Xトライアルが終幕して1週間、今度はXトライアルのデ・ナシオンが開催となる。場所はフランスの高級リゾート、ニース。今回の参加国は、スペイン、イギリス、フランス、日本、そして初参加のノルウェーの5カ国。
インドアのデ・ナシオンはほぼ毎年開催されているが、日本は毎年参加しているというわけではない。藤波が参加するのは簡単だが、他の日本メンバーの参加はなかなかむずかしい。
今回参加が実現したのは、まず参加するのがこれまでの3人でなく2人となったこと。つまり藤波以外にあとひとり参加できれば、日本は参加できるということになる。
もう一人の日本代表は、何人かにオファーがあった末に、小川友幸と決まった。小川は今シーズン、藤波とボウのマシンのセットアップの仕事をしている。HRCから許可が出て、マシンは藤波のスペアマシンを使用できることになった。なので小川は、単身飛行機でやってきた。まずスペインに入り、藤波と一緒にニース入り、試合が終わってすぐに帰国というハードスケジュールになった。
小川は藤波のマシンのセィティングを担当しているが、本来、小川のセッティングは藤波とはずいぶんちがう。しかし小川は、藤波のセッティングのまま、X-TDNを走った。短時間のセッティングでは完全に自分好みまでにはできないという、過去の実績を鑑みてのことかもしれない。藤波と小川では身長もちがうので、ハンドルだけは小川仕様に交換している。
1チーム2人になった今回からのX-TDN。1ラップ目にどちらかのライダーが走り、2ラップ目をもう一人のライダーが走る。セクションは6セクションとスピードレース。6セクションは7分間で走ることになっていて、持ち時間を越えると、タイムオーバーとなる。
スピードレースは、いつもとはちょっとちがう。よーいどんのダブルレーンではなく、ひとつのセクションを順に走り、タイムのいい者が上位となる。
1ラップ目は、スペインが最初に走る。去年のインドア・デ・ナシオンの成績の逆順だ。日本は参加していないので、一番最後に走ることになった。
今回はフランスで開催され、仕切りもフランス。ルールは、ひとつだけフランス式ルールが採用された。アンダーガードを引っかけると、1点減点となるルールだ。高い段差に上がるときには、アンダーガードでマシンを止めずに通過しなければいけない。
先頭を切って走ったカベスタニーは、第3セクションで1点。これはアンダーガードでマシンを支えてしまっての減点だった。カベスタニーの減点はこの1点だけ。室は今回のセクションは、スペイン勢にとっては簡単な部類に入る。彼らにとってはもっとむずかしいセクションの方が走りやすい。そして少々のミスをおかしても挽回できるというメリットがある。しかしスペインの思い通りのセクションにしてしまったら、走れるのは藤波くらいとなってしまうにちがいない。スペインは、そんなわけでちょっとした神経戦を戦わなければいけなかったのだ。
イギリスのダビルは、4セクションまでをクリーンしてカベスタニーを上回っていた。しかし第5セクションで前転。マシンを壊して、それ以降のセクションを走れなくなった。第5、第6、そしてスピードレースで5点。調子は良かったが、15点の減点となった。
次がフランス。フランスはXトライアル最終戦でセミファイナルを走ったフェラー。なんとフェラーは、6つのセクションをオールクリーンしてしまった。フェラーはなかなかインドアがうまいようだ。
フランスのあとのノルウェーは、さすがに5点4つと厳しい戦いをし、そして最後が小川となった。
小川は3セクションまでをクリーン、4セクションで1点減点したものの、第5をまたクリーンして、カベスタニーと同点で最終セクションを迎えた。最終セクションは滝登り。ここで小川は5点となってしまった。
その後、スピードレース。小川はカベスタニーに次ぐタイムをマークして2位。減点を1点におさえている。
そして2ラップ目、いよいよ藤波の登場だ。今度は1ラップ目とは逆順になり、藤波が一番最初に走る。そしてセクションも、最後の滝登りをのぞいて逆走となる。セクション難度は、1ラップ目より少し上がっている。そして1ラップ目とは逆に、最初にスピードレースが組まれている。
スピード競争の結果は、トップは当然のようにボウだった。藤波はボウに次いで2位で減点は1点。ライバルのフランスは、グビアンがいまひとつ乗れておらず、ノルウェーにも負けてしまって減点4。1ラップ目、日本とフランスの点差は5点だったから、スピードレースでその差を2点差にまで縮めたことになる。
そして6セクションによる最後の戦い。藤波は最初に6セクションを走ってしまうので、ライバルとの状況を見ることはできない。フランスとの2点差をどう縮められるかが問題だが、藤波にすればベストを尽くして、あとはグビアンがそれ以上に失点してくれるのを待つしかない。
藤波は、好調にクリーンを重ねた。最後のセクション、小川が滝登りで5点になった第6セクションでも、クリーンが出そうな感じだった。しかしちょっとだけ、マシンが乱れた。がまんをして5点となるより、最小減点でセクションを抜けることを選んだ藤波は、1点だけ減点して仕事を終えた。スピードレースで1点、セクションで1点、トータルで2点だ。1ラップ目の小川のポイントと合わせて、トータルで9点となる。1ラップ目に9点以下なのはスペインとフランスだけだから、この時点で表彰台は確定した。
藤波の次はノルウェー、その次がフランスのグビアンとなる。スピードレースですでに4点を失っているグビアンだったが、第1セクションでいきなり5点。これで2位の座が入れ替わった。日本2位表彰台が事実上決まった瞬間だ。
グビアンはこの後6点を減点して、15点で2ラップ目を終えた。3位争いはイギリスのブラウンが奮起してフランスを追い上げるも、最終セクションでブラウンが5点。地元でのデ・ナシオンで、フランスはかろうじて表彰台を守ることになった。
練習なし、セッティングなしで挑んだ小川友幸、Xトライアルのトップランカーとして、スペイン勢と比べても遜色のない走りを見せた藤波貴久。日本のふたりが、やはり世界でもトップを争うテクニシャンであることを、あらためて世界のトライアルファンに披露して、2012年のXトライアル・デ・ナシオンは終わった。これで、トライアルはいよいよアウトドアシーズンに照準を合わせて動き始める。
「2位は優勝するようなものだからと考えてはいましたが、2位となってよかったです。実は3位と2位では、賞金もずいぶんちがうので。今年のXトライアルは、ラッキーもあったと思いますが、あれよあれよと好成績が出て、いいシーズンになりました。これからアウトドアシーズンが始まります。インドアとアウトドアはまったくちがうので、インドアでの好成績がアウトドアにつながるかというと微妙ですが、去年まではインドアで成績が出せずに暗い気持ちのままアウトドアシーズンに入っていましたが、今年は気分よくアウトドアシーズンに入れます」
1st Lap | ||
---|---|---|
1位 | スペイン(カベスタニー) | 1 |
2位 | フランス(フェラー) | 2 |
3位 | 日本(小川) | 7 |
4位 | イギリス(ダビル) | 15 |
5位 | ノルウェー(アンダーセン) | 24 |
2nd Lap | ||
1位 | スペイン(ボウ) | 1 |
2位 | 日本(藤波) | 2 |
3位 | イギリス(ブラウン) | 7 |
4位 | フランス(グビアン) | 15 |
5位 | ノルウェー(ペダーセン) | 21 |
Total | ||
1位 | スペイン | 2 |
2位 | 日本 | 9 |
3位 | フランス | 17 |
4位 | イギリス | 22 |
5位 | ノルウェー | 35 |