2011年 世界選手権Xトライアル第3戦バルセロナ(スペイン)

2011年2月6日/Barcelona Spain/Palau Sant Jordi

なんとダブルレーンで転倒!

photo首を傷める大クラッシュのマルセイユから2週間、インドアトライアルの中でも各メーカー、チームが威信をかけて戦うバルセロナ大会の日がやってきた。

藤波はマルセイユのあと、当初は翌週のツールーズのインドア(世界選手権ではない)に出場する予定だったが、そこまで首の状態が回復せず、参加を見送っている。負傷翌日には劇的に回復してきたと感じられた藤波の首だったが、その後少し回復が停滞し、オートバイに乗っての練習は結局バルセロナ直前の木曜日までできず。それも1時間半ばかり乗ったところで練習続行を断念している。肩や首がかたまってしまって、腕に力がはいらない。まだ事故後10日ばかりのことだから、今後は回復に向かっていくのだろうが、まだ回復半ばといったところだ。

それでも藤波は元気にバルセロナに向かった。バルセロナ大会は、ここを拠点とするほぼすべてのメーカーとチームにとって、ここ一番の大勝負となる。地元での戦いであり、地元のファンやスポンサーの前で気軽に雄姿を見せられるチャンスでもある。

前回大クラッシュで終わった藤波だが、しかし順位は4位。ランキングポイントではファハルドと同点だが、これによってランキングはファハルドより上位の4位を確保している。それで藤波は、スタートのくじ運はトップ4の中に入ることになった。最初のスタートはブラウン、以下、ダビル、チャロナー、ファハルド、藤波、ボウ、カベスタニー、最後のスタートがラガとなった。

バルセロナのセクションは、全体的にとてもむずかしい。テクニカルというより、まず高い。抜けられるセクションを確実に決めて、高い障壁をひとつでも超えられれば、それで結果が出る。高いセクションは5点となる確率が大きいが、逆にいけてしまえば、低減点のスコアが出ることが多いのも特徴だった。

photo藤波は、クォリファイの第1セクションで、ちょっと趣向を凝らした。藤波がトライするまでの5人は全員5点。ダニエルで飛んでターンするポイントで、藤波は足をついてマシンを回した。藤波の予定では、1点を失う覚悟で臨めば、ライバルからリードをとれると踏んだのだった。ちなみに、藤波のあとからトライしたトップグループは、カベスタニーはクリーンしたが、ボウは2点、ラガも1点を失っている。1点減点は、悪くない。

しかしマシンを回したところが、前輪が着地すべきところに、なにもないというアクシデント。人間はまったく無事だったが、マシンはまたも大クラッシュ。フロントから落ちて、左右のフロントフォークをつないでいるスタビライザーが粉々になるというトラブルに見舞われた。

マシンを修復している時間はない。クォリファイでは、修復を含めて、持ち時間の中でこなさなければいけないのだ。こういうときのために、インドアではスペアマシンを用意している。今回は、去年本番に使ってきたマシンをスペアとして持ち込んでいる。

しかし藤波は、スタビライザーが壊れてフロントがふにゃふにゃと安定しない本番車でのクォリファイ続行を望んだ。スペアマシンとは若干仕様がちがっている。トラブルを起こしたマシンはもちろん本調子では走れないが、スペアに乗り換えれば、エンジン特性などがちがって、それが支障をきたすことも考えられる。

それで結果、藤波は第2、第3セクションを1点とクリーンで抜けることができた。第4と第5は両方5点で、まぁ、これは半ばしかたない。チャロナーとダビルが同点でタイブレークするのを見ながら、セミファイナルへは進出できたことを確認した藤波だった。

しかしその頃から、首が痛くなってきた。通常のライディングではそんなに問題はないが、高い段差を失敗して後ろに飛び降りるときなど、マシンを支えながら降りるというのが、首への負担につながるようだ。しかしせっかくクォリファイは通過した。あとは少しでも上位の成績を残して、今後につなげたいところ。

photoセミファイナルの最初は、6位でセミファイナル進出のチャロナーとのダブルレーンだ。トップライダーとの対戦はともかく、インドアのシリーズ参戦が初めてのチャロナーが相手なら、そんなに厳しい勝負にもならないだろうと、藤波は思った。正直、少し甘く見ていたということもあった。

ダブルレーンは、ダニエルでぽんぽんと飛んでいくセクションがあった。藤波は、ここでリスクを背負いたくないと思った。マルセイユでの悪夢を少し思い出したのも事実だ。もちろん、相手がチャロナーだから、それでもいけると思ったのだ。それで一瞬マシンを止めた。そのときはチャロナーに対してリードをとっていたし、そのまま逃げ切れる予定でもあった。

ところが、マインダーのカルロスが「来たぞー」と叫んでいる。チャロナーは格上の
藤波を相手に、必至で勝負を挑んできたようだ。谷渡しでマシンを進めるポイントでチャロナーに抜かれた藤波は、なんとか遅れを挽回しようと思った。遅れはまだわずかだ。

その焦りが、完全に裏目に出た。失敗するはずがないダブルレーンのポイントで、藤波はマシンを上らせるに失敗。そのままずり落ちてきてしまった。5点だ。仮に、チャロナーにダブルレーンで敗北しても、減点は1点のみだったから、この5点は大きな失点となった。

いきなり5点のハンディを背負って残る4セクションを戦って、ファイナル進出の切符を争うことになった藤波。これは逆境である。第1セクションは2点(ファハルドが2点、チャロナーが3点、ボウら3人はクリーン)、第2セクションはボウ以外はみな5点、第3セクションは藤波とチャロナーとラガが5点、最終第4セクションはファハルドとチャロナーと藤波が5点。結局、ファハルドとチャロナーと藤波は4つのセクションはそんなに大差はなく、勝負がついた。ダブルレーンで勝利したファハルドが16点、ダブルレーンで1点減点したチャロナーが19点、ダブルレーンで5点の藤波は22点だった。ダブルレーンの減点を引いてみると、ファハルド16点、藤波17点、チャロナー18点となる。

実は最後の第4セクションは、藤波の減点は5点だが、これは失敗したのではなく、減点3点に加えて、タイムオーバーが2点。セクションは足をつきながら走破したが、持ち時間を1分オーバーしてしまったというスコアだ。こうなると、転倒して5点になるのとスコアは変わらない。

藤波は、しかし考えたのだ。セミファイナルは、ライダーが交替交替でひとつのセクションを走っていく。ライバルがトライしていくのを見れば、自分のファイナル進出が限りなく困難であることは明らかになっていく。ダブルレーンでの失敗が致命的だったわけだが、それを悔いても、ファイナル進出の目が戻ってくるわけではない。

最後の第4セクションは、岩によるセクション設定で、高い段差はなかった。極端に言えば、いわば長いだけだ。今日の出番はこれが最後だと考えた藤波は、藤波にとってもファンの多いバルセロナで、少しでもお客さんに喜んでもらいたいと考えた。少しでも長く、お客さんの前で走っていたい。だから最後のセクションは、失敗して5点にならないように、時間がかかってもいいから走りきろうとした。そしてそのとおりの結果となった。

結果、チャロナーに3点差で5位を奪われたものの、この日の藤波としては、これが最前の結果となった。

○藤波貴久のコメント

「ダブルレーンの5点で決まってしまいましたね。失敗は、首の影響ではないです。首は、確かにあまりよくなってなくて、思ったよりも長引いてますし、飛び降りたときなど痛いこともあるんですが、痛いのはがまんすればいい。腕に力がはいらないことがあるのが大問題なのですが、今回の結果とは直接関係はないです。バルセロナは毎年そうなのですが、ステアが高すぎる。トニーにしかあがれない。ぼくが100%の力を出しても正直むずかしい高さです。それがこのコンディションでは、まず不可能ということですね。もう少し、勝負の行方が楽しめる設定でもいいのかなとは思いますが。さて、次回はジュネーブ。FIMのお膝元で盛大にやるようですから、ぼくも一発盛大にやってきたいと思います」

Indoor Trial WorldChampionship 2011
Barcelona
Final Lap(決勝)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・ホンダ 4
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 22
3位 アダム・ラガ ガスガス 25
4位 ジェロニ・ファハルド オッサ 35
5位 ジャック・チャロナー ベータ 19
6位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・ホンダ 22
Qualificarion Lap(予選)
1位 トニー・ボウ レプソル・モンテッサ・ホンダ 2
2位 アルベルト・カベスタニー シェルコ 11
3位 アダム・ラガ ガスガス 13
4位 ジェロニ・ファハルド オッサ 14
5位 藤波貴久 レプソル・モンテッサ・ホンダ 16
6位 ジャック・チャロナー ベータ 20
7位 ジェイムス・ダビル ベータ 20
8位 マイケル・ブラウン ガスガス 25
*6位と7位はタイブレークで順位を決した
PointStandings(ランキング)
1位 トニー・ボウ 60
2位 アルベルト・カベスタニー 42
3位 アダム・ラガ 39
4位 ジェロニ・ファハルド 24
5位 藤波貴久 20
6位 ジャック・チャロナー 11