ちょっとした大ニュースだ。
「カベスタニーと同点で3位。もったいないといえばもったいないですが、しょうがないといえばしょうがない。チャンピオンシップの成績もそうですが、次回のスタート順を考えても、ランキングは4位までに入りたい思いがあります。なので今回ランキング3位となったのは目標以上の成果でした。次のドイツでは、一番最後のグループでのくじ引きとなりますから、よりチャンスは大きいですから、この勢いでがんばりたいです」
Final(決勝)+Semi Final(セミファイナル) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 8 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 29 |
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 29 |
4位 | アダム・ラガ | ガスガス | 34 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 19 |
6位 | マテオ・グラタローラ | ガスガス | 21 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 1 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 5 |
3位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 11 |
4位 | アダム・ラガ | ガスガス | 16 |
5位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 20 |
6位 | マテオ・グラタローラ | ガスガス | 21 |
7位 | フランチェスク・モレット | ガスガス | 21 |
8位 | ペレ・ホレラス | ガスガス | 21 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | 60 | |
2位 | アルベルト・カベスタニー | 36 | |
3位 | 藤波貴久 | 29 | |
4位 | アダム・ラガ | 28 | |
5位 | ジェロニ・ファハルド | 27 | |
6位 | アレッシャンドレ・フェレール | 11 | |
7位 | ジェイムス・ダビル | 9 | |
8位 | ジャック・チャロナー | 9 | |
9位 | マテオ・グラタローラ | 9 | |
10位 | フランチェスク・モレット | 4 |