Xトライアルも最終戦。すでにチャンピオンはトニー・ボウで決定しているが、最終戦の戦いはフランス、パリ。スペインの首都マドリッドでの開催は実績があるが、フランスの首都パリでの開催は初めてだ。会場はベルシー体育館。フランス最大の屋内競技場だ。
今回は10人が参加。ゴメスを除いたいつもの7名に加えて、ジャック・チャロナー、アレッシャンドレ・フェラー、ベノ・ダニコートの3人が加わって、10名での戦いとなった。フランス人ライダーが3人も顔を揃えるのは、珍しい。
今回の藤波は、クォリファイで苦しんだ。ワイルドカードのフェラーが、誰もが驚くようないい走りをしたのと、第2セクションでもったいない5点があった。ここはボウとカベスタニーがクリーン、ファハルドが1点。他はラガを含めてみんな5点だった。なのでここの5点そのものは、それほど致命的とはいえないのだが、5点になったのが、セクションの最後の方だったのが問題だった。
クォリファイは、5つのセクション全部で持ち時間が設定されている。第2セクションで5点になるために時間を使ってしまった藤波は、その後の3つのセクションで時間に追われることになった。
第3セクションは上位6名が全員クリーン。藤波も、もちろんクリーンした。フェラーはここもクリーン、対して、ここまでトップ6から落ちたことがないフランス人のロリス・グビアンはここで5点となって、セミファイナル進出に赤信号が灯った。フェラーが予想外の活躍を見せたことは、グビアンだけでなく藤波にも驚異だったし、みんなが、それぞれにプレッシャーを感じることになった。
第4セクションはトップ8人までのうち、グビアンだけが1点。これでグビアンは、フェラーの上位に出るチャンスは消えた。グビアンがセミファイナルに進出する6名に残るには、藤波が第4セクションで何点か減点する必要がある。
グビアンとのセミファイナル進出の最後の1席をかけた戦いになった。まず藤波は第4セクションをクリーン。これで、まずはグビアンを下して、セミファイナル進出の切符は手に入れた。しかしフェラーにポジションを上回られてのセミファイナル進出は、あまりいただけるものではない。
クォリファイの最終セクション。藤波のトライ時間は、残り1分を切っていた。これであせった。そしてインでいきなり5点になってしまった。終わってみれば、最後のセクションで5点になったのはトップグループでは藤波だけで、グビアンもクリーン、フェラーが1点をついただけだった。第4セクションをクリーンしていなかったら、藤波はクォリファイ敗退というワースト記録を作ってしまっていたことになる。
ともあれ、最下位ではあるが、セミファイナルに進出した。当然、藤波のスタート順は一番先になるが、あとはひとつひとつのセクションをきちんと攻めていくしかない。
それに先立ち、恒例のダブルレーンでは、藤波はフェラーと勝負をし、勝利した。ダブルレーンで勝利したのは、藤波、ファハルド、ボウの3名で、フェラー、ラガ、カベスタニーが負けて、1点ずつを減点されている。
セミファイナル第2セクションでは、ちょっとした事件があった。オーバーハング状になっているヒューム管を藤波が失敗した時、ヒューム管の一部がぽろりと折れてしまった。と、オーバーハングだったところがつるりとなってしまったではないか。これは藤波にとって不幸だ。オーバーハングを挑まされたのが藤波だけで、他の選手がみなオーバーハングでないヒューム管を攻めるとしたら、そのハンディは大きい。
藤波は主催者に抗議をしたが、主催者もなすすべなく、そのまま競技は進行した。しかし藤波にとってラッキーだったのは、オーバーハングでなくなっても、そのセクションはむずかしかった。ここを1点で抜けたのはボウとファハルドの二人だけ。ファハルドはタイムオーバーで2点をさらに減点されている。カベスタニーもラガも5点だった。藤波の5点が、致命的なハンディとならなかった。
第3セクションは、ボウだけがクリーン(タイムオーバー1点)の他は全員5点。第4セクションはボウとファハルドがクリーン(ファハルドはタイムオーバーの2点)、他は全員5点だった。
こうなると、ボウとファハルドのファイナル進出は決定。問題はそろって3セクションで5点となった残る4人の処遇になる。この4人のうち、ダブルレーンで勝利している(減点ゼロ)のは、藤波一人だけだ。よって、藤波のセミファイナル小計が15点、他の3人はそろって16点。わずか1点差で、藤波が3位でファイナルに進出することが決まった。残りの3人は、クォリファイの結果が優先されて、カベスタニーがファイナル進出。ラガとフェラーはセミファイナル敗退ということになった。
実は第4セクションは、落ちると非常に危ない宙を飛ぶポイントがあった。できたらこれはやりたくない。しかし、フェラーかラガかカベスタニーか、ダブルレーンで負けている誰かがここを走り抜けてしまうと、藤波のセミファイナル敗退となってしまうところだった。全員が5点となったのは、藤波にはラッキーなこととなった。
そしてファイナル。今回はファハルドがたいへん調子がいい。まず、総当たり戦のダブルレーン。ボウは全勝で減点ゼロ。ファハルドはボウに負けただけの2勝で減点1。藤波はボウとファハルドに負けて減点2。そしてカベスタニーが全敗で減点3。
実は藤波のマシンは、ボウとの対戦でパンクをしていた。ホイール交換によるパンク修理は30秒もあればできるのだが、Xトライアルではたいへんスピーディに進行が進むので、ダブルレーンをやっている間にパンク修理はできなかった。それでファハルドとの対戦は、空気をパンパンに入れた状態で走り抜けることになってしまったのだった。今回の藤波は、これを含めて2回のパンクに見舞われている。
その後の3セクションは、ボウだけが3セクションとも走破し、ほかの3人は二つ目のセクション(セミファイナルから通し番号で呼ばれるので、第6セクションンとなる)だけをクリーンし、第5と第6は5点となった。なので点数の差は、セミファイナルの点差と、ファイナルのダブルレーンでの勝負だけでつくことになった。
優勝はボウで決まりだ。今回は2位もファハルドが安泰だ。順位争いは藤波とカベスタニーになる。藤波はセミファイナルで1点カベスタニーにリードをとった。そしてファイナルではダブルレーンで3敗のカベスタニーに対し2敗。ここでも1点リードがある。合わせて2点差で、藤波は今シーズン3回目の3位表彰台を手にしたのだった。
ランキングはファハルドに18点差のランキング4位。インドアの苦手な藤波にとって、2012年のXトライアルシーズンは、悪くない結果で幕を下ろすことができた。
「表彰台に上れて、よかったです。今シーズンは3回表彰台に上れたのもよかったし、ファイナルに進めなかったのが1回だけというのもいい結果となりました。このあと、来週はインドア・トライアル・デ・ナシオンがありますから、小川友幸選手とがんばってきます。イギリスとフランスを相手にする戦いになりますが、優勝はスペインに決まっているので、2位に入れたら優勝みたいなものだと思ってがんばります」
Final Lap(決勝) | |||
---|---|---|---|
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 3 |
2位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 21 |
3位 | 藤波 貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 27 |
4位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 29 |
5位 | アダム・ラガ | ガスガス | 16 |
6位 | アレッシャンドレ・フェラー | シェルコ | 16 |
Qualificarion Lap(予選) | |||
1位 | トニー・ボウ | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 0 |
2位 | アルベルト・カベスタニー | シェルコ | 0 |
3位 | ジェロニ・ファハルド | ベータ | 1 |
4位 | アダム・ラガ | ガスガス | 5 |
5位 | アレッシャンドレ・フェラー | シェルコ | 6 |
6位 | 藤波貴久 | レプソル・モンテッサ・ホンダ | 10 |
7位 | ロリス・グビアン | ガスガス | 11 |
8位 | マイケル・ブラウン | ガスガス | 15 |
PointStandings(ランキング) | |||
1位 | トニー・ボウ | 140 | |
2位 | アルベルト・カベスタニー | 87 | |
3位 | アダム・ラガ | 84 | |
4位 | 藤波貴久 | 69 | |
5位 | ジェロニ・ファハルド | 51 | |
6位 | ロリス・グビアン | 33 |