1年の最初の世界選手権はインドアXトライアル。開幕戦は、去年はノンタイトルで開催されたイギリスの伝統的インドア、シェフィールドでの1戦。ここはイギリスの誇るトライアル王者、ドギー・ランプキンの生家の近くで、長くドギーの父親のマーチン・ランプキンがセクション設定などを担当していたが、今回は引退したドギーがセクション設定役を務めていた。
セクションはどちらかというとテクニカルな設定で、スペインのインドアにあるような高い激しいインドアとは趣が異なる。インドアでライダーが負傷する事故が多いことへのドギーの配慮だとのことだった。
今回は10人が参戦。地元イギリスのノミネートライダーはジャック・チャロナー一人だったが、ジェイムス・ダビルとマイケル・ブラウンの二人がゲストとして参加、イギリス人がスペイン人に次ぐ3人参加となった。ノミネートライダーは、トニー・ボウ、アルベルト・カベスタニー、アダム・ラガ、ジェロニ・ファハルドの4名のスペイン勢に、藤波、イギリス人チャロナー、そして昨年ジュニアチャンピオンのフランス人アレッシャンドレ・フェレールの7名だ。
いつものXトライアルだと、クォリファイは持ち時間を決められて一人ずつが全セクションを走るが、シェフィールドではすべてのセクションにライダーが一人ずつ配置され、順番にトライしていく。確かにお客さんは変化があって楽しいかもしれないが、ライダーはアリーナで毎セクションごとに9分待たされ(一人の1セクションあたりの持ち時間が1分だから)、ライバルのトライをあまり参考にできないままトライに入ることになった。藤波は、5つある5番目のセクションからトライすることになった。
藤波にとって最初のセクション。最初から、様子がおかしい。結局このセクションは、足を4回ついて5点となってしまった。その後は、調子はお世辞にもよくないが、クリーン二つ、5点ひとつ、足つき1点とタイムオーバー1点の2点で、合計12点でクォリファイを終えた。全員が走り終わってみると、ファハルドが9点、カベスタニーが10点、11点にダビル、12点は藤波の他フェレールがいて、13点にラガがいた。2点でトップのボウ以外は、大接戦だ。
セミファイナルには上位6名が進出する。この点数順に、藤波とフェレールまでがセミファイナル進出。ラガはクォリファイ敗退だ。ラガは第4セクションで、10人中唯一5点となっているから、この結果もしかたがない。
クォリファイの結果は、最終結果にも影響を及ぼすことがあるため、同点の藤波とフェレールは、同点決戦を行った。同じセクションを走って、点数がいい者が勝ち、点数が同じなら、走行タイムがいい者が勝ち。結果は、藤波がクリーンで27秒、フェレールがコンマ6秒速かったが、足つき1回があったので、藤波の勝ち。クォリファイは、藤波が5位、フェレールが6位ということになった。
セミファイナルは、例年のようにダブルレーンから。クォリファイ1位と2位、3位と4位、5位と6位が戦う。藤波はフェレールとの戦いになる。
ダブルレーンのコースには、ベンツのバンが用意されていた。前後には踏み切り板があてがわられ、屋根にもルーフキャリアのような走行帯が装着されていたが、クルマ本体にはあたらないでね、という厳重なるお願いつきだった。もしあたっちゃったら、スターティングマネーからさっ引かれるということだったが、だれもあたらなかったので、それがほんとだったのかどうかはわからない。
ダブルレーンでは、藤波はフェレールに勝利した。ほかの組では、カベスタニーがダビルに勝利し、ボウがファハルドに勝利している。
セミファイナル最初のセクション、最初にトライしたフェレールはインで5点になった。藤波はそこは難なくクリアしたが、最後の90度ターンをするところで滑ってしまい、2回の足つきとなった。
この日の藤波は、どうも調子がおかしい。簡単に言えば、乗れていない、ということなのだが、インドアに対するブランクの影響もあったかもしれない。藤波のインドア経験は、去年の11月初旬にフランスのイベントに出場して以来。とはいっても、Xトライアルシーズン開幕に向けて、1週間ほど前からインドアの練習は積んできた。準備不足という印象は、それほどない。それでもどこかがおかしい。
下見でこう走ろう、ここにタイヤを置こうと決めたことが、そのとおりにできない。それが微妙な焦りを誘って、競技中はずっとワタワタ走っている感じになった。走り始めるまでは、藤波は今回の戦いを楽しみにしていた。去年のランキングは4位、インドア・スペシャリストたちが集うスペイン勢に対して、この成績は上々だった。今年はさらにいい結果を期待して、わくわくしていた藤波だったのだが、開けてみると、まるでちがう展開が待ち受けていた。
続く第2セクション。フェレールがクリーンをした。鉄製の丸パイプを飛び移っていくセクションだったが、飛び移ったところでバランスを崩して、そのまま落ちた。特別な技術がいるとか、おそろしく高いというセクションではなかったが、バランスを崩せばそのまま修正のしようがないという設定だった。ここは藤波同様、ダビルも5点になった。フェレールがクリーン。スペイン勢の3人は、ファハルドが1点をついただけだ。
第3セクション。インに2段のステアがある。ここは自信があった藤波だった。自信はあったが、叩き落ちてしまった。フェレール、ダビルと3人とも5点だが、残るはあと1セクション。二人に対して、藤波は1点負けている。これはやばいな、最後のセクションで逆転をしないといけないな、という状況においこまれた。しかし最後のセクションは、カベスタニーがタイムオーバーの1点、ファハルドが減点とタイムオーバー2点ずつで4点をとるセクションで、藤波、ダビル、フェレールともに5点。セミファイナルの合計はダビルとフェレールが16点、藤波が17点。同点のダビルとフェレールはクォリファイの結果で決着がつき、藤波とフェレールがセミファイナル敗退となった。藤波の最終順位はフェレールの次の6位。もちろん、不本意きわまるリザルトだ。
藤波が敗退したあとは、スペイン勢3人とダビルによるファイナルマッチ。あいかわらず卓越しているボウのうまさと、テクニカルなインドアセクションでのカベスタニーの技術が長けていることがあらためて確認されたが、藤波としては、そこに自分が加わっていないくやしさが、ひたすら大きい。
今シーズンは、アウトドアがノーストップルールとなることで、ノーストップのアウトドアから、ストップやバックも可能なインドアへは、切り替える部分が例年より多い。次のバルセロナに向けては、前の週にフランスでのインドアイベントもあり、いい状態で試合に臨めることを望んでいる藤波だった。
「今回はまったくだめでした。体調が悪いというようなことはなかったので、ぼく自身、結果が出るのを楽しみにしてイギリス入りしたのですが、なんだか初めてインドア大会に出るような、ワタワタした感じに終始しました。緊張もしていなかったし、どうしてこんなになったのか、まったく不思議です。フェレールに負けてしまいましたが、フェレールは去年スポットで出てきていたときからインドアはうまかったし、ぼくがこんな状態だといかれてしまうこともある、ということだと思います。うかうかしていられません。バルセロナ、なんとかします」
Final(決勝)+Semi Final(セミファイナル) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 6+0 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 6+1 |
3位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 12+6 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 16+16 |
5位 | アレッシャンドレ・フェレール | シェルコ | 16 |
6位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 17 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 2 |
2位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 9 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 10 |
4位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 11 |
5位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 12 |
6位 | アレッシャンドレ・フェレール | シェルコ | 12 |
7位 | アダム・ラガ | ガスガス | 13 |
8位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 14 |
9位 | ジャック・チャロナー | ベータ | 18 |
10位 | マテオ・グラタローラ | ガスガス | 18 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | 20 | |
2位 | アルベルト・カベスタニー | 15 | |
3位 | ジェロニ・ファハルド | 12 | |
4位 | ジェイムス・ダビル | 9 | |
5位 | アレッシャンドレ・フェレール | 6 | |
6位 | 藤波貴久 | 5 | |
7位 | アダム・ラガ | 4 | |
8位 | マイケル・ブラウン | 3 | |
9位 | ジャック・チャロナー | 2 | |
10位 | マテオ・グラタローラ | 1 |