2位。今シーズン初めての2位表彰台だ。しかし終わってみれば、優勝まであとたったの2点だった。うれしいが、ちょっと惜しい結果となった、イタリア大会となった。指はあいかわらずだが、今回は前回のように手袋の先を切らずに指がおさまっている。
走りそのものは、いいとはいえなかった。今回、藤波のスタートは前の方で、ラガがいてカベスタニーがいて、少し置いて藤波となっていた。ボウとファハルドは後ろの方のスタートだ。それで藤波は、カベスタニーを追いかけて行くことに決めた。
カベスタニーは、絶好調だった。いつものように、ライバルの点数を詳しく把握することはしない藤波だが、それでも見ている限り5点がひとつもなく、クリーンがとっても多いというのは見てとれる。藤波自身は、走っていて、そんなに調子がいいとは思えないし、カベスタニーに比べるとスコアも悪い。
しかし1ラップ目が終わって、ふとスコアボードを見る機会があった。すると、確かにカベスタニーは絶好調だった。しかしそれ以外はドングリの背比べのようだということがわかった。藤波のスコアも、見比べてみれば悪い感じではない。
「優勝はカベスタニーがするんだろうな。優勝は無理として、表彰台には上りたいな」
と、藤波の目標が定まってきた。正確な数字は後から聞いたのだが、1ラップ目を終えて、トップはカベスタニーの6点、2位はボウで18点と大差がついている。そして藤波は、ボウに3点差の3位だった。4位は藤波と同点の、ジェイムス・ダビル。
2ラップ目、しかし第3セクションで失敗をした。5点。これはちょっと手痛い5点だった。しかしすぐ次の第4セクションを1点で行けた。1ラップ目は5点になったところだ。これで気持ちが落ち着いた。少なくとも、1ラップ目と比べて、そんなに悪いスコアではないという感触だ。
第4の1点は、しかし藤波が思っている以上に快挙だった。2ラップを通じて、ここをクリーンしたのはダビルだけで、ボウ、ラガは2ラップともに5点となっている。カベスタニーも、ここは3点と5点だ。
次に藤波は、第6セクションで5点になった。これはしかたないとあきらめられる失点だった。5点以外で行けたのは、1ラップ目のカベスタニーと、2ラップ目のボウの、二人だけだったのだ。結局藤波は、この3セクションでの失点以外、全部クリーンした。2ラップ目の減点は、11点だった。1ラップ目より10点減らすことができた。目的は果たせたかな、という思いだった。
2ラップ目、やはり藤波の前にはカベスタニーがいた。見ている限り、どうも調子がいいとは思えなかったが、1ラップ目のアドバンテージは大きかったから、カベスタニーはそのまま優勝争いに残っていると思っていた。
カベスタニーとは、その後第8セクションで別れてしまった。1ラップ目にバックをとられて5点となってしまったので、2ラップ目は慎重に下見をしてトライした。その間に、ラガを追いかけるカベスタニーは先へ行ってしまったのだ。
一方、ボウがあまり調子がよくないのは、1ラップ目の結果を垣間見てわかっていた。しかしボウのことだ。最後にはくるだろう、とは思っていた。
最終セクションで、ボウと2点差だと告げられた。そしてカベスタニーとは同点になったとも教えてもらった。一瞬、自分のポジションがわからなくなった藤波だが「もしかすると、ぼくは優勝争いをしているの?」と聞いてみた。答えはイエスだった。
カベスタニーは最終セクションでも1点をとった。藤波は最終セクションをクリーンし、カベスタニーには1点差をつけた。あとは、ボウを待つだけだ。ボウがどこかで2点をつけば、藤波が優勝となる。
つかないだろうな、という予測は、やっぱりそのとおりにり、優勝はボウで30点、藤波は32点で2位。今シーズン初めての2位入賞だからうれしい結果だったが、しかし優勝まであと2点と告げられると、いきなりくやしくなった。くやしいのとうれしいのと、この日の表彰台は、ちょっと複雑だ。
指の具合は、だいぶいい。ただ骨はまだくっついていないので、思いきりマシンを引き上げるようなアクションでは、力が入りきらないでいる。なんとかなっているが、もてる能力ぎりぎりの高さになると、これで落ちることもあるかもしれない。今回のセクションでは、そこまでではなかったから、結果に影響することはなかった。
これまでは、腫れた指がグローブに入らなかったので、小指の先を切って使っていたが、今回からは、2年前に使っていたグローブを、そのまま使っている。こちらのグローブの方が、少し指先に余裕があったから、グローブを切らないでも指が入ったのだった。
これから、最終戦イギリス大会まではお休みとなる。イギリスが終わってから、指を本格的に治療する稼働するか、あらためて判断することになるが、今のままだと、たぶん手術はしないのではないかと、藤波は思っている。
「まさか優勝争いをしているとは思いませんでした。結果を知って、くやしい気持ちですが、今シーズン初めて2位になれたし、トニーもこれでチャンピオンが決まったので、いい日なのだと思います。スペインのケガから始まった3連戦は、3位表彰台もあり、最後は2位表彰台で締めくくれました。お休みをはさんで残り2戦、結果はともあれ、しっかりベストを尽くしたいと思います」
日曜日 | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・Honda | 30 |
2位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・Honda | 32 |
3位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 33 |
4位 | アダム・ラガ | ガスガス | 46 |
5位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 50 |
6位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 69 |
7位 | ダニエル・オリベラス | オッサ | 80 |
8位 | マテオ・グラタローラ | ガスガス | 83 |
世界選手権ランキング | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・Honda | 210 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 160 |
3位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 160 |
4位 | アダム・ラガ | ガスガス | 155 |
5位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・Honda | 147 |
6位 | ジェイムス・ダビル | ベータ | 109 |
7位 | ジェック・チャロナー | ベータ | 81 |
8位 | ダニエル・オリベラス | オッサ | 78 |