2011年 SPEA FIM 世界選手権第2戦-第3戦 フランス

2011年5月21-22日/ブレアル・スー・モンフォール(フランス)

4位と5位。残念!

photo 開幕戦から1週間後、世界選手権は、ドイツからフランスに舞台を移して開催された。今回のフランス大会は、土曜日と日曜日の2日間にわたって開催される2日制。ヨーロッパ大陸の大会では、2日制の大会は久しぶりになる。
会場は2006年にトライアル・デ・ナシオンが開催された会場で、切り立った岩山を登っていくセクションがメインとなっていた。

●土曜日

世界選手権のセクションには、赤、青、緑の3種類のゲートがある。それぞれ世界選手権クラス、ジュニアクラス、ユースクラスのマーカーで、それぞれのクラスのライダーは、自分のマーカーの間を通過しなければいけないし、他のクラスのマーカーを通過してもいけないことになっている。

問題は、マーカーにさわったとかさわらないとかのぎりぎりのときだ。これまで世界選手権では、マーカーの間を通ればいいのだから、マーカーにタイヤ以外の部分が触れるのは減点にならずという解釈をしてきた。ただしゲートマーカーが動いてしまったら、触れたのがどこであれ5点という解釈だ。

今年、条文の解釈に変更があったのか、ドイツ大会からいくぶん採点が厳しくなった感触はあった。しかしフランスでは、ここまでやるかというくらいに、マーカーの通過についての判断が厳しくなっていた。厳しいを通り過ぎて、まちがっちゃっている。

マーカーには、とにかくさわったら5点になる。タイヤはもちろん、ステップだろうとスイングアームだろうと足だろうと、どこがさわっても5点だ。しまいには、近くを通っただけで、さわってもなんにもしてないのに5点になってしまうというケースすらあった。土曜日だけで、これが2回あった。

さわってないだろうとオブザーバーに質しても、らちがあかない。真相は神のみぞ知るということなのだろうが、今はライバルチームのメンバーであるドギー・ランプキンが見ていて、あれはさわってなかったと言ってくれるほどだから、本当にさわっていなかったというのがわかってもらえると思う。

ちなみにランプキンは、今年からガスガスに乗っている。SSDTで負傷して、ドイツ大会は走ったものの、フランス大会の険しいセクションを見て、まともに走れないしケガのためにもよろしくないと判断して、ラガのチームのスタッフとして2日間を過ごしていた。
今回のトライアルは、セクションの攻略がどうこうという以前に、マーカーだけを見て、マーカーだけが勝負の相手という感じになってしまった。

photoそのかわりというか、去年からのセクションに入っての下見ができないルールの中、ライン上の小石などは、オブザーバーがどけてくれるようになっていた。ライダーはオブザーバーに「あの石をどけてくれ」と堂々とお願いする。オブザーバーの判断で必要と認められれば、石をどかすし多少の整地もしてくれる。去年はこういうことにはどこのオブザーバーもまったく聞く耳を持たなかったのだが、これは大きな進化だった。

土曜日の藤波には、特にミスらしいミスはなかったといっていい。乾いた岩のインドア風のセクションで、その岩を斜めから攻めていくポイントも多い。そういうところにマーカーがあると、ちょっと滑った拍子にマーカーに接触してしまう。

ただしこれは、藤波だけの悩みではない。ライダー全員が、なんらかのかたちでマーカー接触の問題に悩んでいた。見る限り、そういうトラブルに見舞われずに走っていたのは、ラガくらいのものだったようだ。

マーカーに接触するというのは、ライダーにとっては納得いく失敗ではない。それがさらに、絶対にさわってないと確証のあるところでの5点は、やりきれない。そんな減点がいくつもあったら、誰だって気持ちがくさってくる。それでも前へ向かって進まなければ、結果が出ない。

不幸中の幸いというか、今回はことが藤波だけの問題ではなく、まわりも5点をもらっているのがわかったから、それほど致命的に落ち込んだりはしないで先へ進めたのかもしれない。1ラップ目、最終セクションも5点だった。やっぱりマーカーだった。

2ラップ目、第3セクションでまたも藤波は5点となった。フロントタイヤをマーカーに当てないように通して、リヤタイヤをマーカーぎりぎりに通すと5点と採点される恐れがあるから、わざわざリヤをひねって、マーカーから遠いところを通したのだが、それでも5点だった。藤波の後ろでトライ待ちをしていたカベスタニーは、藤波の5点を見て作戦変更。藤波のラインは正面から岩に向かわず、マーカーのそばを回り込むものだった。正面突破は減点をとるリスクがあったので避けたのだが、カベスタニーは正面からのラインを選んだ。クリーンを狙って5点になるなら、減点覚悟で正面からいったほうがいい。そしてカベスタニーは、ここをクリーンしている。

土曜日、2ラップ目にラガとファハルドは7点をマークしている。藤波は18点だ。7点は素晴らしいスコアだと思うも、2ラップ目の藤波も、3セクションの後、8セクションでまたマーカー起因の5点をもらった。9セクションではクラッチに違和感が出て失敗してしまったのだが、3セクションと8セクションの5点がなくなれば、それだけで8点になる。7点で回るのは、けっして不可能ではなかった。それだけに残念きわまるレース結果となった。

●日曜日

photo土曜日のレース後、マーカーの置き方が少し変更となった。わざわざ当たりやすいところにマーカーがあったようなところが改善されて、だいぶ状況はよくなった。

前日の感触から、1ラップあたり3点で回れるのではないかと、藤波は考えていた。せめて、ラップあたり10点くらいで回らなければ結果はついてこない。そんな重いで臨んだ試合だったが、はたして第3セクションで5点となってしまった。これは完全に藤波の失敗だった。3点で回れるかもしれない、10点とったらあとがないと思っているところでいきなり5点。これは藤波をへこませる減点だった。

前日が5位だったので、藤波の前にはライバルの4人が全員そろっている。いつもならライバルの点数を聞くことなく試合を進める藤波だが、今回は見たくなくても見えてしまう。計算はしないまでも、ライバルの調子を、いつもよりはるかに把握してしまうことになる。

マーカーは、不本意な接触に対しては対策が講じられていたが、同時に抜け道がふさがっていて、難易度的には少しむずかしくなってもいた。目の前でラガが5点を取っていくのを見て、藤波は、今日は、ラガは脱落したかなと思っていた。

1ラップ目、藤波は3つの5点を取って17点。トップのカベスタニーは11点だったから、藤波の予想はまずそのとおりになったわけだが、藤波のスコアだけが予想とちがっていた。11セクションは土曜日とは大きく変わっていて、水の流れる岩盤を登っていく設定だが、ここは全員5点だった。14セクションはオーバーハングの大きなステップで、これもうまくいかなかった。ただし藤波は、まだまだ挽回のチャンスはあると思っていた。

2ラップ目。しかし藤波は第2セクションで5点となってしまった。なんと岩を登っている最中に、ブーツの先が地面にぶつかって、それでブレーキがかかるようにスタックしてしまった。そのままなすすべもなく落ちていくしかない。

第2セクションの失敗は完全に切り替えられた。チームからも、失敗は誰にでもあるから、まだ大丈夫だと声をかけられた。ところが続く第3セクション。藤波は再び5点になった。岩に対して、今度はタイミングがまったく合わなかった。

photoさらに11セクション。1ラップ目と同じように、登れなかった。行く気は満々だった。ライバルがみな5点を取ったのは、後からトライする藤波にはお見通しだった。だから正面から思いきりつっこんでいける。こういう開き直りができたときには、いい結果が出ることが多い藤波だったが、しかし今日はそれも通じず。結局、1ラップ目に3つ、2ラップ目に3つ、合わせて6つの5点を並べてしまった。脱落したと思ったラガは2ラップ目に9点の好スコアをマーク。藤波はラガに3点差で表彰台を逃して4位に甘んじた。

○藤波貴久のコメント

「土曜日のマーカーには本当に悩まされました。それならマーカーのそばを通らなければいいじゃないかということなんですが、結局そこしか通るところがないというのが何ヶ所もあった。そのうち何ヶ所かで、身に覚えがない5点を宣告されてしまうんです。運が悪いといえばそれまでですが、今回はちょっと不運でした。日曜日は、今度はマーカーの問題はずいぶん減りましたが、思うようにレースが進められませんでした。次のレースまで1ヶ月弱ありますから、今回ちょっと不具合の出た新しいクラッチの調整と、あと、乾いたところの練習ももうちょっとしておかないといけないかなと思っています」

2011 SPEA FIM Trial WorldChampionship
土曜日
1位 アダム・ラガ ガスガス 22
2位 ジェロニ・ファハルド オッサ 24
3位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 27
4位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 38
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 41
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 58
7位 マイケル・ブラウン ガスガス 64
8位 ロリス・グビアン ガスガス 66
日曜日
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 12
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 23
3位 アダム・ラガ レプソル・モンテッサ・Honda 29
4位 藤波貴久 ガスガス 32
5位 ジェロニ・ファハルド オッサ 46
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 52
7位 マテオ・グラタローラ ガスガス 72
8位 マイケル・ブラウン ガスガス 74
世界選手権ランキング
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・Honda 55
2位 アダム・ラガ ガスガス 48
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 47
4位 ジェロニ・ファハルド オッサ 39
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・Honda 39
6位 ジェイムス・ダビル ベータ 27
7位 マイケル・ブラウン ガスガス 25
8位 ロリス・グビアン ガスガス 24