2011年 SPEA FIM 世界選手権第10戦 -第11戦 ヨーロッパ

2011年9月3-4日/ISOLA2000(フランス)

有終の美とはならずの最終戦

photo日本GPで負傷を負った藤波貴久。本来なら翌週にフランス・カオスでのスタジアムトライアルイベントが組まれていたが、藤波はこれはキャンセル。つかの間の療養をしたあと、最終戦フランスへやってきた。

日本GPでランキング3位まで浮上した藤波は、ここで最後に勝利を飾り、2011年の有終の美を飾りたいところだ。

●土曜日

雨は降ってはいなかったが、そのうち必ず降るという空模様だった。トップスタートは、日本GPの日曜日に勝利したアダム・ラガ。藤波が二番手で、トニー・ボウが三番手スタートとなっていた。

トップ3がそろってクリーンした第1セクションを終え、第2セクションにかかろうという頃、ラガがすごい勢いでセクションを抜け始めた。藤波が第2セクションを終えて第3セクションに到着すると、ラガはすでにトライ待ちの列の中にいた。藤波より3人、4人前にいる。

こういうときは、まずまちがいなく雨が降ってくる。藤波も下見もそこそこ、ラガに追いつくべく、トライ待ちの列に並んだ。しかしどうも、ラガのペースにはついていけない。ラガはチーム総動員で、前に並ぶジュニアクラスのライダーに順番を譲ってもらい、あるいは強引に先に割って入って先を急いでいるようだ。

前を走るジュニアのライダーとて、同じ試合を戦う選手にはちがいない。藤波らが追いつくライダーはそれほど高順位のライダーではないが、それでも試合を投げているわけではない。ラガのあと、藤波が先を譲ってもらうのも、限界ありだ。

photo第4、第5セクションとセクションを進んでいくと、徐々にラガの姿が遠くなっていった。第6セクションに藤波が到着したときには、すでにラガの姿はあとかたもなかった。藤波はさらにペースを上げて、結局10セクションまでは下見なしで走り進んだが、ラガには追いつけず。その間、第7セクションでは前転して5点となるなど、下見をしていないゆえの減点も少なくなかった。前を走るライダーが誰もいない。事実上、トップバッターとして走るに等しい。すぐ後ろを走るボウと相談しながらトライしていくが、それでも減点は多い目となった。

特に1ラップ目はさんざんだった。3つの5点をとって、ラップの減点は24点。トップ争いにはほど遠い。

そして2ラップ目の第2セクション、ついに雨が降り始めた。3セクションに着いた頃は土砂降りだ。ただし不幸中の幸い、3セクションから5セクションまでは川のセクションだった。雨が降ってもいまさら大きな影響はない。しかし第6セクションからはまた岩場のセクションとなる。雨の影響は大きい。岩には苔が生えていて、雨さえ降らなければものすごくグリップがいい。しかしひとたび雨が降ると、とんでもなく滑る。つるつるだ。

9セクションで、オブザーバーにラガが何点でいったのかを聞いてみた。クリーンだという。もしこのコンディションでクリーンをしていったなら、神業だ。今日のラガはとにかくものすごい早まわりだった。作戦勝ちといえば、作戦勝ちだ。

しかしそのやり方には、首をかしげる向きは多かった。早く回るだけなら作戦だが、前を行くライダーをおしのけて進んでいくのはいかがなものか。どうにも、腑に落ちない今回の結果となった。

ライディング的には、藤波もけっして好調ではなかった。標高が高くエンジンにパワーがなく、その対策とセッティングに悩まされた面もあり、またクラッチにもやや問題が出ていた。つながりがちょっと急なクラッチは、晴れていれば問題も少ないが、雨が降ってはよけいにタイヤを滑らせる。

結果はファハルドと1点差の5位。よくこれだけの順位でおさまったという安堵がある一方、1点差の結果を見ると、ちょっとくやしいのも事実だった。

●日曜日

photo土曜日の試合後、藤波のマシンはクラッチの修復作業を受け、最後の試合に臨む。日曜日は朝から雨が降りそうな空だった。第1セクションで、まずラガがトライをせず時間待ちをしている。待ちきれずに、ブラウンが最初にトライをする。ラガが、なぜトライを遅らせたのかはわからない。ブラウン以後、ライダーは次々にトライ。藤波もトライに入った。しかし藤波のトライの時、突然激しい雨に見舞われた。それもセクションの中にいるときだ。これで5点だ。

その後の藤波は、しかしこの第1セクションを引きずることもなく、セクションをよく押さえて試合を進めていた。細かい減点はとっていたが、5点は第1以降ひとつもなく、イメージとしては悪くなかった。

1ラップ目は、終わってみれば3位だった。トップはボウでたったの1点。2位がラガで12点。藤波はラガに9点離されて21点で3位。4位にはカベスタニーが22点で藤波に1点差で迫っている。

2ラップ目、藤波の第1セクションは再び5点だった。その後、第2、第3と1点。そのあと、10セクションまでクリーンが続いた。これなら、悪くない。

11セクション。藤波は失敗をした。これは明らかな失敗だった。しかたない。次の12セクション。登りでアクセルをあけたら、いきなりクラッチがミートしてしまって、まくれかえって5点となった。クラッチは、全部交換すれば問題は解消するのだが、パーツを全交換するとライディングのフィーリングが変わってしまう。それで様子を見ながら修正していくことになる。痛い5点となった。

photo5点が二つ。これだけで10点だ。さらに14セクションで5点をとって、藤波の2011年は終わった。

最終戦は5位と4位。表彰台に乗れなかったのはなんともくやしいが、今年もまたランキング3位は確定した。もてぎでの負傷があってなおこのポジションだから、まずは悪くないシーズンだったのではないだろうか。

○藤波貴久のコメント

「ぜんぜん、いいところがなかったですね。ランキング3位にはなりましたが、締めが甘かったです。もてぎでの負傷は、まず順調に回復しています。ときどき痛みがあるのと、ひねった状態で力が入らないなどの問題はありますが、足の影響で5点になったものはなかったと思います。今年はもてぎの2日目に勝利のチャンスがあったので、あそこで勝てなかったのはくやしいところです。いろいろたいへんな1年間でしたが、応援、どうもありがとうございました」

2011 SPEA FIM Trial WorldChampionship
土曜日
1位 アダム・ラガ ガスガス 11
2位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 26
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 50
4位 ジェロニ・ファハルド オッサ 58
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 59
6位 ジャック・チャロナー ベータ 87
7位 マイケル・ブラウン ガスガス 87
8位 ロリス・グビアン ガスガス 91
日曜日
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 8
2位 アダム・ラガ ガスガス 14
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 34
4位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 43
5位 ジェイムス・ダビル ベータ 51
6位 マイケル・ブラウン ガスガス 67
7位 アルフレッド・ゴメス モンテッサ 74
8位 ジャック・チャロナー ベータ 88
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 204
2位 アダム・ラガ ガスガス 191
3位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 155
4位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 129
5位 ジェロニ・ファハルド オッサ 115
6位 マイケル・ブラウン ガスガス 90
7位 ロリス・グビアン ガスガス 88
8位 ジェイムス・ダビル ベータ 86