2011年 世界選手権Xトライアル第5戦マドリッド(スペイン)

2011年3月12日/Madrid Spain

5位。あと1点がくやしい

photo2011年Xトライアル第5戦は、スペインの首都マドリッドへやってきた。日本が地球の歴史上でもまれに見る大地震に見舞われた、その翌日のことである。

藤波貴久のヘルメットは、背後にふたつの旗がはためいているデザインだ。ひとつは藤波が住むスペイン・カタロニア地方のもの。黄色と赤の縞模様がそれ。もうひとつは、藤波の母国、日本の日の丸だ。選手紹介のとき、藤波はその日の丸をカメラに向かってアピール。震災からの復活を母国に祈願した。

この大会、藤波はくじ運が悪かった。Xトライアルのスタート順は、くじで決められる。トップ4人が4本のくじから、5位から8位までがさらに4本のくじから。8人のノミネートライダー以外のゲストライダーは、トップスタートが決まっている。

最初に走ったのは、アルフレッド・ゴメス。ゴメスは最初のセクションを2点。全員がクリーンした第5セクションをクリーンした他は、全部5点だった。タイムは1分オーバー。ゴメスの次に走ったのは、マイケル・ブラウン。ブラウンは第1をクリーン、第2を2点。あとはゴメスと同じ結果で、タイムオーバーが2点だった。

藤波のトライ順は、その次、3番目だった。トライの準備をするから、すぐ前のライダーの走りは、ほとんど見ているヒマがない。つまり藤波がトライを参考にできたのは、ゲストライダーであり、5点ばかりのゴメスだけだったことになる。

今回、クォリファイのセクションは6つに増えている。これまでは4つのセクションで区リォファイの成績を決めていたが、それではたったひとつの失敗が致命的になる。ライダーからの要望で、今回は6つに増やされていた。ただし、テレビ中継の都合上、6分の持ち時間は変わらない。なのでクォリファイは、たいへんに忙しいことになっていた。

こういう場合、前のライダーの走りを参考にするのは、セクションの攻略法より、かかる時間だ。もし走破に時間がかかるセクションなら、足をついてマシンを出すことに専念する。手早く走ってクリーンが出せるなら、そうする。その判断は、誰かに走ってもらわないと、なかなかつかめない。誰かに、といっても、それはそこそこのライダーでないと参考にもならないわけだ。

しかもクォリファイの4つのセクションを走ったところで試合がいったん止まり、テレビ中継が始まったところで残る2セクションを走るというスケジュール。前半の4つを走ったところで、藤波のスコアは減点だけで15点。15点の中では、第2セクションが惜しかった。ここはボウも1回の足つきで切り抜けたセクションで、難度が高い。しかしそのデータの内段階でトライした藤波は、当然クリーンを狙っていた。ヒューム管から岩に飛び移り、そこで方向転換。ボウが足をついたのは、そのポイントだった。そして藤波は、足をつかないまま、岩から落ちてしまったのだ。

photoクォリファイを4つ走り終えたところで、ボウが1点、ラガとファハルドが5点、カベスタニーが7点、チャロナーが12点、ブラウンが12点。藤波はダビルと並んで8位タイだった。かなり厳しい。

残る二つ。最初のセクションは全員がクリーンだった。勝負つかず。最後の第6セクションで、誰がセミファイナルに進出するかが決まる。この時点で、そのボーダーラインにかかっているのは、チャロナー、ブラウン、ダビル、そして藤波の4人だ。そして、ブラウン、ダビルが5点、ブラウンはタイムオーバーも2点あった。藤波は最後のセクションをクリーンして、トータル15点。ブラウンが19点、ダビルが20点。これで、首の皮1枚といったところで、藤波のセミファイナル進出が決まった。

セミファイナルでは、クォリファイ6位でセミファイナルに進出した藤波と、5位で進出したチャロナーがダブルレーンで対戦した。ここは順当に藤波の勝利。チャロナーは、前の週にフランスのインドアイベントだかに参加していて、手首を負傷している模様。本調子ではなかったようだ。しかしセミファイナルに進出した6人のうち、クォリファイの成績がもっとも悪いのが藤波だったから、セクショントライ順は一番先となった。

第1はチャロナーを含めて全員クリーン、第2は逆にボウを含めて全員5点。第3は、藤波は3点で抜けたものの、タイムオーバーが2点あり、トータルでは5点で転倒したのと変わらない。チャロナーは5点、カベスタニーとファハルドが2点+タイムオーバー1点、ちょっと差がつき始めた。

最後のセクションは、ボウとラガ以外は全員5点。結局藤波は、3つのセクションを5点で終えることになった。トータル15点。チャロナーはダブルレーンで藤波に負けているから、減点は16点。トップはボウで7点。2位がラガで9点、ファイナル進出がかかる3番手と4番手争いは、カベスタニーガ13点、ファハルドが14点という結果になった。

セミファイナル進出も危ない状態から、しかし終わってみればファイナル進出まであと1点。その結果を見ると、あらためてくやしさがあふれる藤波だった。

今回、チームメイトのトニー・ボウが、2011年のXトライアルチャンピオンを決めた。当然の結果ともいえるが、藤波にとっても、これはうれしい結果だった。

○藤波貴久のコメント

「走りは悪くなかったと思うんで、そういう点ではくやしいですね。最後の第4セクションは、むずかしいところを抜けて、最後にアンダーガードを斜めにあててしまって落ちてしまいました。自分のミスです。トニーはチャンピオン獲得のことは意識していたようで、カベスタニーより上位でゴールすれば決定というのは計算していましたが、やはりそれより全勝したいという思いのほうが強かったみたいですね」

Indoor Trial WorldChampionship 2011
Madrid
Final Lap(決勝)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・ホンダ 7+0+6=13
2位 アダム・ラガ ガスガス 9+1+9=19
3位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 13+2+10=25
4位 ジェロニ・ファハルド オッサ 14+3+10=27
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・ホンダ 15
6位 ジャック・チャロナー ベータ 16
Qualificarion Lap(予選)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・ホンダ 1+0=1
2位 アダム・ラガ ガスガス 5+0=5<+0>
3位 ジェロニ・ファハルド オッサ 5+0=5<+1>
4位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 7+1=8
5位 ジャック・チャロナー ベータ 12+2=14
6位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・ホンダ 15+0=15
7位 マイケル・ブラウン ガスガス 17+2=19
8位 ジェイムス・ダビル ベータ 20+0=20
9位 アルフレッド・ゴメス モンテッサ 22+1=23
*2位と3位はタイブレークで順位を決した
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 100
2位 アルベルト・カベスタニー 69
3位 アダム・ラガ 63
4位 ジェロニ・ファハルド 45
5位 藤波貴久 32
6位 ジャック・チャロナー 21